2011 Fiscal Year Research-status Report
脳損傷後の意識、睡眠、認知の神経基盤と回復に関する研究
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23500473
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
浦上 裕子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院 第一診療部(研究所併任), 精神科医長 (00465048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 光毅 慶應義塾大学, 医学部, 名誉教授 (40048286)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脳機能イメージング / 脳損傷 / 回復 / リハビリテーション / 脳波脳磁場同時記録 |
Research Abstract |
本研究は、脳損傷後の認知行動障害を「意識、睡眠、認知」の3つの側面からとらえ、臨床評価尺度と非侵襲的脳機能イメージング(脳波・脳磁場同時記録)を用いてそれぞれの神経基盤と回復過程を多面的に明らかにし、回復期の認知行動障害の変化と帰結に与える影響を考察することである。今年度は、過去のデータと業績から、睡眠紡錘波の神経生理学的意義について総説にまとめた。睡眠には記憶を固定、強化する機能があることが知られている。睡眠と、睡眠のサイクルが、記憶回路に変化を及ぼし、記憶が固定され、強化される。今年度は脳損傷による「認知」機能の変化と、「睡眠」の指標である「睡眠紡錘波」との関連から、脳損傷後に睡眠が、脳に及ぼす影響を明らかにすることを目標とした。び慢性軸索損傷患者7例における回復期の継時的な神経心理学的検査、脳波脳磁場同時記録を用いて計測した睡眠紡錘波より、認知機能の改善と紡錘波の改善が比例することを示し、論文発表を行った(Clin EEG and Neurosci 2012)。紡錘波の改善が認知機能の回復と比例するのであれば、睡眠と認知は密接な関係があり、良好な睡眠を得ることが、認知機能の改善につながる可能性がある。これは回復期の脳損傷患者の機能促進を考えるうえで意義が大きい。 一方で、「音楽」には脳に機能的な変化を及ぼす可能性があることが報告されている。本年度は、理化学研究所と共同で「音楽」が脳に及ぼす影響、認知や情動との関連を、脳波を使って明らかにするための実験環境を作った。健常者6名の音楽を聴いている間の脳波の記録解析を行い、現在その結果を解析中である。神経基盤を定量化し、「音楽」が脳機能を促進しうるか、脳損傷患者にどのような影響を与えるのかを解明するための基盤としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「脳損傷後の意識・睡眠・認知」という広い概念の一部を英文著書と和文「総説」にまとめその神経基盤の一部を考察した。脳損傷後の「睡眠紡錘波」を、脳機能イメージングを用いて定量化し、回復の指標としての意義についてまとめ論文発表した。さらに音楽を用いて脳機能を解明する実験研究に発展するための基盤を作った。
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Strategy for Future Research Activity |
1〕脳損傷からの回復の神経心理学的データと脳波データの関連から脳機能の回復の神経基盤を検討・考察し、論文にまとめる。2〕音楽が脳に及ぼす機能的変化を、脳波を用いて定量化し、考察する。3〕音楽が脳損傷患者に及ぼす効果について検討し、回復や機能促進の役割や意義について考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は主に研究の基盤や研究体制を作るための消耗品や、学会出張、研究協力者への謝金、論文掲載料に研究費を使用した。新規に実験を立ち上げるために当初予定していた消耗品(パソコン周辺機器やソフトウエア)は、既存の機器で代用できた。しかし実験データ解析や事務処理に当初の予想以上に時間や手間がかかることがわかった。そこで当初準備していた消耗品購入資金を、次年度の解析や事務処理を行っていただいた研究協力者への謝金として活用し、研究全体を円滑かつ効率よく進めることを計画する。さらに研究を深めるために海外の研究協力者と積極的に議論をする。そのために、研究者を招聘、または研究者が出張する場合の旅費とする。実験結果解析などの協力者への謝金とする。研究遂行に必要な経費(論文掲載料、校正料、消耗品など)とする。
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