2011 Fiscal Year Research-status Report
BACトランスジェニックマウスにおける脊髄後角エンケファリンニューロンの性質
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23500468
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
堀 雄一 獨協医科大学, 医学部, 教授 (60190229)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | エンケファリン / NMDA受容体 / セロトニン受容体 / 脊髄痛覚神経回路 / 脊髄後角表層ニューロン / 単一細胞遺伝子発現解析 / パッチクランプ記録 / 興奮性シナプス後電流 |
Research Abstract |
BACトランスジェニック法により作製したEnkephalin (Enk)-Green Fluorescent Protein (GFP)マウスを用い実験を行った。1. このマウスにおいて、Enk発現とGFP発現が一致するか否かについて二重免疫染色により検討した。その結果、脊髄後角第II層に分布するGFP(+)ニューロン1550個のうち1544(97%)がEnk(+)であった。また、Enk(+)ニューロン1552個のうち1544(99.5%)がGFP(+)であった。2. Enk発現は、cAMP Responsive Elementを含むプレプロエンケファリン-プロモータによって調節されている。GFP発現がこのプロモータによって調節されているか否かについて、cAMP濃度を増加させる作用を持つフォルスコリンを用いて検討した。脊髄スライス標本を作製し、フォルスコリン(5μM)存在下に60分間インキュベートすると、GFP(+)ニューロンの数が21.8±7.5%の増加を示した。3. Enkは神経伝達物質として痛覚情報伝達を調節し、慢性疼痛の発症に伴ってその発現レベルが変化することが報告されている。Enk-GFPマウスの一側の座骨神経を半結紮し(Seltzer model)疼痛症状を発生させると、座骨神経結紮側の脊髄後角第II層GFP蛍光(+)ニューロンの数が、反対側に比べて有意に増加した。以上の結果から、我々の作製したEnk-GFPマウスにおいては、GFP発現はプレプロエンケファリン-プロモータによって調節されており、GFP蛍光はEnk発現を良く反映していると考えられた。また、このEnk-GFPマウスを用いて、GFP蛍光を指標として痛覚情報の調節の仕組みを検討することが可能であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画は、Enk-GFPマウスを用いて、末梢神経損傷の影響の検討と、単一細胞Real Time RT-PCRによる遺伝子の検出を行なうことであった。このうち、末梢神経損傷の影響の検討については、『研究実績の概要』に記述した通り、十分な成果があげられたと考えられる。単一細胞Real Time RT-PCRによる遺伝子の検出については、当初の計画どおりに、cDNAを前増幅(Pre-amplification)しReal Time PCRによって遺伝子の発現を検討するシステムを確立することができ、その結果の一部をSociety for Neuroscience Meeting 2011 (Washington, DC,USA) において発表した。しかし、NMDA受容体サブユニットNR1およびNR2A-D、セロトニン1-7型受容体、Ca2+依存性K+チャネル(BK、IK、SK)の発現についての検討は不十分な面があると考えられ、『(2) おおむね順調に進展している』と自己評価をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、単一細胞Real-Time RT-PCR法によって、Enk作動性ニューロンの遺伝子発現の特徴を検討してきた。今後は、その結果を手掛りとして、パッチクランプ・ホールセル記録による実験を、当初の研究計画に基づいて実施する。特に、Non-NMDA及びNMDA受容体を介する興奮性シナプス後電流、GABAA受容体を介する抑制性シナプス後電流を記録し、その生理学的・薬理学的性質を調べ、Enk作動性、GABA作動性およびそれ以外のニューロンで差異が見られるか検討する。パッチクランプ記録後にはニューロンを採取して単一細胞Real-Time RT-PCRを行い、平成23年度の単一細胞Real-Time RT-PCRの結果を確認すると共に、パッチクランプ・ホールセル実験で得られた結果と遺伝子発現とを対応づけて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の実験計画としてパッチクランプ・ホールセル記録を行い、電気生理学的・薬理学的検討を加える。このために必要な神経伝達関連試薬を購入する。その他、パッチ電極作製用ガラス管、単一細胞採取のためのピペット作製用ガラス管、5%CO2/95%O2混合ガス等、実験に必要な消耗品を購入する。さらに、パッチクランプ・ホールセル実験に必要な設備備品として三次元電動マイクロマニピュレータを購入予定である。また、パッチクランプ記録後に採取した単一細胞に対して遺伝子発現解析を行うために、RT試薬、multiplex PCR試薬、Real Time PCR試薬等を購入する。また、平成23年度の物品費の使用額が1,297,717円であった為、小額(2283円)が残った。このため、次年度使用額が0円でなく2283円となっている。平成24年度の研究費と合わせて、上述のようにな実験に必要な物品購入に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)