2012 Fiscal Year Research-status Report
腹筋電気刺激によるフィードバック血圧制御装置の開発
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23500560
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
山崎 文靖 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (10243841)
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Keywords | 先端機能デバイス / 医療・福祉 / 医療工学 / 起立性低血圧 / 低侵襲治療システム |
Research Abstract |
重度起立性低血圧治療のため、腹筋を電気刺激することにより連続的に収縮させ、血圧を制御する方法を着想した。そこで、三年間の実験的臨床研究により、「腹筋電気刺激によるフィードバック血圧制御装置」の開発を行う。平成24年度は前年度の成果を基に以下を行った。 人工血管運動中枢の動作原理の記述・設計:サーボコントローラの動作原理として,比例・積分補償型のネガティブフィードバックを採用した。H23年度に求めたランダムな腹筋電気刺激に対する動脈圧の応答特性より、平均的な伝達関数H2(f)を二次の低域通過フィルターへの曲線近似法を用いて解析した。求められたH2(f)を用いて,ステップ状の血圧低下に対する血圧サーボシステムの振る舞いを比例補償係数Kp=0, 1, 2,積分補償係数Ki=0, 0.01, 0.05, 0.1, 0.2の組み合わせでシミュレーションし,Kp=1.0, Ki=0.01でシステムがもっとも安定的かつ迅速に血圧低下を代償することが予測された。 刺激強度の問題について:刺激強度と痛みの評価を11例のボランティア(年齢54±10歳、男性2名)で、日本光電社製バイオニック血圧制御システムを用いて行った。超音波検査での平均腹部脂肪厚は14.3±4.0mm, 平均腹筋厚は10.8±2.1mmであり、痛みに耐えられる強度は30Hz, 30-45mAであった。平均血圧は最大2.4mmHg上昇した。以上より最大40mAほどの電流での刺激が可能と考えられるが、症例ごとに評価することが必要と思われた。 デバイスの有効性の検討:重症起立性低血圧を有する自律神経疾患患者1例で、上記システムを装着し、起立負荷検査を行った。腹筋刺激により起立時間を2.3分から、3.2分に延長することが可能であったが、下肢圧迫帯を装着し40mmHgで加圧することにより4.4分まで延長することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「腹筋電気刺激によるフィードバック血圧制御装置」の制御システムは完成し、装置の強度の問題は、上記で解決することができた。しかし、実際患者に応用すると、腹筋刺激だけでは血圧の維持が不十分であった。これは、臥位での腹筋刺激では血圧がコントロールできるが、立位負荷での下肢静脈への血液プールが増加することにより、腹部・上半身の血流量が低下するためと考えられた。よって、刺激中に下肢圧迫をすることで、より効果的な血圧コントロールが可能であると考えられ、実際上記1例で検証できた。これらより、システムに下肢圧迫を加える必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度は、開発した「腹筋電気刺激によるフィードバック血圧制御装置」の有効性の検証を行うため、症例を増やすとともに、下肢圧迫による効果の検討を行う。下肢圧迫は、従来のショックパンツでは加圧時に歩行が不可能であるので、ジェット戦闘機パイロットが装着する耐Gスーツの下肢部を改変したものを用いる。さらに可変圧を入力できる装置の検討も行い、一定圧での圧迫と比較検討する。 連携協力者として佐藤隆幸医師(循環制御学)、柿沼由彦医師(循環制御学)が圧受容器反射装置の動作原理の開発に、大崎康史医師(神経内科)が患者のフォローに協力し、研究協力者として、清家真人医師(いずみの病院、脳神経外科)、牛田享宏医師(愛知医科大学、学際的痛みセンター、高知大学整形外科)が患者のフォローに協力する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度の研究費とあわせ、消耗品費として、腹部刺激用の既製品電極、耐Gスーツ改変費用、液性因子解析費用を計上する。人件費・謝金として、前年と同様、研究補助員を1名確保するための経費を計上する。また、成果発表旅費、印刷費、研究成果投稿料を計上する。
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