2011 Fiscal Year Research-status Report
片麻痺と運動失調症の三次元書字運動解析-習熟運動と巧緻運動
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23500615
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
岡島 康友 杏林大学, 医学部, 教授 (50160669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 秀寿 杏林大学, 医学部, 准教授 (50206835)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 書字 / 三次元運動解析 / 巧緻性 / 運動学習 / 利き手 / 非利き手 / 片麻痺 / 運動失調症 |
Research Abstract |
リハビリテーションでは軽症の片麻痺、運動失調症、固縮・振戦などの機能障害に際して、障害のある手指の運動の評価、巧緻運動の練習が行われる。しかし、巧緻運動の中でも書字については体系化された評価基準や練習法はない。書字は意図した字をほとんど意識することなく実行できる習熟運動であり、左右の手の書字運動の違いや種々の条件・病態のもとでの書字運動の変化を比較解析することによって、習熟運動の特徴は何か、片麻痺や運動失調症は習熟運動にどう影響するか、また病態ごとで巧緻運動の練習はどうすべきかといった課題に答えることができるようになると考えられる。本研究はペン先の運動だけでなく、書字中のペン先と上肢の多評点の三次元運動解析によって、手の遠位部と近位部の運動の連動性や円滑性といった指標を定量化して、利き手と非利き手の違い、錐体路障害、運動失調症などの病態での変化を検証し、習熟運動の本態を解明し、リハビリテーションに役立てようとするものである。平成23~25年の3年計画の研究であり、平成23年度は3次元書字運動解析システムを構築し、まずシステムの精度、信頼性を確認した。その上で健常者の利き手、非利き手の書字中のペン先と手部遠位と近位部の3評点の三次元座標を同時に記録し、書字運動の習熟性を表す指標をオフラインで検討した。指標は形体面と運動面の両面で検討し、運動面は書字速度に依存しない指標に探索した。すなわち、速く書いてもゆっくり書いても同様な値となる指標を見出し、習熟性を普遍的に表すことに重点をおいた。また、健常者数名に1ヶ月以上にわたって毎日、非利き手での書字練習をさせ各指標の変化を観察することによって、習熟性の指標としての妥当性を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
POLHEMUS 社製の高精度、高速サンプリングが可能な三次元動作解析システムLiberty を基本とした書字運動解析システムを構築した。健常者数名を対象に3種類の大きさの平仮名"あ"を利き手、非利き手で各サイズ10回書かせ、書字中のペン先と示指基部と手基部の3評点の三次元座標を同時に記録しoff-lineで解析した。Cybernet社製の汎用数値解析ソフトウェアMatlabを用いて、形体では書字軌跡の幾何学中心からの距離のグラフ、運動ではペン先と手近位部の運動半径の比、各評点の運動軌跡上の各点での速度のグラフと2評点のベクトルが成す角度のグラフが利き手、非利き手の違いを反映する指標として妥当なことを検証した。また、健常者の中で非利き手での書字練習を6週間行った結果、一部で非利き手書字の利き手化の徴候を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
健常者の利き手、非利き手書字に関する実験終了後は患者を対象とした実験を開始する。当初の計画通り、対象は利き手の不全片麻痺者、感覚性あるいは小脳性運動失調患者である。対照群は片麻痺では健側の書字、他の障害では同年代健常者の書字であり、平成23年度の予備実験で検証した指標を用いて、ペン先軌跡形体の均一性、運動中のペン先、手部遠位・近位の3評点の運動の関連性の視点で解析する。仮説として錐体路障害で生じる巧緻性の低下は単なる運動ノイズの増大によるものであって、習熟した書字運動プログラムそのものは保たれるが、運動失調症では習熟特性は失われると考えている。本仮説が正しければ、障害があっても判読可能なレベルの書字が可能であれば、利き手交換練習よりも麻痺手での書字練習を続けるべきという主張も成り立つと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は平成23年度に構築した解析システムによってデータ収集を行うことが主であって、研究費は当初の計画通り、国内学会旅費、ソフトエェア作成や事務アルバイト、資料収集などに費やす予定である。
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Research Products
(4 results)