2012 Fiscal Year Research-status Report
マウス遺伝資源の保全に対応した高度生殖工学技術の開発と体細胞核移植技術への応用
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23500506
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
安齋 政幸 近畿大学, 先端技術総合研究所, 講師 (30454630)
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Keywords | 実験動物学 / 凍結保存 / 生殖工学 |
Research Abstract |
本研究課題として、昨年度実績に基づき引き続き実験動物としてマウスを供試し、卵巣内から回収した卵子(未成熟卵子)を用いて、体外成熟操作により発生した卵子(M2期)を、高度生殖工学技術を駆使して効率的な受精卵の作出および産子獲得方法を検討した。また、卵子成熟操作に掛かるin vitro系における培地の改良を施すことで卵子形態のみならず細胞質内の活性化維持におよぼす効果を検討し、卵子成熟と受精後の発生能の改善を検討した。さらに遺伝子資源の保存を目的に、野生小型げっ歯類を供試し、実験動物種で確立されている体細胞の取得および体細胞核移植技術による細胞機能の検定をおこない遺伝資源の効率的な保存・増殖方法を検討した。 申請者は、昨年報告した5%血清添加修正TaM培地の改良を進め、L-カルニチン添加修正TaM培地を開発し体外成熟後の体外受精および初期胚発生の向上を示し、血清代替をおこなうことで、体外成熟由来卵子の発生率改善が期待できることを示した。今回、血清代替として高純度アルブミン添加修正TaM培地を開発し、体外成熟操作および体外受精とその後の発生能を検討した結果、受精後の胚盤胞期への発生が向上することを確認した。また、それら体外成熟卵子の動態をGDF9因子にて観察した結果、早期の遺伝子発現低下を抑制していることを示した。 次に、遺伝子資源の保存に有効な手段として生殖細胞の保存と合い並び体細胞の保存技術の確立も有効である。特に野生動物では個体数の減少から低侵襲的な方法が望まれる。申請者は、野生小型げっ歯類を供試して体細胞の樹立を検討し、細胞ストックおよび機能解析をおこなった。さらに得られた体細胞ストックは、体細胞核移植により再構築卵子を作成し活性化処理後、クローン胚の発生に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請で述べた研究計画では、マウス卵巣由来未成熟卵子を用いた高度生殖工学技術の開発およびそれら未成熟卵子の遺伝子発現動態の研究そしてマウス組織由来体細胞株の樹立の3要素から構成されている。本研究の実施に際しては、いずれも動物実験を伴うが、動物福祉には最大限に配慮し実施されている。 各検討課題の詳細は、先ず卵巣内未成熟卵子のを用いた受精卵の作成技術の構築として当該年度はマウス凍結精子を用いて体外成熟卵子との体外受精および初期胚発生能を検討した結果、先に開発した透明帯穿孔処理とGSH添加したmHTF培地の開発により新たな高度生殖工学技術の開発を進め、受精卵の作出および産子発生に成功した。 一方、体外成熟培地の更なる改良を進めており、血清代替として高純度アルブミンを添加した修正TaM培地を開発し初期胚の発生率の向上を示すと共に卵子細胞質内における成熟因子としてGDF9因子の早期発現低下を抑制していることを明らかにした。これらの成果は、実験動物科学技術2012および日本受精着床学会へ報告された。 マウス遺伝資源の保全に対応した有用なな手段として、体細胞の保存技術の確立も有効である。申請者は、野生小型げっ歯類を供試して体細胞の樹立をおこない、低温保存により得られた体細胞を組織学的に解析し、染色体数およびDNAシーケンスによる相同性の確認により正常であることを認めた。次に体細胞核移植により体細胞の機能性を確認した結果、電気融合法により再構築されたクローン胚の作成に成功し、得られたクローン胚を同様に解析したことろ、DNAシーケンスによる相同性を単一クローン胚で示された。これらの成果は、日本実験動物技術者協会および日本分子生物学会にて報告された。以上のことより、いずれも本研究の進展は極めて効率的に機能していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進の方策として、現在まで明らかとなった成果を踏まえて、卵巣内卵子の有効利用を目的に、未成熟卵子の体外成熟操作および体外成熟培地がその後の発生にあたえる影響を検討する。さらに、成熟卵子が精子との受精により分化全能性を持つ受精卵の遺伝子発現制御機構にあたえる影響を探求する。 本計画では、既に体外成熟卵子を用いてin situ hybridizationおよびReal-time PCRを用いた細胞質内における蓄積領域の定量化に成功した。今後、新たに卵子細胞質ダメージの指標として酸化ストレス暴露の定量化を比較検討する。現在、開発した高純度アルブミン添加修正TaM培地を用いて発生した卵子を検査したところ酸化抑制の傾向を認めている。これらのことは、更なる体外成熟培地改善に繋がることが期待され、様々な系統への体外成熟-体外受精の応用が期待できる。 体外での胚操作技術には、酸化ダメージに対する卵子の老化および細胞質の活性低下を招く。そこで本計画では、体外成熟由来卵子を用いて体外受精後に受精しない卵子からの高度生殖工学技術を用いた受精卵の作出を検討する。さらにマウス卵子の老化を抑制する披見物質を併用した受精卵の作出を検討する。これらのことは、貴重な卵子を用いたより多くの受精卵を獲得することが可能と考えられ、遺伝資源の保全と確保の観点からも有用な知見が得られると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
すべて研究計画に沿って充当される。高度生殖工学技術の開発においては、胚・配偶子の操作に掛かる細胞培養試薬および胚・配偶子培養器具は研究期間を通じて必要とする。 卵子老化抑制剤あるいは酸化ダメージ測定等、卵子細胞質内の発現動態解析に必要な分子生物学研究試薬は研究期間を通じて必要となる。 本申請期間を通じて実験動物の飼養と管理は不可欠であり、清浄度の高い動物実験施設管理作業に掛かる実験動物飼育管理用品経費が必要となる。いずれも本研究の進展に極めて有効的に使用されるものと考えられる。
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Research Products
(22 results)
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[Journal Article] Mouse zygote-specific proteasome assembly chaperone important for maternal-to-zygotic transition.2013
Author(s)
Shin SW, Shimizu N, Tokoro M, Nishikawa S, Hatanaka Y, Anzai M, Hamazaki J, Kishigami S, Saeki K, Hosoi Y, Iritani A, Murata S, Matsumoto K.
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Journal Title
Biol Open
Volume: 15
Pages: 170-82
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Development of interspecies cloned embryos reconstructed with rabbit (Oryctolagus cuniculus) oocytes and cynomolgus monkey (Macaca fascicularis) fibroblast cell nuclei.2012
Author(s)
Yamochi T, Kida Y, Oh N, Ohta S, Amano T, Anzai M, Kato H, Kishigami S,Mitani T, Matsumoto K, Saeki K, Takenoshita M, Iritani A, Hosoi Y.
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Journal Title
Zygote
Volume: 5
Pages: 1-9
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Method for providing an availability of solutions for culture and vitrification of rat embryos2012
Author(s)
M.Yanagi, T.Kamisako, T.Aoto, M.Anzai, T.Kaneko, M.Goto, Y.Sotomaru, A.Takizawa, H.J.Jacob, T.Kawabe, R.Tsuneyoshi, M.Azuma, T.Kuramochi, T.Eto
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Journal Title
Exprimental Animals
Volume: 61
Pages: 250
DOI
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[Presentation] Study on Conservation of genetic resources using wild mouse2012
Author(s)
Anzai.M, Matsuzaki.H, Murai.H, Kitahara.N, Nishimura.M, Nakagata.N, Sakayama.H, Tsutsui.R, Sugimoto.N, Miyashita.M, Hosoi.Y
Organizer
第35回日本分子生物学会年会
Place of Presentation
福岡国際会議場、マリンメッセ福岡(福岡県)
Year and Date
20121211-20121214
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