2011 Fiscal Year Research-status Report
人体デジタルモデルを用いた救急医療迅速化のための傷害予測手法の開発
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23500513
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宇治橋 貞幸 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (80016675)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 交通事故 / 自動車乗員 / 傷害予測 / 衝突事故 / 人体デジタルモデル / 自動車有限要素モデル |
Research Abstract |
本研究は、人体の全身デジタルモデルを用いて様々な仮想事故シミュレーションを行って傷害データベースを作製し、このデータベースから事故情報を説明変数とした傷害予測式を構築することを目的としており、初年度は、マルチ・ボディ・ダイナミクスの理論に基づいた人体全身デジタルモデルをソフトウエアMADYMOに構築するとともに、そのモデルをハイブリッド化するために、傷害解析が重要な部分については有限要素モデル化を行なった。特にマルチ・ボディ・モデルは、腕や脚の先端部分が簡単化されており、その有限要素化が必要であった。同時に頭部も複雑な傷害の解析が必要であるため有限要素モデル化を行った。また、身長や体重などの全身形状は個人差が大きく、また年齢や性差も傷害内容や程度に深く関係するので、個体別モデルの構築と人体の強度に関する影響も考慮する必要があった。個体別モデル製作に関しては、申請者が過去に行なった手法が有効であった。人体の強度に関しては、アメリカの大学(例えばバージニア大学やウエイン大学)などが公開している資料が役立った。高齢者のモデル構築に関しては、十分なデータが無かったために、人体強度の統計データを調べるだけに留まった。製作した人体モデルの精度検証に関しては、日本の交通事故総合分析センターや米国のURGENCYなどが取集した事故データを利用して行った。更に、人体モデルを用いて交通事故傷害シミュレーションを行うためには、キャビンのモデルが必要となるので、これについても詳細な有限要素モデルの構築を行った。これらの成果により仮想の交通事故における乗員の傷害シミュレーションを実施するための準備が整ったことになる。なお、これらの成果については、平成23年度自動車技術会において発表したが、平成24年度も自動車技術会にて発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人体デジタルモデルの作成に関しては、日本人の身体寸法データベースを用いることにより身長や体重などを変数とする回帰式を求め、これらを与えることにより簡単にモデル作製が出来るようになったが、これまでの経験を有効に活用することが出来た。また、研究協力者(金沢大学・宮崎祐介助教、Hongik University・H.Y.Choi Professor、新潟大学・Jonas Aditya Pramudita助教)の意見とアドバイスが大いに役立った。また、モデル作製の作業には多く時間が掛かるが、主に大学院学生が協力してくれたために作業を遅滞なく進めることができた。 一方で高齢者モデルに関しては、身体形状や人体各パーツの強度に関するデータが不足していたため、十分なモデル作製には至らなかった。この問題に関しては、次年度以降も引き続きデータ収集などの努力を継続する必要があり、高齢者モデルの充実に努める必要がある。 自動車乗員のキャビンのモデル化に関しては、自動車会社の協力が得られたため、単にキャビンモデルに衝突加速度を入力するだけでなく、車体全体の有限要素モデルを使用することにより実際に近い衝突加速度を得ることが可能となった。この点は、研究を始める時点では期待していなかったので、想定外に大きな結果を得ることが出来た。 総体的な研究の達成度は、個々には過不足はあるものの順調に推移しており、本助成金は大いに役立った。
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Strategy for Future Research Activity |
交通事故に絞り、正面から側面までの角度から衝突する交通事故を想定したシミュレーションを行う。このとき、車両の型式・乗員の体格や着座状況・衝突速度や方向・保護装置の有無などのパラメータを変えた事故シミュレーションを大量に行い、その結果から傷害の内容や程度を人体デジタルモデルから推定し、交通事故による傷害データベースを構築する。この際、乗員に作用する加速度を車両の特性や衝突角度と速度から推定しなければならないが、自動車アセスメント(JNCAP)の全データを取得して分析するとともに車両の有限要素モデルも利用して推定精度を向上させる。また、交通事故・転倒などの不測の事故による傷害情報を継続して収集し、事故シナリオの分類・整理を行うことにより、想定した交通事故シミュレーションの妥当性についても検証を行う。 事故シミュレーションを大量に行って傷害データベースを構築するには、多くの時間が掛かるため大学院生に補助を依頼するとともに、特に傷害の解析結果の分析には医学部の研究協力者(益子邦洋:日本医科大学教授、阪本雄一郎:佐賀大学医学部教授など)の意見を仰ぎながら行なっていく。また、必要に応じて車両モデルの追加などする場合には、自動車会社の協力を依頼しながら進めて行く予定である。また、自動車技術会や日本機械学会などに積極的に出席し、情報収集や研究発表を行って行く予定である。 これ以外にも、交通事故以外の不測の事故についてもデータ収集を行い、本研究の成果を応用できる可能性のある問題についての検討も行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交通事故シミュレーションを大量に行い、乗員の傷害データベースを行うために大学院生に研究補助を依頼する必要があるので、謝金を支出するとともにシミュレーションを行うためのコンピュータや関連物品の購入に支出する予定である。 また、多くの研究協力者との打ち合わせを行うための旅費を支出する予定である。旅費に関しては、研究成果の発表や情報収集のために日本機械学会や自動車技術会に出席するとともに国際会議でも研究発表を行うために支出する予定である。 23年度の収支状況報告書では会計上の都合により支出が遅れ残額が発生してしまったが、既に23年度の経費は全額支出済みであり、次年度の研究費についても計画的に使用していく予定である。
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Research Products
(1 results)