2011 Fiscal Year Research-status Report
腹筋電気刺激によるフィードバック血圧制御装置の開発
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23500560
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
山崎 文靖 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (10243841)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 先端機能デバイス / 医療・福祉 / 医療工学 / 起立性低血圧 / 低侵襲治療システム |
Research Abstract |
重度起立性低血圧治療のため、腹筋を電気刺激することにより連続的に収縮させ、血圧を制御する方法を着想した。そこで、三年間の実験的臨床研究により、「腹筋電気刺激によるフィードバック血圧制御装置」の開発を行う。H23年度は、到達目標の前半部分である、「人工血管運動中枢の動作原理を伝達関数として記述し、血圧制御装置を設計する」ことのうち、以下を行った。( 腹筋電気刺激による血圧の応答性(伝達関数H2(f))の同定 ):起立性低血圧を有する自律神経失調患者2例、脊髄損傷患者1例、全身麻酔手術患者(膝関節鏡手術)1例、平均年齢57±16歳、に腹筋刺激電極を装着し、刺激頻度を不規則に変動させることにより、刺激頻度から動脈圧までの伝達関数H2(f)を同定した。刺激電極は左右腹部皮膚表面に装着。誘発電位検査装置からの刺激パルスが外部トリガー入力で駆動されるように設定し、コンピュータから誘発電位検査装置に,白色雑音様の不規則なトリガー信号を入力しながら,動脈圧の変動を10分間記録した。パルス幅は1ミリ秒、刺激頻度は,0か30Hzかのいずれかになるように6秒間隔毎に不規則に切り替えた。刺激頻度から動脈圧までのステップ応答関数では、刺激頻度の上昇に血圧は迅速に反応し、20秒以内に定常状態の90%に達した。定常ゲインは0.2±0.07 mmHg/Hzであった。( H23年度の問題点 ):実際に腹筋刺激を行うと、症例によって腹筋収縮が不十分な症例が認められた、その原因として、腹部皮下脂肪厚および腹筋厚が関与すると考えられ、腹部CTにて評価を行った(17例)。その結果、中年者では腹部皮下脂肪厚が大きいため、また高齢者では腹筋厚が小さいため、刺激による腹筋収縮が不十分になる可能性が考えられた。よって、刺激強度の評価を行う必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記概要に記した問題点が認められたため、症例数が少なかった。刺激電圧・電流を増大させると解決する可能性はあるが、その反面、皮膚抵抗増大による痛みが増加する可能性もあり、その評価が必要である。また、現在用いている日本光電社製電気刺激装置(SEN-3401, SS203-J)では、インピーダンスの変化により100V x 10mAまでの刺激出力しかなく、それ以上の出力が可能な機器使用を検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度は、(腹筋電気刺激による血圧の応答性(伝達関数H2(f))の同定)のための、症例・データを集めるとともに、(人工血管運動中枢の動作原理の記述・設計)に着手する。人工運動中枢は、サーボ制御の理論を応用して設計する。サーボコントローラの動作原理としては,比例・積分補償型のネガティブフィードバックを採用する。ランダムな腹筋電気刺激に対する動脈圧の応答特性(上記で求めたもの)を算出し、平均的な伝達関数H2(f)を二次の低域通過フィルターへの曲線近似法を用いて解析する。求められた平均的なH2(f)を用いて,ステップ状の血圧低下に対する血圧サーボシステムの振る舞いを比例補償係数Kp=0, 1, 2,積分補償係数Ki=0, 0.01, 0.05, 0.1, 0.2の組み合わせでシュミレーションし,血圧サーボシステムがもっとも安定的かつ迅速に血圧低下を代償する係数を決定する。また、H23年度に認められた問題点を解決するために、刺激電圧・電流を皮膚刺激による痛みの関連、および、高電圧・高電流を出力できる機器の準備を行う。 連携協力者として佐藤隆幸医師(循環制御学)、柿沼由彦医師(循環制御学)が圧受容器反射装置の動作原理の開発に、大崎康史医師(神経内科)が患者のフォローに協力し、研究協力者として、清家真人医師(いずみの病院、脳神経外科)、牛田享宏医師(愛知医科大学、学際的痛みセンター、高知大学整形外科)が患者のフォローに協力する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費として、腹部刺激用の既製品電極、接続リード線・コネクタ、液性因子解析費用を計上する。人件費・謝金として、前年と同様、研究補助員を1名確保するための経費を計上する。また、他施設への調査研究費、印刷費を計上する。
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