2011 Fiscal Year Research-status Report
ラット実験モデルによる拘縮時の組織変化に対する神経系の関与についての検討
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23500581
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
細 正博 金沢大学, 保健学系, 教授 (20219182)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 拘縮 / 末梢神経切断 / 創外固定 / 関節構成体 |
Research Abstract |
【対象と方法】対象は9週齢のWistar系雄性ラットを使用した。ラットを無作為に大腿神経切断群(n=6)、大腿神経切断+固定群(n=6)、対照群(n=6)の3群に分けた。大腿神経の切断は大腿前部より切開し、大腿神経を切断した。大腿神経切断+固定群においては神経切断後にキルシュナー鋼線と長ねじによる創外固定を用いて膝関節屈曲120°で固定した。実験群は全てラットの右後肢に施行した。飼育期間および実験期間は2週間とした。実験期間終了後、膝関節を矢状断にて切り出し、ヘマキシリン・エオジン染色を行い、光学顕微鏡下で膝関節の関節構成体を病理組織学的に観察した。なお、本実験は金沢大学動物実験委員会の承認を受けて行われたものである。【結果】大腿神経切断群では、関節軟骨はコントロール群と同様の硝子軟骨からなり、変性像や不整は見られなかった。大腿神経切断+固定群においてもこれらの所見と差異はなく、コントロール群と同様であった。【考察】先行研究において、大腿神経切断モデルの関節構成体を観察したところ、その変化は極めて軽微にとどまり関節固定モデルでの関節構成体の変化とは大きく異なっていた。そこで本研究では、大腿神経の切断に膝関節固定を施行し、受動運動が関与しないモデルを作成した。大腿神経切断に膝関節固定を施行し、後肢に加わる受動的な運動を抑制しても、大腿神経切断群や対照群と類似した結果となり、先行研究における関節固定モデルで観察された関節軟骨の変性や滑膜組織の肉芽様の増生、癒着などの変化はほとんどみられなかった。つまり、大腿神経の切断によってこれらの変化が大きく抑制された可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット抹消神経切断モデルと創外固定拘縮モデルを組み合わせることで、関節拘縮時に発生する関節構成体の進行性の変化、具体的には関節軟骨表面に形成される膜状組織、滑膜の増生と軟骨の置換、癒着、関節腔の狭小化などの変化が、大腿神経を切断することで大幅に抑制されることが示され、関節拘縮における関節構成体の病態に、神経系の要素が関与している可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、関節構成体だけでなく軟部組織、とりわけ坐骨神経周囲の変化について検討する。ラット創外固定拘縮モデルを用いた検討により、拘縮時の坐骨神経束は神経周膜最内層と密着すること、同心円状構造をした神経周膜同士も密着し肥厚することを報告してきたが、これが大腿神経切断による影響を受けるどうかを検討する。また、この神経束と神経周膜の密着が「接着」であるかどうかを、免疫染色を用いて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年に引き続きラットを用いた動物実験を行う。また、拘縮時の坐骨神経周囲に発生する密着について、NCAM、カドヘリン、インテグリン、ラミニン、フィブロネクチン等の免疫染色を行うことで、それが「接着」であるのかどうかを検討する。また、学会発表を行う。
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