2011 Fiscal Year Research-status Report
恐怖記憶の消去学習を司る扁桃体シナプス伝達の特性と調節機構の解明
Project/Area Number |
23500474
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
関口 正幸 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所疾病研究第四部, 室長 (80260339)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 恐怖記憶消去回路 |
Research Abstract |
恐怖記憶はそれを思い出すことにより消去・再固定等の修飾を受ける。これら修飾を司る神経回路機構の解明は神経生理学的に重要であるばかりでなく、不安関連精神疾患の病態解明や治療法開発に対して有用な基盤情報となる。本研究は『恐怖記憶の消去学習を司る扁桃体シナプス伝達の特性と調節機構の解明』を目的とする。恐怖記憶の消去学習は、PTSDや恐怖症等の有効な治療法である暴露型認知行動療法の基礎プロセスと考えられており、我々の研究により得られる成果は、この療法の神経生理学的基盤を確立し、これを格段に進歩させる情報となる。 平成23年度にはマウスを用いて以下の結果を得た。 1)オプトジェネシス法の確立:複雑な脳神経回路解析の精度を上げるため、光開口性陽イオンチャネル(チャネルロドプシン2)発現による脳部位間シナプス伝達誘発法を用いた。まず、チャネルロドプシン2の発現方法について検討した結果、アデノ随伴ウイルスベクターに挿入し(AAV-ChR2)、投射元脳部位に微小投与する方法の有用性を確認した。次に、当該チャネルの光による開口については、顕微鏡光路内に導入したLED光源で誘発可能であることを見いだした。 2)恐怖記憶消去学習回路構成脳部位間シナプス伝達記録:(1)腹側海馬CA1領域にAAV-ChR2-Venusを投与したマウス、(2)扁桃体基底外側核内の外側部分にAAV-ChR2-Venusを投与したマウス、を作製した。(1)のマウスの扁桃体を観察すると、外側基底核の一部分に強いVenusによる蛍光が観察され、当該部位錐体細胞からのスライスパッチ記録による海馬→扁桃体シナプス伝達特性について検討中である。(2)のマウスでは、扁桃体間在細胞集団に属するニューロンへの投射が確認され、スライスパッチ記録による扁桃体亜核間シナプス伝達の特性について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
恐怖記憶消去学習回路を構成する2種類のシナプスについて、オプトジェネシスによる解析が進行中であるため。更に、当該回路を構成する他のシナプスについても同様な検討が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
関連分野の進歩に合わせて1)Cre-ChR2マウス(Nature Neurosci., March 25, 2012)の使用を見越して、恐怖記憶消去学習回路構成脳部位(又は構成細胞)ー特異的プロモーター下流でCreを発現するトランスジェニックマウスの作製2)ハロロドプシンの使用等を積極的に計画する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
AAVにより想定外に高レベルのChR2発現を得られたため、in utero での遺伝子導入等で使用する予定だった試薬や器具の購入費用等が不必要になった。これにより次年度への繰り越し予算が発生した。上記のトランスジェニックマウスやハロロドプシンーAAVの購入に充てることにより、研究の更なるレベルアップに役立てる。
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Research Products
(7 results)