2013 Fiscal Year Research-status Report
マウス体系的遺伝解析系を用いたストレプトゾトシン誘発糖尿病感受性遺伝子の解析
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23500494
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大野 民生 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90293620)
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Keywords | マウス / 体系的遺伝解析系 / コンソミック系統 / コンジェニック系統 / ストレプトゾトシン / 糖尿病感受性遺伝子 |
Research Abstract |
マウスSM/J系統とA/J系統を起源として申請者らにより作出されたリコンビナント近交系やコンソミック系統群は、複雑な多因子遺伝形質の原因遺伝子解析に極めて有効な体系的遺伝解析系である。ストレプトゾトシン(STZ)は膵膵β細胞の破壊作用を有し、糖尿病誘発剤として汎用されている。A/J系統はSTZ誘発糖尿病感受性でSM/J系統はSTZ抵抗性である事から、上記体系的遺伝解析系を駆使して膵島脆弱性を規定すると推定されるSTZ誘発糖尿病感受性遺伝子の同定を行う事を目的とした解析を行った。 24年度までの解析により、A/J系統の第11番染色体(Chr.11)中央部に存在する主要なSTZ感受性はChr.11の28~53Mbに存在することが判明し、この領域内にMpg(N-methylpurine-DNA glycosylase)というSTZ感受性の有力な候補遺伝子を見出した。Mpg遺伝子の塩基配列を解析した結果、A/J系統のこの遺伝子には3箇所のアミノ酸置換を伴う変異を見出した。これらの変異のうち、MPGの酵素活性に必須でかつ種間でのアミノ酸配列が高度に保存されている領域内に存在する132番目のアミノ酸が多くのマウス系統ではアラニンであるが、A/J系統では性質の大きく異なるセリンに置換していた。Mpg遺伝子にA/J系統と同様のアミノ酸置換を有するMSM系統やNZW系統のSTZ感受性を調査したところ、何れも高い感受性を示した事からMpg遺伝子のA132S変異が極めて有力なSTZ感受性の原因と推定された。一方で、前年度に引き続き候補領域内を分断化したサブ・コンジェニック系統群の樹立を進めているが、系統樹立が遅れている。これら系統のSTZ感受性を解析し、絞り込まれたSTZ感受性遺伝子の領域内にMpgが存在すれば、上述のMpg遺伝子の変異がSTZ感受性の原因である可能性が極めて高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
STZ感受性に関与すると考えられる有力な候補遺伝子を見出し、更にその遺伝子の機能に大きく影響を与えると推定される有力な候補遺伝子変異を見出す事が出来た。しかし、Chr.11の中央部に存在するSTZ誘発糖尿病感受性遺伝子の存在領域の限局に必須となる、サブ・コンジェニック系統の一部が原因不明の繁殖不良により系統樹立が遅れており、当初の予定と比較するとまだ十分に領域を絞り込めていない。現在、これら系統の繁殖性が回復し、系統樹立の目処がたったところである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) SM/J系統由来のChr.11を分断化してA/J系統に導入したサブ・コンジェニック系統群のSTZ感受性解析を進め、感受性を規定する主要な遺伝子の存在領域を10Mb以内に限局し、有力な候補遺伝子と考えているMpg遺伝子がその領域内に存在するかを確認する。 (2) SM/JとA/J系統以外の多数のマウス系統のSTZ感受性とMpg遺伝子の遺伝子型を解析して、Mpg変異とSTZ感受性とが相関しているかを解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
解析目的のSTZ感受性遺伝子の存在領域を絞り込む上で極めて重要かつ効率的と考えられるサブ・コンジェニック系統の一部が原因不明の繁殖不良により系統樹立が遅れており、当初の予定と比較するとまだ十分に領域を絞り込めていないため。 設備備品は必要ないため、候補遺伝子の塩基配列解析や遺伝子発現解析の試薬類、マウスのSTZ感受性の解析に必要な試薬等の消耗品の購入と、マウスの飼育に関する経費として使用する。次年度使用額については、これらの消耗品の購入に充てる。
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Research Products
(2 results)