2012 Fiscal Year Research-status Report
人工内耳を早期装用した乳幼児における母子関係の発達と言語獲得
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23500621
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
北野 庸子 東海大学, 健康科学部, 教授 (50276862)
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Keywords | 難聴乳幼児 / 新生児聴覚スクリーニング / 遺伝診断 / 人工内耳 / 母子関係 / 前言語発達 / 難聴児の聴覚言語獲得 / 難聴児の子育て |
Research Abstract |
本研究の背景としては、近年、新生児聴覚スクリーニングの導入、人工内耳手術の乳幼児への適応、難聴の遺伝子診断、補聴器の性能の向上など、難聴医学や医療工学の進歩発展が聴覚障害をもつ乳幼児の療育環境を著しく変化させ、早期から良好な聴覚補償が可能となってきたという現実がある。このような状況の中で、難聴を早期に発見でき、人工内耳の早期装用が可能となった乳幼児とその親(多くは聞える親)は、良好な母子関係を形成することができるという仮説がたてられる。本研究の目的は、上記のような早期介入が可能となった難聴乳幼児の母子関係を以下の点で評価し、その意義を明らかにすることである。1)早期介入を受けなかった聞こえにくい乳幼児と聞える親との母子関係(先行研究の基づくデータ)と比較し、共通する点、異なる点を明らかにする。2)聞える子どもと聞える親との母子関係と比較し、共通する点、異なる点を見る。さらに3)早期介入を経験した難聴乳幼児の言語獲得過程を明らかにすること。以上の観点から、難聴乳幼児に対する早期介入の意義を明らかにすることが本研究の目的である。2012年度の仕事は以下のような活動を行った。 ①データ収集の継続:人工内耳装用児並びに聞える乳幼児の母子関係活動のデータ収集を継続して行った。②母子関係分析のための具体的な指標の割り出し:母子関係を分析するためには次の3つを主領域とし具体的項目をあげた。a) 聴覚―発声ループ(音への気づき、音の弁別、声による同定、言葉の理解等)b) 物の操作(さわる、もつ、なめる、いれる、積む、並べる等)c) 人の操作(笑い、3項的視線、指さし、模倣等) 上記の項目を「行動コーディング解析ソフト」に入れ母子活動の動画の分析を始める準備をした。本研究により、早期介入が母子関係、前言語発達、さらに言語発達を促進することが証明できるのであれば、難聴療育における意義は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」を選択した理由は、2012年度の後半には、母子関係活動の動画分析に入る予定であったが、実際は分析をするための項目を選び出し、それらの項目を「行動コーディング解析ソフト」に入れることはできたが、分析作業までには至らなかった。また研究代表者が2012年度末に体調を崩したことも想定外ではあったが、リカバリーは可能で、あと残された期間で本研究を完成することは可能であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度の仕事は次のような手順で進められる予定である。 1)母子関係活動のデータ収集はほとんど終わっているので、行動コーディング解析ソフトを使って分析作業をする。統計的処理が使えれば使う。 上記の結果に関しては、研究協力者との検討会を行い、それぞれの立場から意見交換を行う。 2)先行研究の整理。 3)論文研究としてまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度へ約50万円程度繰越を予定しており、2013年度請求金額の10万円と合わせて、データ整理用消耗品及び研究協力者への人件費または謝金。情報交換を行うための海外旅費、学会参加費等に充当する予定である。
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