2011 Fiscal Year Research-status Report
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23500480
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田村 了以 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (60227296)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 海馬 / 睡眠 / 霊長類 / サル / 電気生理学 / 脳波 / ニューロン活動 / 学習記憶 |
Research Abstract |
霊長類で睡眠の記憶固定促進効果に関わる神経基盤を解明するため,サルの海馬CA1領域から脳波とニューロン活動を同時記録する実験システムを確立し,これを用いて睡眠中のサルのCA1領域から神経活動を記録した.具体的には,1頭のサルを用い,頭蓋骨にヘッドホルダーの取付け手術を行った.この際,眼球電図,筋電図および表面脳波の各記録用の電極も埋め込んだ.この手術から回復期間をおき,電気生理学的に同定した海馬CA1領域にニューロン活動記録用のテトロードを正確に埋め込んだ.この後約1週間の回復期間をおきサルを電気生理学実験室内に設置した飼育ケージに入れ,CCDカメラによりサルの状態をモニターすると同時に,眼球電図,筋電図,表面脳波および海馬CA1の脳波とニューロン活動を記録した.眼球電図,筋電図および表面脳波のデータより睡眠ステージを決定した.海馬CA1脳波は高速フーリエ変換およびウエーブレット変換を用いて各周波数成分のパワーを求め,睡眠ステージとの関連性を検討した.また,海馬ニューロン活動は単一ニューロン活動に分離後,放電頻度と睡眠ステージとの相関を解析した.その結果,海馬CA1脳波は睡眠ステージに依存して特徴的に変化することが明らかとなった.すなわち,低周波数帯(デルタやシータ)ではその振幅がノンレム睡眠が深まるにつれて増大したが,レム睡眠時には覚醒時とほぼ同じレベルまで戻った.この睡眠ステージ依存的な変化は周波数が高くなるにしたがって小さくなり,ガンマ帯域ではわずかであるが逆転した.またCA1領域で記録したリップル波やニューロン活動は,ノンレム睡眠が深まるにつれて増加したが,レム睡眠時には覚醒時とほぼ同じレベルまで戻った.以上は,サルで海馬脳波と睡眠ステージとの相間を明らかにした世界初の知見である.従来のげっ歯類のデータとは明確な差異があり,霊長類を用いることの有用性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時の計画をほぼ完全に達成し,研究は順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,実験系の構築と基礎的なデータの収集ができたので,今後は今年度の成果を基盤にして,睡眠時と覚醒時との間で神経活動パターンの相間を検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1頭のサルに,実験室内に設置した直線走路(約5 m)の往復移動を訓練する.実験室の天井にはサルの居場所モニター用のCCDカメラが,また走路の両端にはペレットディスペンサが設置されいる.行動課題中にはディスペンサから交互に報酬(ビスケット片)が出されるが,片方のディスペンサから出た餌をサルが取るまでは他方から餌は出てこない.この課題を十分に訓練した後,平成23年度と同様にサルにヘッドホルダー,眼球電図および筋電図の記録電極の取付け,海馬の位置同定後にテトロード電極をCA1領域に埋め込む.この埋め込み手術から回復期間をおき,平成23年度に開発した実験システムを用いて覚醒時と睡眠時の神経活動記録を行う.データ解析は,まず,直線走路上の位置を長軸方向に沿って50分割し,それぞれの部分での平均放電頻度(総放電数/総滞在時間)を算出して場所応答の有無を検出する.場所応答を示すニューロンについては,さらに,海馬脳波位相に対するスパイクタイミングを解析するとともに,睡眠中のデータはLeeとWilson (2002)の方法により,行動課題遂行中の発火パターンの睡眠時リプレーについて解析する.
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Research Products
(18 results)