2012 Fiscal Year Research-status Report
神経回路発達を誘導するグリア細胞トランスポーター分子の制御メカニズム
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23500516
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
吉田 祥子 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40222393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
穂積 直裕 豊橋技術科学大学, 工学教育国際協力研究センター, 教授 (30314090)
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Keywords | GABA / VGAT / バルプロ酸 / グリア細胞 |
Research Abstract |
平成24年度実施計画(1)発達期小脳で、GABAを合成している細胞について、培養小脳グリア細胞を用い、GABA放出の光学測定を行ったところ、神経細胞が共存しない環境においても培養初期(~14日培養)のグリア細胞からGABA放出が観察され、一方GFAP発現した培養後期(21日培養~)のグリア細胞では、GABA放出が著しく減弱した。また、GABA放出期のグリア細胞は、GABA合成酵素GAD65/67抗体で染色され、GABA合成能があることが確認できた。これらのことから、発生初期にはグリア細胞がGABAを合成し放出していると考えられる。さらに生きたグリア細胞に対し、VGATタンパク質のN-terminal認識抗体またはC-terminal認識抗体を結合させたところ、N-terminal抗体のみが結合した。いずれの抗体も化学固定後の細胞を染色した。生きた細胞では抗体が細胞膜を通過できないため、細胞外に露出した部位にのみ結合する。これらの結果から、GABA放出期のグリア細胞は、細胞膜にN-terminalを見せる向きで分布していることが確認された。これは、GABAを細胞内に取り込む向きと考えられ、VGATは発生初期の小脳において、グリア細胞にGABAを取り込む機能を持つことが示唆された。 実施計画(2)GABAの取り込みと放出に強く関与するトランスポータータンパク質を、細胞膜に安定化させるメカニズムと制御因子を観察するため、インピーダンス顕微鏡を用いた細胞観察のフレームアップを整えた。C2C12細胞、及びC6グリオーマ細胞を用い、細胞膜直下のアクチン線維の重合・脱重合に伴うインピーダンスの変化、および、アクチン線維が収縮を示した際のインピーダンス変化を、細胞に非接触で観察した。また、タンパク質にマーカーとなる金属結晶を結合し、併せて観察することを試行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に計画した研究計画のうち、(1)発達期小脳で、GABAを合成している細胞を特定する については、GABAの合成,放出、制御タンパク質の分子方向性を確認し、十分達成できた。研究計画の(2)GABAの取り込みと放出に強く関与するトランスポータータンパク質を、細胞膜に安定化させるメカニズムと制御因子を確認する については、音響インピーダンス顕微鏡を用いた細胞レベル観察が可能になり、アクチン線維の動的な変化が観察できるところまで進行してきた。この過程で、抗てんかん薬バルプロ酸が小脳の初期発生に大きな影響をもつことを発見した。バルプロ酸を胎児期に投与されたラットでは、発生初期にグリア細胞からのGABA放出が増大し、GLAST、GLT-1などトランスポータタンパク質の発現が変化した。平成25年度にはこれを重要な実験ツールとして、グリア細胞からのGABA放出制御のメカニズムを測定することができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、(1)グリア細胞で制御される発達過程における、遺伝子発現の変化を追跡する、 という研究を実施する。平成24年度に、発達初期にはグリア細胞がGABAを放出し、発生に伴って神経性の放出に変わること、グリア細胞上に分布するVGATはGABAを取り込む方向に制御すること、バルプロ酸によってグリア細胞からのGABA放出量が増大し、神経発生自体が変化することを観察した。バルプロ酸は、ヒストンジアセチラーゼ(HDAC)阻害剤として機能することが知られ、細胞周期への介入、神経分化の促進などの機能を持つことが報告されている。一方胎児期のバルプロ酸被曝はヒトの自閉症、動物での皮質構造異常をもたらすことも既知である。これらを受け、小脳発達過程でバルプロ酸、あるいは他のHDAC阻害剤によって細胞分化に介入することで、グリア細胞からのGABA放出がどのように変化するか、同時に各種のトランスポータタンパクの発現がどのように変化するか観察し、これらを制御する遺伝子的検討を行う。グリア細胞からのGABA放出が、脳の発達に及ぼす制御機構を、遺伝子からタンパク動態まで観察することをめざす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に超音波顕微鏡を用いた細胞内構造測定のためのフレームアップが機器故障により遅れたため、その分を平成24年度に実施した。さらに24年度研究により、発生過程のGABA放出を制御するタンパク質候補が複数発見されている。これらをふまえ、次年度は細胞を用いた酵素光学測定法の研究とともに、当初計画より広い範囲でトランスポータタンパク質の細胞内動態の観察を行う。酵素を含めた試薬費、動物費などの消耗品支出が必要である。また、国内の学会に参加し、発表を予定しているため、旅費が必要である。
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Research Products
(6 results)