2012 Fiscal Year Research-status Report
脳損傷後の意識、睡眠、認知の神経基盤と回復に関する研究
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23500473
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Research Institution | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
Principal Investigator |
浦上 裕子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院(研究所併任)・第一診療部, 精神科医長 (00465048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 光毅 慶應義塾大学, 医学部, 名誉教授 (40048286)
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Keywords | 脳機能イメージング / 脳損傷 / 回復 / リハビリテーション / 脳波脳磁場同時記録 / 意識 / 睡眠 / 認知 |
Research Abstract |
脳損傷後の認知行動障害を「意識、睡眠、認知」の3つの側面からとらえ、神経基盤と回復過程を明らかにする。 1.非侵襲的脳機能イメージング(脳波・脳磁場同時記録)を用いて海外の共同研究者とともに睡眠紡錘波を定量化した。NREM睡眠段階2のquiet (core) periodにおいて、11-16Hz周波数帯域の波形を、MEGを用いて解析し、L-mDFC(左背外側前頭前野)、視床、大脳辺縁系に集積することが明らかになった。 2.fMRI,DTI,Proton MRS など脳機能イメージング手法を用いて「意識」や「睡眠」を定量化する臨床方法の最新の現状をまとめ総説を発表した。 3.脳損傷後の回復過程における「睡眠」の役割を明らかにすることは、ヒトの行動を理解するうえで、認知リハビリテーションをすすめるうえで意義が高い。脳血管障害と脳外傷後の慢性期の紡錘波の脳波・脳磁場同時記録の特徴をまとめ、睡眠紡錘波の周波数・振幅・活動源の大きさは、急性期には減少し、回復とともに、増加することを示した。回復期の紡錘波活動は予後良好を示す指標であり、この時期には睡眠効率や睡眠―覚醒リズムが改善することによって睡眠中に記憶が強化され、認知機能の改善につながる可能性がある。睡眠紡錘波は、脳の可塑性を反映し、回復の指標になることを示唆する。海外共同研究者とともに、睡眠紡錘波の研究エビデンスから神経生理学的基盤を著書にまとめ、招待講演で発表した。 4.「音楽聴取時の神経基盤の解明」:音楽活動は、局在的な皮質領域の活動ではなく、聴覚的・視覚的認知、意識、注意、記憶、情動など、脳のすべての認知・精神活動が統合されたものである。今年度は、「音楽」を聴いている間の10名の健常者(5名音楽家,5名非音楽家)の60ch脳波活動を計測し、γ活動が音楽聴取時に重要な役割を果たし、意識・注意・記憶と関連が深いことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
睡眠紡錘波の神経基盤の一部を明らかにし、脳損傷後の回復や可塑性を、脳波脳磁場同時記録を用いて定量化したことは、脳損傷後の「睡眠」を考えるうえで意義が高い。最新の脳機能イメージングを用いた「意識・睡眠・認知」の定量化の方法を、文献的に考察し、総説をまとめたことは、今後、「意識・睡眠・認知」の神経基盤を考えるための基本になる。さらに、「音楽」を聞いている間の音楽家と非音楽家の脳波活動を計測し、γ活動が重要な役割をしめ、「意識・睡眠・認知」を関連が深いことを立証したことは、今後の脳損傷後の神経基盤の解明をすすめるうえで意義が高いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
睡眠紡錘波の解明とともに、γ活動がヒトの意識・睡眠・認知と関連が深いことが示唆された。NREM睡眠段階2に出現する睡眠紡錘波とγ活動との関連を解析することによって「意識・睡眠・認知」の一部を解明する。 当該年度の大きな成果は、音楽を聞いている間の脳活動を定量化することにより「意識・認知」の一部の解明につながることが明らかになったことである。そこで、今後は脳損傷患者の音楽聴取時のγ活動を解析することにより、音楽聴取時の脳損傷による脳内神経基盤の変化を解明する。これは、認知リハビリテーションを計画するうえで意義があると考えられる。研究協力者鷲沢嘉一氏と連携して、脳波・脳磁場同時記録の解析方法をさらに工夫する。また、意識・睡眠・認知を多面的に明らかにするために、fMRI などの脳機能イメージングの方法の導入を検討する。得られた結果を海外で発表し、海外の共同研究者と議論し、発展的に研究を推進する。3年間の研究成果を包括的にまとめ、著書を発表する予定である。解析や実験環境の整備に予定していたほど費用がかからなかったため前年度からの繰越額が生じた。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外旅費(学会発表、海外研究者との情報交換)・実験にかかる費用・出版費・被験者や研究協力者への謝金などに使用する予定である。前年度からの繰り越し額を合わせて、fMRIを使った実験環境を新規に立ち上げることを計画している。
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