2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23500617
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
大木 紫 杏林大学, 医学部, 教授 (40223755)
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Keywords | 錐体路 / 脊髄固有ニューロン / 頸髄症 / 巧緻運動 |
Research Abstract |
最終年度は、これまでの成果を論文にまとめるとともに、以下の2つの実験を行った。 第一に、我々は前年度までに、正常被験者で頸髄介在ニューロンを介した間接的大脳皮質-運動ニューロン(C-M)経路の伝達効率を高める方法(連続的組み合わせ刺激:RCS)を確立した。最終年度は、この効率変化が実際に運動を改善するか、検討を行った。用いたのは手の10秒テストで、10秒間に手を握る/開くをなるべく速く繰り返し、その回数を数える。我々は前年度までに、10秒テストは直接経路が主に関与する手の巧緻運動機能(JOAスコア)と相関するばかりでなく、間接経路を介した運動機能(腕の到達運動評価)とも適度な相関を示すことを明らかにした(論文投稿中)。そこで、健常被験者と1名の頸髄症患者で、間接経路の効率をRCS法で高める前後に、10秒テストを実施した。その結果、頸髄症患者ばかりでなく健常者でも、効率上昇中には10秒テストの結果が改善することが観察された。現在は、間接的運動経路の効率を上昇させる手法のより簡便化と効果の長期化に取り組み、臨床現場での応用を目指している。 第二に、頸髄症患者と健常者で、手の巧緻運動機能を客観的に評価するための手法を開発し、それを用いて患者での記録を行った。このためには、実験的に巧緻運動機能評価として用いられる精密把持を用い、到達-把持運動を定量的に評価した。現在のところ、頸髄症患者12名とage-matchさせた健常被験者19名で記録を行った。その結果、頸髄症患者で有意に変化しているのは、①表面の素材に合わせた自動的な把持力の調整と②物体到達前に見られる運動準備のタイミングと強さ、であった。この結果は、巧緻運動障害には運動経路のみではなく、感覚障害の影響もあることを示した。現在はこの方法で、術前術後の巧緻運動障害を定量的に評価できるか検討中である。
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