2011 Fiscal Year Research-status Report
交流磁場を用いた舌癌の低侵襲焼灼治療システムの確立
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23500559
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
猶原 隆 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (50093935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 祐司 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20210958)
前原 常弘 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (40274302)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 癌治療 / 焼灼療法 / ハイパーサーミア / 交流磁場誘導法 / 生体等価ファントム / 発熱シミュレーション / 焼灼用磁性体針 / 動物実験 |
Research Abstract |
今年度、本研究において実施した実験内容、及び得られた主な結果は下記の通りである。1.【チタンで被覆した「焼灼用磁性体針」の試作】焼灼用針を刺入する場合、舌腫瘍の大きさや位置によって、その角度が大きく異なる可能性がある。従来の「焼灼用磁性体針」では、刺入角度で発熱特性が著しく異なるため、一定温度で腫瘍を確実に凝固壊死させることが困難であった。今年度は、磁束方向に対して無方向性の発特性を有する焼灼用針を試作することを最重要な課題とした。このような「形状磁気異方性」の効果を低減させるため、金属強磁性体を包み込むチタン層の厚さを変化させるとともに、舌癌に適用するための最適な長さ、直径、さらに先端部の形状に関する検討を行った。そして、完全な無方向性の発熱特性を有する、全長26.5mmの焼灼用針を完成することができた。得られた研究成果は、生体機能材料に関する国際雑誌に論文として発表した。2.【チタン被覆磁性体針の熱解析シミュレーション】チタン被覆磁性体針を医療現場で実用するには、正確な温度制御技術の確立が不可欠である。磁性体針の発熱特性をシミュレーション解析により調べた結果、交流磁場中での発熱挙動を視覚的に捉えて、そのメカニズムを明らかにすることができた。3.【治療用小型焼灼装置の設計・試作と交流磁場誘導加温実験】本研究で開発を目指すのは、舌癌を対象とした「治療用小型焼灼装置」である。そのためには、人体における「焼灼用磁性体針」からの熱伝達の挙動を明確にする必要がある。今年度は、模擬生体である「生体等価ファントム」の作製技術に着目して検討を行った。そして、その作製技術を確立することができ、人体を想定した「生体等価ファントム」中での交流磁場誘導加温実験が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の成否の鍵を握るのは、磁束方向に対して無方向性の発熱特性を有する「チタン被覆磁性体針」の開発である。針状の金属磁性体に特有な「形状磁気異方性」の効果の低減に成功したことで、焼灼用磁性体針の刺入角度が異なっても、一定の発熱曲線を得ることが可能となった。この結果は、高周波出力と周波数を決定すれば穿刺角度の影響無しに、しかも温度測定センサーを用いなくても、治療温度の把握が可能なことを意味する。直接的な温度測定の必要が無くなることで、臨床応用への展開が有利になると考えられる。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると見なされる。
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Strategy for Future Research Activity |
無方向性の発熱特性を有する「チタン被覆磁性体針」の試作に成功したことを踏まえて、金属強磁性体をチタン層で完全に被覆する技術の改良に努める。これまでに得られた技術を基本として、舌癌の焼灼療法に使用可能な「チタン被覆磁性体針」の作製技術を確立する。治療用小型焼灼装置については、患者への安全性の確保が最重要課題と見なされる。特に、電磁波の人体への影響を排除する方法が大きな問題と見なされる。試作と改良作業を繰り返すことで、「治療用小型焼灼装置」の安全性と機能性を確保する。生体等価ファントム(模擬生体)の作製技術を確立したので、生体等価ファントム実験による基礎データの集積に重点を置く予定である。この実験は、動物実験の前段階と位置付けられるものであり、治療計画の立案に不可欠な、焼灼領域の範囲、焼灼用磁性体針の刺入本数などを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の「物品費」により、小型熱画像センサー(価格:198,000円)を購入する予定である。この装置は、生体等価ファントムを用いた発熱実験において、温度の上昇を視覚的に捉えることに必要としている。また、平成24年10月に北京で開催される下記の国際会議で、これまでの研究成果を発表する予定である。そのための経費を「旅費」の項目から使用する。 「第7回材料の電磁気プロセスに関する国際会議」
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Research Products
(4 results)