2012 Fiscal Year Research-status Report
カルシウムイオンナノレベルイメージングによる血小板内活性化機能に関する研究
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23500530
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
田村 典子 東海大学, 医学部, 助教 (90439703)
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Keywords | イメージング / カルシウムイオン / 血小板 |
Research Abstract |
ex-vivoの血流条件下、血小板血栓形成モデルをもちいて、血管壁損傷部位に相当するフォンビルブランド因子 (VWF)を固相したマトリクス上に接着した血小板内カルシウムイオン[Ca2+]iについて高速共焦点レーザー顕微鏡によるリアルタイムイメージングを行った。マトリクスからの刺激による 血小板内[Ca2+]iの詳細な局在をナノレベルでイメージングすることにより、血小板活性化の初期シグナル伝達にかかわる因子について検討した。血小板の活性に関わる主要な受容体トロンビン受容体PAR-1、およびADP受容体P2Y12の関与について、細胞内カルシウムイオン指示薬Fluo3AMを用いて血小板内 [Ca2+]iのリアルタイムイメージングを行った。動脈血流に相当する1500 s-1の血流速度条件下、VWFに接着した血小板は接着後8.6±2.7秒後に最大417.8±83.2 nMの一過性の[Ca2+]i上昇が認められた。P2Y12阻害条件では225.7±106.1 nMと顕著に抑制され、PAR-1阻害条件では375.8±116.9 nMと[Ca2+]i上昇は影響を受けなかった。P2Y12がVWF刺激による初期活性化血小板内 [Ca2+]iの調節に関与することが示唆された。2)ATPによるVWFに起因する血小板初期活性化[Ca2+]i 上昇への影響を検討した。ミトコンドリア電子伝達系、および解糖系ATP合成阻害薬をそれぞれ用いて同様の実験を行ったところ、いずれのATP合成阻害条件下においても [Ca2+]i上昇は抑制された。3)VWF上に接着した単一血小板(2-4μm)を30x30の格子状(900分画)に分割し(1分画は77nmに相当)60フレーム/秒で血小板内[Ca2+]iの拡散速度をイメージングにより算出した。VWF刺激による[Ca2+]i上昇時の拡散速度は36μm2/秒であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
[計画達成] 1)前年度予定していたVWFに起因する血小板初期活性化[Ca2+]iの上昇にADP受容体P2Y12が関与し、トロンビン受容体PAR-1は影響しないことを明らかにすることができた。2) 24年度実施を計画していた、ATPによる血流条件下VWFに起因する血小板初期活性化[Ca2+]iへの影響は、電子伝達系, 解糖系のATP合成阻害薬により、血小板内総[Ca2+]iが抑制されたことで評価できた。3) 前年度確立した血小板内 [Ca2+]iの局在を精緻にイメージングすること、すなわち2-4μmという小さな血小板内の蛍光シグナルの移動を高速で高感度に検出することにより、VWF上に接着した直後の血小板 [Ca2+]iは血小板中心部の [Ca2+]iが集積した箇所から放射状に拡散していくことが認められた。これにより血小板内[Ca2+]iの拡散速度は36μm2/秒と計測することができた。またVWF上で形態変化の仮定まで活性化が進行している血小板については細胞膜近傍より[Ca2+]iの移動することから、VWF接着直後と異なる[Ca2+]i拡散パターンを示すことが明らかになった。 [計画未達成]1)24年度実施を計画していた、Rhod-2を用いたミトコンドリア内のCa2+のイメージングについては大幅に遅れている。2)P2Y12阻害時とPAR-1阻害時の血小板内[Ca2+]iの局在パターンに関する詳細なイメージング解析が達成されていない。計画遅延の理由はEM-CCDカメラの導入が遅れたことにより、前年度予定をしていたP2Y12およびPAR-1の血小板の初期活性化[Ca2+]iの検討が当年までずれ込んでしまったことが主な原因となっている。また、補足実験としてADP,トロンビン受容体に限らず、その他の活性化阻害物質についても検討を始めたため年度に達成できないものがあった。
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Strategy for Future Research Activity |
高性能EM-CCDカメラの導入による画像解像度が改善したことにより、より詳細な[Ca2+]iの局在イメージを得ることが可能になった。それに伴い、30フレーム/秒を60フレーム/秒に変更したイメージングにより、活性化に伴う[Ca2+]iのより詳細な挙動を解析可能になる一方、解析に要する時間は増大した。現在対応策として解析ソフトの改良を検討している。25年度の計画では、[Ca2+]iの局在を血小板のオルガネラであるミトコンドリア、ゴルジ装置、小胞体のイメージングとともに可視化することを予定している。血小板内のオルガネラのイメージングについては、ピエゾモーターを用いた3Dイメージングにより血小板内の3次元的局在を把握することが可能である。[Ca2+]iについては増減が1-2秒と蛍光を検出できる時間が短いため、オルガネラと一緒に3Dイメージとして像を結ぶことは難しい。現状では2次元的イメージングによる[Ca2+]iとオルガネラの同時イメージングを行い、 [Ca2+]iと各種オルガネラとの配置を基に、Ca2+の拡散径路をイメージングにより明らかにする。ミトコンドリアについては波長の異なる蛍光標識を行いてイメージングを行い、Fluo3による[Ca2+]iとのカラーイメージングにて対応を検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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