2011 Fiscal Year Research-status Report
脳刺激・脳活動同時測定系による可塑性誘導脳刺激の理解
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23500485
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
花川 隆 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 脳病態統合イメージングセンター分子イメージング研究部, 部長 (30359830)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 非侵襲脳機能計測 / 脳機能操作 / 神経可塑性 / 多次元イメージング / 神経科学 / 臨床神経生理学 |
Research Abstract |
TMS-EMG-MRI 同時計測システムを拡張し、MRI ベッド上で運動野に対して可塑性誘導脳刺激を与える前後に、運動野神経回路の脳活動、運動野ネットワークの機能連関、行動指標、MEP を測定する計測系を確立した。実験は3 テスラMRI 装置と標準の頭部コイル(現有)を用いて行った。MRI 対応の8 の字TMS コイルは専用装置でMRI ベッド上に強固に固定した。MEP のモニタリング下に、MRI ベッド上でTMS コイルの位置決めと安静時運動閾値の決定を行った。可塑性誘導脳刺激の前後に行う計測として以下の3課題を確立した。(1) 単発TMS-EMG-fMRI:TMS 単発刺激を一次運動野に対して数種類の刺激強度で与え、MEPと局所・遠隔誘発fMRI 信号変化を同時計測し、MEP と局所・遠隔誘発fMRI 信号のTMS 強度に対する量応答関係を測定した。(2) 単純反応時間課題:数秒間隔で表示される視覚刺激に応じて、できるだけ早く反応ボタンを押す課題。実験条件の右手課題と対照条件の左手課題をブロックデザインで行った。反応時間と右手・左手課題中のfMRI 信号と、運動野ネットワーク機能連関の課題依存性変化を検出した。(3) 安静状態運動野ネットワーク解析: 被験者は安静閉眼を10 分間続けた。平成23年度は、可塑性誘導課題として単相四連発刺激(QPS)の刺激間隔が5 ms (皮質興奮性促進)、50 ms(皮質興奮性抑制)を用いた。10名の健常被験者からデータを取得した。単発TMS-EMG-fMRIにおいて、5-ms QPS条件で皮質興奮性の促進を確認した(MEP増加)が、50-ms QPS条件では有意な変化を認めなかった。fMRIデータの解析では、5-ms QPS前と比較して、後で左右運動前野と左頭頂葉のTMS誘発脳活動の増加を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
可塑性誘導脳刺激の前後でfMRIを連続計測した研究は知る限り発表されていない。技術的な壁が予想されたが、当初予定に先んじて統合的計測環境を確立し、実際に可塑性誘導脳刺激の一つである四連発刺激を適応した実験を完遂した。現在解析を進めているところであるが、予備的な研究結果は、近日中に学会発表を行い、本年度中には論文化する予定である。また、残りの可塑性誘導脳刺激を用いた実験についても準備は終了し、平成24年度中には当初計画した研究全体をおおよそ終了できる見込みがでてきた。したがって、研究自体は当初の計画以上に順調に進展していると自己評価する。ただし、予算使用の面では、実験系の立ち上げ時期であったこともあり、協力関係にある研究者が自発的に被験者として参加したため、被験者謝金がほとんど発生しなかったことは付記しておく。また、実験消耗品なども研究開始前に確保していたものでほとんどまかなうことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には、シータバースト刺激(TBS)と連合性対刺激(PAS)を可塑性誘導脳刺激として用いた実験を行う。TBSは、200 msごと50Hzの三連発二相性刺激を基本単位とし、皮質興奮性促進効果を持つとされる間欠的TBSでは2 秒間の基本刺激を10 秒間隔で190 秒間与える。抑制効果を持つ連続TBSでは基本刺激を40 秒間連続で与える。強度は活動時運動閾値の80%。PASは、末梢神経電気刺激(PNS)と一次運動野へのTMS刺激を一定の時間差で組み合わせた連合性対刺激を5-20 秒間隔で90-250 回繰り返す。PNSとTMSの時間関係を変更することで皮質興奮性の促進または制効果をもたらす。左一次運動野に対し、安静時運動閾値115%程度の刺激を計200対与える。PNSとTMSの時間間隔としては、PAS25(刺激時間間隔25 ms、皮質興奮性促進)とPAS10(刺激時間間隔10 ms、皮質興奮性抑制)の二条件を用いる。なお、可塑性誘導脳刺激として想定していた経頭蓋直流電気刺激(tDCS)については、実験系の構築が容易であることもあり、研究計画の一部(安静時脳活動)についてはすでに海外から報告がなされた。従って本研究計画からは除外する。TBSとPASの前後に、(1) 単発TMS-EMG-fMRI、(2) 単純反応時間課題、(3) 安静状態運動野ネットワーク解析による評価を行い、可塑性誘導脳刺激が短期神経可塑性を誘導するメカニズムを探求する。被験者数はそれぞれ20名程度を予定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定通り、実験消耗品(筋電図用ジェル、電極、テープなど)、ソフトウェアライセンスを計上する。被験者謝金は今年度に集中して使用する予定であり、当初計画よりも多く計上する(2実験x20名x2日=のべ80人、予備で10人分)。平成23年度の研究成果を秋の北米神経科学学会で発表予定であるため、成果発表のための海外旅費を計上する。その他、国内での打ち合わせや成果発表のための旅費を計上する。本年度後半には平成23年度の研究成果の論文化を予定しており、英文構成と掲載のための費用を計上する。
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Research Products
(10 results)