2011 Fiscal Year Research-status Report
大学生における運動習慣の形成が自律神経機能とメンタルヘルスへ及ぼす効果
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23500682
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水野 眞佐夫 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10435943)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 運動習慣 / メンタルヘルス / 自律神経機能 |
Research Abstract |
国家的課題である運動習慣の形成による心身の健康の保持・増進は、全ての生活領域に抱合され累年的規定性を有しているため、大学教育において運動の習慣化を実現できる力量形成を意図した教育実践が急務である。本研究は、大学生における運動習慣の形成が自律神経機能を介してメンタルヘルスへ及ぼす効果を解明して、教育プログラムの改善へ寄与することを目的としている。平成23年度における研究の成果として、1)、大学新入生の入学以前1年間の運動習慣の有無(質問法)と前期開始時と終了時における安静時の総自律神経活動量、交感神経・副交感神経バランスとメンタルヘルスとの関連を評価した。その結果、運動習慣群は、非運動習慣群と比較して、自律神経(副交感神経)活動の抑制を軽減させてメンタルヘルスを良好に保っていることが明らかとなった。2)入学前非運動習慣群における前期4か月間の歩数高値群(1日当たり平均10000歩)は、歩数低値群(平均4000歩)と比較して、安静時の副交感神経活動の低下が抑えられた一方で、両群ともメンタルヘルスへの効果は認められなっかた。3)入学前における運動習慣群は、学業成績が優良でメンタルヘルスの良好項目が高かったのに対して、非運動習慣群は学業成績の不振学生が多く、安静時の交感神経活動の緊張が認められてメンタルヘルス不良項目の多いいことが明らかとなった。4)精神的ストレス(内田クレペリン精神検査)受容後の自律神経活動と気分変化について、3拍子と4拍子のそれぞれで構成された音楽の聴取が与える効果を評価した結果、3拍子の音楽聴取が副交感神経活動とリラックス感を促進する効果があることを明らかにした。本研究の成果により、大学新入生の入学前における運動習慣の形成は、入学後のメンタルヘルスと学業成績を良好に保つ要因であり、自律神経機能が重要な役割を果たしていることがが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載された平成23年度に実施する研究内容については、全て遂行されてデータ収集・分析が完了しており、論文化が進行している。また、積雪寒冷期の身体活動量の変動の影響を明らかにするために、10月から翌年3月末までの身体活動量モニター(ライフコーダー)、及び、自律神経活動の測定とメンタルヘルス調査を実施して、データ収集が完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では、積雪寒冷期の身体活動量の変動の影響を明らかにするために前年度後半(10月から翌年3月末まで)に実施した身体活動量モニター(ライフコーダー)、及び、自律神経活動の測定とメンタルヘルス調査において収集したデータの解析を行う。また、運動習慣の形成が身体的・精神的ストレッサーに対する抵抗力と回復力へ及ぼす効果を解明するために、ランプ負荷自転車運動(身体的ストレッサー)、及び、単純計算作業(心理的ストレッサー)に対する抵抗力と回復力を自律神経機能の測定と唾液アミラーゼ活性度を用いて評価する実験的研究を実施する。最終年度(平成25年度)では、平成24年度に終了した長期(1年間)にわたる身体活動量の測定結果をベースにして、運動習慣の形成度と自律神経機能、及びメンタルヘルスとの関連の詳細な分析を行うことにより、心の健康の保持・増進にとって適切だと推定される運動頻度・強度・時間を含む運動習慣の内容と水準について解析を実施する。また、運動の習慣化のレベルの相違が身体的・精神的ストレッサーに対する抵抗力と回復力、並びに、積雪寒冷期におけるメンタルヘルスの応答へ与える影響を明らかにする。これらの研究成果を踏まえて、メンタルヘルスの保持・増進を意図した大学教育プログラムの改善に貢献するとともに、研究の問題点と今後の課題を明らかにして次期研究プロジェクトの企画に発展させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に生じた未使用額(33万4千322円)について、この発生は短期研究支援員として採用予定であった大学院生が健康上の理由で不採用となったことによる。平成23年度未使用額は、収集が完了しているデータに関する解析を目的として平成24年度に短期研究支援員の採用を予定している。
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Research Products
(6 results)