2012 Fiscal Year Research-status Report
現象学的運動学の可能性-身体教育としての運動指導を目指して-
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23500684
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
瀧澤 文雄 千葉大学, 教育学部, 教授 (50114294)
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Keywords | 身体教育 / 現象学的運動学 / 運動実践 |
Research Abstract |
本研究の目的は、身体の教育を視野に入れた新たな運動学の領域として、現象学的運動学を提示することである。その運動学によって、教員は次のことが可能になるであろう.すなわち、単に児童・生徒に運動を教えるためだけでなく、運動のできる身体を育て、その身体によって彼らの生活を豊かにする、ということである。 本年度は、主に現象学的研究方法に関わる文献の検討および考察を行った。新たな現象学的運動学を可確立するには、人間の身体運動を扱い得る方法が必要である。その方法は、意味や意図を伴っている身体運動と、その運動を可能にする身体を視野に入れなければならない。本研究テーマである身体教育を目指す運動学は、この現象学的方法を提示することが大きな課題となる。よって、この方法に焦点を絞り込み、現象学関連の文献研究を行った。加えて隣接領域の研究方法について、質的研究に関わる文献研究を行った。さらに不十分であった人間学の立場に立った文献をも同時に検討した。これらの研究から、体育学における現象学的方法を手順として明示化するために、担当している実技授業の中で、その仮説的方法が有効であるかについて検討した。 上記の研究の一端として、本年度の国際スポーツ哲学会第40回大会(H.24.ポルトガル開催)において「An Idea for a Phenomenological Theory of Human-bodily Movement(現象学的運動学の構想)」について研究発表を行った。その内容は、新たな運動学の構想を、特に現場教員が活用できる方法に焦点化して、それを手順として明示することを試みたものである。現象学的方法を分かり易い手順として運動学への取込みは困難であるが、より明確なかたちで提示するために必要な課題を見出すことができたので、学会後はその課題解決に向けて考察を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の報告にあるように、本務との兼ね合いで、1年目と2年目の年度計画を入れ替えた。昨年度は主に現象学的観点からの具体的な運動指導を背景に、マイネル運動学について、ドイツおよび日本に限定して考察した。本年度はその運動学を、哲学的人間学の文献研究をすることによって、捉え直しを行い、運動の意図と運動実践との関連、運動を可能にする身体等、新たな現象学的運動学についての構想を具体化する考察を進めた。 すなわち、人間の身体運動が持つ独自性について、人間の特質から捉え直すことによって、これまでの運動学を修正・変更し、現象学的運動学を提示するために考察を進めた。同時に現象学およびその方法を手順として明示化するために、隣接領域の質的研究方法についても検討した。その内容について、年度計画にあるように、計画通り国際スポーツ哲学会において発表し、議論することができた。さらに、研究発表によって見出された課題を解決するため、新たな考察を加えるえることができた。これによって、初年度分の計画もほぼ達成し、最終年度の目標に向けた準備ができたと言えよう。 ただし、既に2回の研究発表を行っているが、その内容を原著論文として作成するという課題が達成されていないので、早急にまとめ公表する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究の最終年度であり、これまでの考察から、体育現場で必要となる運動学とはどのようなものかについて検討し、現象学的運動学の構想とその枠組を提示することが目標となる。その際、体育学独自の方法として、現象学的運動学の方法を明示しなければならない。この現象学的方法の明示化によって、新たな現象学的運動学がより明確になるであろう。これは運動主体から見た運動の捉え直しでもあり、学習者の視点から運動を指導するための運動学でもある。 よって、意図を伴う人間の身体運動について、さらに現象学および方法論についても、欠けている文献についてさらなる研究を行う。それと同時に、その運動学について学校現場で有効であるかについても検討する予定である。なぜなら、その運動学は教員が活用しうる簡潔で明瞭な方法と内容でなければならいからである。本研究の目的を達成するための中間的な成果として、次年度(H.25)の夏にカリフォルニア(米国)で開催される国際スポーツ哲学会において「Introduction to the phenomenological theory of human-bodily movement for physical education(体育のための現象学的運動序説」というテーマで発表し、意見交換する予定である。これを踏まえて、身体の論理との関係から新たな運動学を、身体を教育するための現象学的運動学として再構築し、研究をまとめたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請した研究計画書に記載したものと大きな変更点はない。本研究の目的を達成するために、運動学、現象学、哲学的人間学関連の文献購入として15万円、次年度9月にカリフォルニアで開催される国際哲学会参加し、研究発表するための外国旅費として30万円、国内での調査旅費として10万円、そして学会参加費および研究成果報告書作成等の費用とし15万円を計画している。
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Research Products
(2 results)