2012 Fiscal Year Research-status Report
神経機能を加味した誤嚥ラットモデル作成と感覚刺激に対する嚥下評価法の検討
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23500640
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
狩野 充浩 東北大学, 歯学研究科(研究院), 大学院非常勤講師 (10419236)
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Keywords | 嚥下 / 神経機能 / 感覚刺激 |
Research Abstract |
嚥下機能は重要な機能の1つである。現在、高齢者の誤嚥性肺炎が問題視されており、誤嚥性肺炎の患者の肺から口腔内細菌が検出されるなど歯科においても重要度の高い問題である。 本研究では、嚥下反射の評価法の確立と嚥下に対する病的変化(加齢)と味覚、嗅覚などの各種感覚刺激の嚥下反射改善効果を体系的に評価するために、誤嚥ラットモデルを作成し、咽頭喉頭領域の知覚や運動に関わる舌咽、迷走神経の入力や出力に関わる神経節や嚥下の制御に関わる脳幹の神経核、更には大脳の変化について明らかにすることを目的としている。 今年度は、咽頭各部の粘膜における感覚神経の分布や由来について調べた。実験には正常ラット5匹を用いて、麻酔後、Zamboni固定液で潅流し、鼻腔、口腔、咽頭、喉頭及び上位の食道,気管を一塊に取り出し、凍結切片作製、免疫染色を行った。 その結果、カプサイシンレセプターであるVR1、TRPV1、を含む神経線維が咽頭粘膜に豊富に観察された。これらの神経線維は粘膜固有層に数多く認められ、それらの一部は上皮内に侵入していた。TRPV1を含む神経線維は咽頭鼻部や喉頭蓋の喉頭側粘膜で最も多く観察された。52℃以上の高温度に対するセンサーであるVRL-1, TRPV2は上皮内や固有層の樹状細胞に認められたが、TRPV2を含む神経線維の分布は不明であった。咽頭鼻部と喉頭部の境界部や軟口蓋にトレーサーを注入した結果、迷走神経上神経節や舌咽神経節、さらに迷走神経下神経節の吻側部における感覚ニューロンがTRPV1やTRPV2を含む神経線維の由来であることが明らかとなった。 更に、神経伝達物質の輸送を阻害すると考えられるコルヒチンを迷走神経及び上喉頭神経に注入したが明らかな嚥下障害は見られなかった。 今後、神経筋疾患モデルマウスにおける咽頭や喉頭における筋の萎縮について観察し、それらの嚥下機能について検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで正常ラットの咽頭粘膜における感覚神経の分布や由来について明らかにしてきた。免疫染色によりカプサイシンレセプターであるvanilloid receptor subtype 1 (VR1, TRPV1)、52℃以上の高温度に対するセンサーであるvanilloid receptor subtype 1-like receptor (VRL-1, TRPV2)を含む感覚神経や樹状細胞の分布を咽頭粘膜で調べた結果、今年度までの研究で咽頭と喉頭及び口腔との境界に、TRPV1を含む神経線維が豊富であるという結果が得られた。またTRPV1およびTRPV2を含む神経線維の由来を、逆行性軸索輸送による実験により明らかにした。咽頭粘膜に注入したトレーサーは舌咽神経節及び迷走神経上神経節の小型から中型の感覚ニューロンに認められた。しかしながら迷走神経下神経節ではまれであった。これらのニューロンを含む切片に間接蛍光抗体法を用いて免疫染色を行うと、多くの咽頭粘膜を支配しているニューロンにTRPV1やTRPV2の反応が観察された。以上の結果から、咽頭粘膜におけるTRPV1やTRPV2を含む神経線維は、舌咽神経節及び迷走神経上神経節由来であると考えられた。嚥下障害の原因の一つとして、老化及びさまざまな疾患による感覚神経の変性などが考えられる。本研究の過程で観察されたTRPV1及びTRPV2を含むニューロンと誤嚥との関係については、さらなる検討が必要とされる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度、神経筋疾患モデルマウスにおける嚥下機能について検討する。神経筋疾患モデルマウスの咽頭各部の筋肉における筋萎縮の程度を調べ、感覚神経や運動神経の変化について調べる予定である。動物を麻酔後、Zamboni固定液で潅流し、鼻腔、口腔、咽頭、喉頭及び上位の食道,気管を一塊に取り出し、凍結切片作製後、免疫染色を行う。カプサイシンレセプターであるvanilloid receptor subtype 1 (VR1, TRPV1)、52℃以上の高温度に対するセンサーであるvanilloid receptor subtype 1-like receptor (VRL-1, TRPV2)、酸のセンサーであるASIC3などを含む神経の分布を咽頭で調べる。 これらの結果を検討し、神経筋疾患モデルマウスを誤嚥モデル動物としての利用の可能性について追及する予定である。また、正常ラットを用い、神経変性を惹起させるような手法についても検討中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においては、下記のような分類に分けて使用する予定である。 1 誤嚥モデルラットを製作するための正常ラットの購入費用 2 凍結切片を製作するためのスライドガラスやカバーガラス等の購入費用 3 神経筋疾患モデルマウスを免疫染色するため、vanilloid receptor subtype 1 (VR1, TRPV1)、vanilloid receptor subtype 1-like receptor (VRL-1, TRPV2)、ASIC3等の各種抗体の購入費用 4 本研究を学会等にて発表するための旅費
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Research Products
(1 results)