2012 Fiscal Year Research-status Report
不動に伴う慢性痛の発生メカニズムを末梢組織の変化から探る
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23500587
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中野 治郎 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (20380834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 淳哉 長崎大学, 大学病院, 理学療法士 (20584080)
沖田 実 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50244091)
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Keywords | 慢性痛 / 不動 / 痛み関連行動 / NGF / TRPV1 / P2X3 / 感作 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ラット足関節の不動モデルを用い、痛みの発生・持続時期と脊髄組織の変化に加え、これまで注目されていなかった皮膚、骨格筋、関節といった末梢組織の変化を組織学的・免疫組織化学的・生化学的手法を用いて検討し、不活動が原因で発生する痛みの病態解明の一部を明らかにすることである。平成24年度は,研究計画に従い,不動に伴う痛み発生のメカニズムを末梢組織の変化から明らかにすることを目的に実験を行った. 研究計画に従い実験を行った結果,ラット足関節不動モデル(不動群)ではvon Frey filament(VFF)刺激に対する逃避反応の出現回数は不動1~2週目から,無処置のラット(対照群)に比べ有意に増加した.また熱刺激に対する痛み反応の指標として両側足底部の熱痛覚閾値温度を測定した結果,不動群の熱痛覚閾値温度は不動1週目から対照群に比べ有意に低下した.これらの変化は,不動4週目までの不動期間に準拠して顕著になった.一方,非不動側においては両群とも変化は認められなかった. 実験期間終了後,足底中央部の皮膚組織の解析として末梢神経線維,侵害受容器であるTRPV1,P2X3,神経成長因子(NGF)に対する免疫組織化学的染色を行った.半定量解析の結果,不動群の表皮厚は対照群より有意に低値を示し,また,真皮上層に分布する有髄A線維, 無髄C線維ともに不動群が有意に高値を示した.また,表皮におけるTRPV1,P2X3 ,NGFの発現量はいずれも不動1週目から対照群に比べ有意に増加し,不動期間に準拠して増加し続けた.これらの結果から,不動が原因で発生する痛みの発生メカニズムには,昨年度に明らかにした一次感覚神経および脊髄後角の可塑的変化に加え,表皮の菲薄化,末梢神経密度の上昇,表皮ケラチノサイトの痛み受容器の増加,NGFの増加が深く関与していると思われた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した実験・解析内容はすべて行うことができ,その結果は我々の仮説を指示する結果であった.ゆえに今後の展開も計画通りに進めるとし,研究は順調に進展していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い,研究を進めていく.25年度に予定している課題は「不動解除後における痛覚閾値の回復状況に関する検討」であり.必要とされる技術的には24年度と大きな違いはなく,研究の推進はスムーズにいくものと予想できる. また,研究を進める上で他の要因が浮上した場合は,その必要性を十分に考慮した上で,解析を追加していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は,25年度に計画している実験に必要な薬品・材料(ラット)等に適切に使用する.凍結切片試料を作成するためのクリオスタット機器が故障したためその修理費が必要となるが,見積もりの結果13万円の予定であり,薬品等は計画通りのものを購入できると思われる.ただし,予定以外の消耗品,薬品が実験遂行上必要となった場合は,他の薬品との調整を適宜行った上で購入し,実験が停滞しないように努める.
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Research Products
(10 results)