2011 Fiscal Year Research-status Report
現象学的運動学の可能性-身体教育としての運動指導を目指して-
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23500684
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
瀧澤 文雄 千葉大学, 教育学部, 教授 (50114294)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 運動指導論 / 身体運動原論 / 身体教育 / 運動学 / 現象学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、新たな運動学の領域として現象学的運動学を提示することである。それは、単に運動ができるようにするだけでなく、運動のできる身体が育て、それによって児童・生徒の生活を豊かにするために活用できる運動学である。 初年度は、人間の身体運動が持つ独自性とは何かについて主に考察した。特に人間学の立場に立った文献を研究することによって、人間の運動が持っている独自性を探った。また、運動を実践するとはどういうことか、実践の中で人とやり取りできるとはどういうことか、運動の意図と実践との関係は何か、という問について、現象学的観点から検討を加えた。これにより、身体教育としての運動学の可能性、すなわち、これまで筆者が行ってきた賢い[からだ]の教育と連動した運動学の可能性について考察した。 当初の研究計画においては、本年度は国際スポーツ哲学会(H.23.米国開催)において「人間の身体運動の独自性」として研究発表する予定であったが、本務と学会が重なり、発表することができなかった。よって、H.24年度に計画していたドイツでの研究を本年度実施した。運動主体の観点と現象学的観点を不明確ながらも取り入れているマイネル運動学について、特にドイツにおける研究動向を調査研究し、その限界と可能性を探るために、ドイツライプチヒ大学図書館を中心に資料の収集を行った。同時に、マイネル教授の教え子であるDr. Christian Hartmann教授から講義を受け、さらに体育哲学関連のDr. Arno Muellerおよび Dr. Emanuel Isidori)に面談した。その際、バイオメカニクス等の運動学および運動指導論の比較・検討も行った。 以上の内容を、第33回日本体育・スポーツ哲学会(H.23年・長崎開催)において「現象学的運動学の必要性」として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画では、人間学から見た身体運動を考察し、人間の運動の特質を抽出する予定であったが、公務のスケジュールでその計画を変更せざるを得ず、マイネル運動学関連の考察を優先した。これについては、人間の身体運動についての文献研究もおおむね順調に進んでおり、昨年度長崎で開催された日本体育・スポーツ哲学会において「現象学的運動学の可能性」というテーマで発表し、意見交換を行った。 さらに、日本においては情報が不確かな、ドイツにおけるマイネル運動学の研究動向について、K.マイネルが教鞭を執ったドイツ・ライプチヒ大学(および図書館)を訪問・滞在し、多くの情報を得ることができた。その際、関連教授と面談し、運動学全般を含めた現状についての知見を得ることもできた。 以上により、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は計画の変更により、人間が行う身体運動の特質について、人間学的観点から十分な文献研究ができなかった。それを補うために、次年度においてもそれに関する文献研究を継続する。これは科学的観点とは異なった身体運動に関わる視点の確立でもある。 さらに、その視点から身体の教育を目指した運動学を確立するために、運動学についての文献研究を進める。それと同時に、身体運動を分析するための方法として、現象学関連文献を精読し、現象学的な具体的方法の提示に向けた考察を進める。この考察をもとに、方法を含めた現象学的運動学の素描をしたい。このことについては、次年度(H.24)の夏にPorto(ポルトガル)で開催される国際スポーツ哲学会において「現象学的運動学の構想」として発表し議論する予定である。その議論を踏まえ本研究をさらに進展させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めるための、人間学関連、現象学関連、運動学関連文献の購入代として、200,000円 国内の関連学会(日本体育・スポーツ哲学会および日本体育学会)参加の費用として、100,000円 国際スポーツ哲学会(ポルトガル開催)に参加・発表する費用として、350,000円 その他諸費用として、50,000円 合計700,000円の支出を計画している。
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Research Products
(2 results)