2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500566
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
足立 吉隆 芝浦工業大学, システム工学部, 教授 (70407229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 朝夫 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50155818)
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Keywords | 人体模型 / 紫外線硬化ゲル / シリコーン / 光架橋剤 / 積層造形 / 金型 / ディスペンサ / マネキン |
Research Abstract |
昨年度の研究結果から,紫外線硬化ゲル(UVゲル)を用いて窪みのあるパレットを作製し,その窪みに着色したUVゲルを滴下した後,パレットを積層することになった.本年度は,パレットの作成に関する研究,UVゲルに着色する方法の研究,着色したUVゲルをパレットの窪みに滴下する研究を行った. パレットの作成では,0.33mmピッチで幅0.106mm,深さ0.26mmの窪みのある金型を作製した.この金型を使用して,厚さ0.33mmで5mm四方のパレットを作製した.UVゲルを金型に流し込み,紫外線光を照射してUVゲルを硬化させた後,これを金型から取り外す.しかしUVゲルと金型が強く固着しているため,離型が難しいという問題が発生した.アセトン溶液の中で超音波振動を加えることにより離型させることにしたが,現状では非常に歩留まりが悪い. UVゲルに着色する方法の研究では,紫外線光に強い顔料を選定した後,UVゲルに着色する着色剤を作製した.顔料と色むらを防止する分散剤を混ぜた,シアン,マゼンダ,イエロー,白,黒の原色着色剤を作製した.疑似人体組織の着色には,Visible Human Projectの画像データを用いる.この画像データは0.33mmピッチであるため,各ピクセルの色を着色剤で再現する.前述の原色着色剤を混合して,目的の色を持つ着色剤を作製した.作製した着色剤が紫外線光に対して耐光性があるかを調べた結果,問題ないことが分かった. 着色したUVゲルをパレットの窪みに滴下するには,窪みの体積である15.1ナノリットルを正確に滴下する必要がある.UVゲルの粘度を測定した結果,90~100mPa・sであることが判明したため,ディスペンサを用いて滴下することにした.パレットの窪みとディスペンサの先端の位置合わせは目視による手動で行い滴下実験を行ったところ,窪みの中に滴下できることが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に行ったパレットの作成に関する研究,UVゲルに着色する方法の研究,着色したUVゲルをパレットの窪みに滴下する方法の研究では,様々な実験を繰り返し,おおむね予定通りに研究が進んでいる. パレットの作成に関する研究では,歩留まりが悪いものの,微小な窪みを持つパレットを作製することができた.離型の難しさは予想していた通りで,パレットと金型との間に空気を入れて強制的に離形させるための空気穴は既に金型の設計段階から取り付けられている.本年度は空気穴に空気を注入する実験ができなかったため,次年度に実施する予定である.さらに離型剤を塗布することでパレットと金型との摩擦を減らすことができるため,現状よりもパレットを作製する歩留まりは向上すると考えられる. UVゲルに着色する方法の研究では,シアン(C),マゼンダ(M),イエロー(Y),白(W),黒(K)の5色の着色剤を最初に作製した.これらは紫外線光に強い顔料を使用することで,60分の紫外線照射でも脱色などの問題は発生しなかった.さらに分散剤を混入することにより色むらが起こりにくいことも確認した.これらの原色から様々な色を作製するため,RGBに対応するCMYKの割り合いを求め,Visible Human Projectの画像データで使用されている色を7色作ることができた.またJIS8723で規定されている方法で色の一致を確認した. 着色したUVゲルをパレットの窪みに滴下する方法の研究では,インクジェット方式とディスペンサ方式を検討した.インクジェットは水溶性で粘度が10mPa・s以下でなけれが射出することができないため,組成や粘度に見合ったディスペンサを選定した.購入したディスペンサを使用して微小粒子を作製することに成功し,窪みの中に着色剤を滴下できることが確認できた.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度ではパレットの作成に関する研究,パレットの積層に関する研究,そして製作した疑似人体組織の評価を行う. パレットの作成に関する研究では,パレットの離型をより向上させるための方法について,パレットと金型との間にコンプレッサからの圧縮空気を注入して強制的に離形させる方法と,金型に離型剤をあらかじめ塗布する方法などを試す予定である.また,着色剤をパレットの窪みに効率よく滴下するための実験装置を製作する.パレットを乗せるテーブルの駆動を自動化して,プログラムにより所定の窪み位置にディスペンサのノズルを移動できるようにする.さらにディスペンサのノズルの上下方向の駆動も電動化して,プログラムで動作させることにより,より効率的に窪みに滴下できるようにする.さらに紫外線光による硬化を効率よく進めるために,酸素を含まない窒素環境下で紫外線を照射できる実験装置を製作する. パレットの積層に関する研究では,パレットの窪みに着色したUVゲルを滴下した後に紫外線光で硬化させた1層分のパレットを正確に積み上げていく方法を確立する.UVゲルで作られたパレットは積み上げただけでは接着しないので接着剤を使用する.シリコーンでできたUVゲルは容易には接着できないので,様々な接着材を実験して最適な接着剤を見出す.さらにパレットの表面あるいは裏面に接着剤を薄く塗布する方法も確立する. 製作した疑似人体組織の評価では,色と硬さの評価を行う.色の評価では疑似人体組織の表面側(皮膚側)から見た色と,疑似人体組織を切断して断面に現れる色の2種類を対象として,色の評価を行う.評価方法はVisible Human Projectの画像データの色との比較である.硬さの評価は硬度計を用いて,その硬さを測定する.このとき疑似人体組織は5mm四方を小さいため,サンプルが小さくても測定できる方法について検討する必要がある.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に製作する実験装置は,着色剤をパレットの窪みに効率よく滴下するための実験装置と,紫外線光によるUVゲルの硬化を効率よく進めるために酸素を含まない窒素環境下で紫外線を照射できる実験装置,着色したパレットの積層装置である. 着色剤をパレットの窪みに効率よく滴下するための実験装置は,パレットを乗せるテーブルをモータで駆動して水平方向(x-y方向)の位置決めを自動化する.さらにディスペンサのノズルの上下方向もモータ駆動として自動運転を可能とする.これにより効率的に着色したUVゲルを窪みに滴下できるようにする. 窒素環境下で紫外線を照射できる実験装置は,酸素濃度計を備えた密閉空間を作り,その空間の空気を窒素ガスと交換できる機能を備える.密閉空間にUVライトなどを配置して,酸素がない状態でUVゲルを硬化させる. 着色したパレットの積層装置は,表面あるいは裏面に接着剤を塗布したパレットを一つひとつ正確に積み上げ,上から荷重を加えることにより積層造形を完成させる装置である.現在のパレットは厚さ0.33mm で5mm四方という薄くて小さいものであるが,これを固定して接着剤を薄く塗布する機能と,これをピックアンドプレースして所定の位置に積み上げる機能が必要となる. この他に研究費は,パレットと金型との間にコンプレッサからの圧縮空気を注入して強制的に離形させる実験のための配管器具,金型に塗布する離型剤,パレットを積層して接着するための接着剤,さらにはUVゲルを作製するための様々な薬品類や顔料などを購入する費用として,さらには学会発表などの旅費として使用する予定である.
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Research Products
(6 results)