2011 Fiscal Year Research-status Report
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23500661
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
高尾 秀伸 神奈川工科大学, 創造工学部, 准教授 (60329307)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 拡張現実 / ユーザインタフェース / 視覚障害 / 人間中心設計 / 人間工学 |
Research Abstract |
障害者自立支援法およびバリアフリー新法の施行により、視覚障害者による外出機会の増加が期待されている。しかし、従来の点字表示や触地図のみでは空間認知が不十分で道に迷いやすいと考えられる。また、最近では音声言語による案内機能を備えているものがあるが、言葉を記憶しておくことと距離や方角での指示を実空間と照合することにおいて認知負担が大きく、特に初心者は慣れるまでに訓練が必要と考えられる。そこで、記憶や空間認知においてより低負担な呈示方法が必要となる。この点において、H19~20年度・科研費・若手(B)研究にて、ユーザの目前に仮想のガイド音を立体音像として提示し続け、これを頼りに歩行することにより、他人の手を借りることなく、認知負担が低く、初心者でも効率的に目的地まで案内を行うユーザインタフェース(UI)を備えたシステムの開発に成功し、高いユーザビリティ効果を実証することができた。当該システムを実用化するためには様々な点について検討を重ねる必要があるが、特に、頻繁に行う生活行動に焦点を当てることで、実用性の高い機能を提供できると考えられる。この点について、視覚障害者を対象とした日常生活の不便さ調査によると、スーパーマーケットやショッピングモールなどの商業施設において視覚障害者が購買行動を行う際、「売り場の位置が分からない」、「商品の位置がわからない」といった問題に直面していることが指摘されている。そこで、「買い物」という日常的な生活行動を対象として、商業施設において視覚障害者を的確かつ快適に目的の売り場および商品へと誘導するナビゲーションインタフェースの開発を行う。開発においては、ISO13407人間中心設計の開発プロセスに準拠することで、機能性だけでなく視覚障害者の認知行動特性を実験的に踏まえたユーザビリティを備えたシステムを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今期は企画および概念設計フェーズと位置づけられている。研究【1】フィールド調査によって視覚障害者が商業施設の売り場を移動する際の問題点および、空間認知の特徴をまとめ、「問題シナリオ」を作成することができた。これをユーザ要求事項とし、要求仕様および制約条件を明確化した。具体的には、研究【2】にて現在開発進行中の立体音響メニューを発展させることで、コンセプト1における行き先設定および、コンセプト2の実現のための基礎的な人間特性(例えば、メニュー項目の空間的間隔を規定するために必要な、他人の頭部伝達関数を用いて立体音声呈示した場合の人間の方向定位精度等)の一部を得ることができた。並行して、研究【3】では現在進行中の立体聴覚における定位精度に関する研究を発展させることで、コンセプト1を実現させるために必要となる諸認知特性について基礎的検討を行い,有益な知見が得られた。これらに先行研究、各種人間特性データベース等の知見を併せて検討し、「活動シナリオ」を作成した。これにより、提案機能の妥当性を当事者に確認した。評価の結果、妥当性が確認された。以上のとおり,当初の計画どおりに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は設計値導出および詳細設計フェーズと位置づける。活動シナリオで定義した要求仕様について、具体的な設計値を得るため研究【4】設計値導出実験を行う。その際、ラピッドプロトタイピング手法によるシミュレーション実験を行い、仕様が満足されるまで、反復的に検討を行う。これにより、情報シナリオおよびインタラクションシナリオを定義し、具体的な対話インタフェースの設計を行う。そして、実装に向けた詳細設計を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
約4万円の残額発生は、導入した3次元音響プロセッサの実費が計画当初の見積もり額からさらに値引きさせることができたことに起因する。なお、次年度は提案システムのプロトタイピングおよび実験・解析に必要な拡張現実空間生成環境の整備が必須である。これらを構成する計算機環境は高性能なほど効率化が進むため、当該残額は購入する計算機等のスペック向上に使用することとしたい。その他については当初計画通り、実験環境構築、実験実施ならびに被験者謝金等に充てる予定である。
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