2011 Fiscal Year Research-status Report
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23500471
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
逵本 徹 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 准教授 (00260042)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 霊長類 / 注意 / 律動波 |
Research Abstract |
前頭前野9野と前帯状野32野のシータ波活動は「注意」に相関していると考えられる。しかし、シータ波発生時にどのような神経機構が作動しているのかは分かっていない。また、これらの皮質領野と周辺の皮質領野の間にどのような相互作用が存在するのかについても不明である。この点を解明する目的で、ニホンザルの大脳皮質の表面と深部に約100本の電極を設置して大脳皮質フィールド電位を同時記録する実験を開始した。これまでの記録は運動課題遂行中のものに限定していたが、より多様な状況下での脳活動を知ることが有益であると思われるため、飼育ケージ内での自由行動中(摂食活動中や安静覚醒状態や睡眠状態を含む)の記録も開始した。この目的に適うテレメータとビデオ記録システムが市販品には無かったため、自己開発した。現在、その記録を蓄積している段階である。解析は現在進行中であるが、運動課題中の前頭前野9野と前帯状野32野のシータ波活動の間で情報が非対称的に流れていることを示唆する結果が得られている。これはすなわち、一方の領野のシータ波活動は他方のシータ波活動に影響を強く及ぼすが、逆向きの影響は相対的に小さいことを意味する。このことは、注意中枢の上流と下流の因果関係を示している可能性がある。ただし、単に見かけ上の先後関係に過ぎない可能性もあるので、この点をさらに検討するため、情報流の非対称性がサルの状況によらずに一定なのか、あるいは変化しうる物なのかに注目して自由行動中のデータを解析している。また、周辺領野との相互作用についても解析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに、(1)ニホンザル1頭について電極埋め込み手術を行い、運動課題遂行中の脳活動とケージ内で自由行動中の脳活動を記録することができた。また、(2)そのデータを解析することにより、脳内情報処理課程の解明への手がかりとなる方向性をもった情報伝達を見いだした。これにより、本研究の申請時に掲げた4つの目的のうち、2つを達成できる目処がほぼ付いたことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の申請時に掲げた目的のうち、未だ達成の目処が付いていないのは、(1)海馬を含む脳の広範囲にまたがるシータ波活動のネットワークの有無について調べることと、(2)単一細胞記録とシータ波活動の関係を調べること、の2つである。この目的を達成するために、さらに研究を進める。また、現在のところシータ波活動の皮質間伝達の方向性という興味深い事実を見いだしてはいるが、新たな発見事実として発表するには例数が少なすぎる。そのため、例数を増やすことにも注力する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では23年度にニホンザル2頭を購入する予定であったが、実際には1頭しか購入できなかったため、一部の研究費を次年度に使用することになった。目下の優先課題は実験の例数を増やすことであるため、主として以下の実験材料の購入に使用する予定である。ニホンザル2頭抗生剤及び消毒薬電極材料
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