2011 Fiscal Year Research-status Report
平滑筋収縮フィラメント・リモデリングによるアクチンミオシン相互作用変調の仕組み
Project/Area Number |
23500475
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
渡辺 賢 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (60191798)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 平滑筋 / 筋収縮フィラメント / 構造 / 細胞 / 力学応答 |
Research Abstract |
本研究の目的は、人為的に収縮フィラメント・リモデリングを制御できる平滑筋スキンド標本を用いて、フィラメント・リモデリングによる平滑筋収縮制御のメカニズムを明らかにすることである。平成23年度は、本実験のための基礎データの獲得を目的として研究を進めた。1)a. 生理的標本を用いたX 線回折実験:モルモット盲腸紐またはラット肛門尾骨筋の細胞膜を化学的に破壊したスキンド平滑筋標本を用いて、生理的環境下で弛緩時、収縮時のX 線回折像を撮影し、赤道反射強度と力学応答の関係を経時的に記録する。又、ATP 濃度、イオン強度、温度等の環境を変化させて、それらが両者にどのような影響を与えるか検討を行った。ATP濃度減少、またはATP分解酵素阻害薬により平滑筋収縮フィラメント配列の攪乱が起こることを実証した。2)a. 生理的標本を用いた生理学、生化学的実験:X 線回折実験と同様の条件で、生理学・生化学実験析を行い、それぞれの比較検討を行った。特に、今年度は細胞内ATP濃度が平滑筋クロスブリッジ解離に与える影響を力学的・生化学的に測定し、ATP加水分解が抑制されている条件では、収縮フィラメント配列攪乱により、クロスブリッジ解離とラッチブリッジ形成が抑制される証拠を得ることができた。3)a. 1H- NMR 実験の予備実験:連携研究者の竹森らが開発した、骨格筋生筋及びスキンド標本の1H- NMR 実験から、T2 緩和時間の測定による筋収縮フィラメント格子内の水の構造変化を見積もる方法を用いて、平滑筋スキンド標本のアクチンミオシン相互作用の評価を試みる。平滑筋スキンド標本を用いた1H-NMR 実験は過去に例がないために、実験条件の設定を行った。具体的には標本量、パルス幅調整や繰り返し時間等を変化させて実験に最適な条件を検索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験項目1)および2)については、順調に研究が進み、第53回日本平滑筋学会総会、第29回PFシンポジウム、第89回日本生理学会大会において、成果の一部を発表し、レビューを受けることができた。 実験項目3)については、東日本大震災の影響で使用を予定していた東京慈恵会医科大学現有のNMR装置のメインテナンス等の事情により、当初予定を完全には達成できていないが、現在の進捗状況を考慮すると、平成24年度末までには当初予定を達成できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年については、平成23年度に引き続き予備研究を継続して遂行する。終了次第、人為的にフィラメントリモデリングを行った平滑筋標本を用いた生理学的・生化学的・構造生物学的研究を順次遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)b. 人為的にリモデリングを制御した標本のX線回折実験:アクチンの切断、又再構成を行った標本、太いフィラメント撹乱または再構築を行った標本等、人為的に収縮フィラメントのリモデリングを制御した標本の弛緩時、収縮時のX線回折像を撮影し、赤道反射強度と力学応答の関係を経時的に記録する。又、ATP濃度、イオン強度、温度等の環境を変化させて、それらが両者の関係にどのように影響を与えるかを検討する。2)b. 人為的にリモデリングを制御した標本の生理学、生化学的実験および電子顕微鏡像解析: X線回折実験と同様の条件で、生理学・生化学実験および電子顕微鏡解析を行い、それぞれの比較検討から、平滑筋収縮フィラメント格子のリモデリングが力学応答にどの様に影響を与えるかを検討する。3)b. 生理的標本を用いた1H-NMR実験:スキンド平滑標本を用いて、生理的環境下で弛緩時、収縮時のT2緩和時間を測定し力学応答の関係を経時的に記録する。又、ATP濃度、イオン強度、温度等の環境を変化させて、それらが両者にどのような影響を与えるかを検討する。 これらの研究成果を、2013年2月開催の米国生物物理学会並びに2013年3月開催の日本生理学会大会で発表し、レビューを受ける予定である。
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Research Products
(3 results)