2012 Fiscal Year Research-status Report
マウス体系的遺伝解析系を用いたストレプトゾトシン誘発糖尿病感受性遺伝子の解析
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23500494
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大野 民生 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90293620)
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Keywords | マウス / 体系的遺伝解析系 / コンソミック系統 / コンジェニック系統 / ストレプトゾトシン / 糖尿病感受性遺伝子 |
Research Abstract |
マウスSM/J系統とA/J系統を起源として申請者らにより作出されたリコンビナント近交系やコンソミック系統群は、複雑な多因子遺伝形質の原因遺伝子解析に極めて有効な体系的遺伝解析系である。ストレプトゾトシン(STZ)は膵β細胞の破壊作用を有し、糖尿病誘発剤として汎用されている。A/J系統はSTZ誘発糖尿病感受性でSM/J系統はSTZ抵抗性である事から、上記体系的遺伝解析系を駆使して膵島脆弱性を規定すると推定されるSTZ誘発糖尿病感受性遺伝子の同定を行う事を目的とした解析を行った。 23年度の解析により、既にA/J系統の第11番染色体(Chr.11)中央部にSTZ感受性を規定する主要な遺伝子が存在する事が示されていたが、引き続きSM/J系統由来のChr.11を7種の領域に分断化してA/J系統に導入したコンジェニック系統群のSTZ感受性を調査した。その結果、Chr.11の中央部(28~53Mb)に目的とする遺伝子が存在することが判明した。更に、この領域内を更に分断化したサブ・コンジェニック系統群の樹立を進めた。これら系統群のSTZ感受性はまだ判明していないが、いずれは原因遺伝子の存在領域を10Mb以内に絞り込めると考えられる。ゲノム・データベースを用いた解析により、上述の候補領域内にはMpg(N-methylpurine-DNA glycosylase)というアルキル化によるDNA損傷の修復機能を持つ遺伝子が存在する事が判明した。この遺伝子のKOマウスではSTZ感受性が変化することが報告されているうえ、STZの膵β細胞毒性にはDNAのアルキル化が関与している事から、Mpgは有力な候補遺伝子と考えられた。更に、予備的な塩基配列解析により、A/J系統のMpg遺伝子にはアミノ酸置換を伴う変異が存在する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の最大の課題は、Chr.11の中央部に存在するSTZ誘発糖尿病感受性遺伝子の存在領域の限局と、その領域に存在する候補遺伝子をリストアップすることであった。領域については、サブ・コンジェニック系統の繁殖不良により解析が多少遅れており、まだ十分に絞り込めたとは言えないが、有力な候補遺伝子を見出すことは出来ており、概ね当初の予定通り研究が進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) SM/J系統由来のChr.11を分断化してA/J系統に導入したサブ・コンジェニック系統群のSTZ感受性解析を進め、感受性を規定する主要な遺伝子の存在領域を10Mb以内に限局する。 (2) (1)で特定した領域内の有力な原因遺伝子と考えられるMpgについて、SM/JとA/J系統間で塩基配列や発現レベルの解析を行う。 (3) SM/JとA/J系統以外のマウス系統のSTZ感受性を調査して見出した感受性系統に、(2)で特定したA/J系統のMpg変異と同様の変異の有無を調査し、Mpg変異とSTZ感受性との関連性を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品は必要ないため、候補遺伝子の塩基配列解析や遺伝子発現解析の試薬類、マウスのSTZ感受性の解析に必要な試薬等の消耗品の購入と、マウスの飼育に関する経費として使用する。
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Research Products
(2 results)