2011 Fiscal Year Research-status Report
特異的金属識別機能を備えたペプチドアレイの開発と医学応用
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23500546
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
平岡 和佳子 明治大学, 理工学部, 教授 (00212168)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ペプチドアレイ / 金属認識 / CD / ESR / プリオン |
Research Abstract |
ペプチドと各種金属や生体物質との相互作用を明らかにすることは、生理機能の解明や、各種疾病の発病メカニズムの解明につながり、さらに近年のペプチドと物質との相互作用を利用した機能性ペプチドの応用へと広がる。本研究は、各種金属分子との相互作用を示す短鎖ペプチドをデザイン・作成し、電子スピン共鳴装置や円二色性偏光散乱法などの各種分光法を用いてその結合様式の解明を行い、疾病モデル形成や各種機能性ペプチドの開発に利用することを目的としている。 初年度は、銅、ニッケル、コバルト、鉄などを区別・認識し、結合するペプチド鎖をデザインし、さらにペプチドと金属との相互作用の定量化を試みた。 実際のデザインには、プリオンペプチドの銅イオン結合サイトである、オクタリピート構造や、ニッケルイオンとの結合性を用いてペプチドの分離に使用される、HisTagとして知られるヘキサHisペプチド鎖構造など、特異的に金属に結合するペプチド配列が複数知られているので、それらを基本モデルとして、各種金属との結合の可能性のあるペプチド鎖をデザイン・作成した。各モデルペプチドについては、PEP-FOLD serverのDe novo peptide structure predictionなどを用いて、エネルギー最適化計算を行い基本構造の予測を行った。さらに、これらのペプチド構造のESR解析のために、ラベル剤(MTSSL)の配向をCHARMMプログラム、CHARMM19 force fieldを用いて、エネルギー最小化計算を実施するためのシステムを構成した。 ペプチド・金属の相互作用の定量には、円二色性偏光法(CD)や電子スピン共鳴法(ESR)とともに、電気伝導度の測定システムを取り入れ、金属との結合によってペプチドのpK値の変化を認識することで、定性的・定量的な反応を簡易的に検出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の当初の研究計画は、ペプチド鎖のデザインと、相互作用の検出であった。まず、第一のペプチド鎖のデザインについては、プリオンペプチドの銅イオン結合サイトである、オクタリピート構造や、ニッケルイオンとの結合性を用いてペプチドの分離に使用される、HisTagとして知られるヘキサHisペプチド鎖構造など、特異的に金属に結合するペプチド配列が複数知られているので、それらを基本モデルとして、各種金属との結合の可能性のあるペプチド鎖をデザインすることに成功した。しかしながら、全長タンパク質の作成は、実行することができなかった。 第二の相互作用の検出については、従来のCDやESR法による測定が成功したことと、さらに電気伝導度の測定により、金属との相互作用が検出可能となったことは、研究の大きな成果と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、金属を認識・区別するペプチド配列のスクリーニングを終了し、さらに相互作用の定量化と、構造解析を中心に研究を遂行する。 ペプチドと金属との相互作用の定量化については、これまでの方法に加えて、従来はペプチドの分析が困難であった、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を取り入れ、全反射吸収測定(ATR)や、厚可変溶液ホルダーなどを用いた解析を試みる予定である。各種の分析方法とあわせて、FTIRによる相互作用の検出方法の確立を目指す。 さらに、継続してペプチドと金属との相互作用機序の解明と、相互作用の定性化を試み、得られた成果を用いて、その応用性を検討・評価し、金属を認識するセンサーペプチドデザインを提示する。実際にそれらをポリマー等へ接着させ、各種金属の検出の可能性についても実験を行う予定である。 さらに、アルツハイマー・プリオン病等神経変性性疾患モデルとしての利用性を検討する。実際に、変性モデルによる抗アルツハイマー薬や、抗プリオン薬の評価を試みるものとする。さらに、これらのペプチドをヒト培養細胞へ用いることで、致死性・発ガン性などの安全性についての評価を検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として、免疫試薬代・培養試薬代・ESR運転用液体ヘリウム代金、計500千円、国内成果発表旅費、1回分として120千円、あわせて直接経費の合計は620千円とする。内訳には、前年度の未使用分約20千円を含むものとする。さらに間接経費として、研究環境の維持・改善のために什器、および印刷機などの購入にあてるため、180千円を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)