2012 Fiscal Year Research-status Report
男女必修ダンスのモデル教授法開発-初心指導者に焦点化して-
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23500686
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
高橋 和子 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (10114000)
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Keywords | ダンス指導実践 / 初心男性教員 / 教材入手先 / 心身のほぐし / 子ども主体の学習 / 自由な表現世界 / 適切なアドバイス |
Research Abstract |
2012年から中学校保健体育1,2年男女のダンス必修化が実施されて1年が経った。そのような現状の中、特にダンス指導をあまり行っていない男性教員に焦点をあてて、県の研究指定中学校での授業(盛岡市・宮古市・一関市)、並びに実践をし始めて4年目の男性小学校教員を対象に、①初心指導者が選択する教材の特徴、②指導の共通点と課題、③ダンスの魅力を探り、モデル教授法の開発の一助とすることを目的とした。単元計画・指導案・授業者や支援者である指導主事などへの聞き取り調査、授業参観者へのダンス用語の理解度調査、ダンス指導状況調査を分析した。 その結果、教材入手は文科省発刊の学習指導要領解説や参考図書、国立政策教育研究所や日本学校体育連合会や日本女子体育連盟の資料や講習会等をヒントにしていること。授業スタイルは既習のリズム系ダンスで心身をほぐし、習得すべき技能が明確な教材を選択し、子ども主体のグループ学習をしていること。授業規律やマネージメントをしっかり押さえた上で、児童・生徒が何を学び、どんな技能を身に付ければ良いかの指針が提示されていること。ダンス用語への理解がなされていること。ダンス指導の現状は男性の方が女性教員に比べ、ダンス指導経験が少なく、指導を難しいと感じていること。ダンスの魅力としては、「心身の解放・人間関係が円滑・競争がなく自由に表現できる世界」を挙げていることなどが分かった。初心指導者の課題としては、ダンス技能を明確に押さえる必要があること。男女共習の授業スタイルに慣れること。適切なアドバイスができることなどがあげられた。これらを解決する指導法の工夫が必須である。 なお、これらの成果は日本のダンス指導の現状として、国連大学や神奈川県でのシンポジウムや国際女子体育連盟キューバ大会での発表を行い、25年度には、イタリアのボローニャ大学での招待講演が決まっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に計画していた一つ目の事項は、「熟練ダンス指導者の3つの指導スタイルの共通点と差異の明確化」である。これを明らかにするために、指導者2名については文科省から刊行予定のダンス実技資料により理論的裏付けができる。もう1名の指導者についてはY大学の集中授業の補助映像やシンポジウムでの聞き取り調査もできた。この結果、分析の材料がそろったと言える。 ニつ目の事項の「研究成果の収集」については、文部省学習指導要領に提示された「対極の動きの連続」の教材を、全国規模の研修会などで指導者や教員養成系の大学生に提示し体験した結果から、中学生にも援用できると考えられ、その成果を確認した。このことから「気軽に踊れる・指導できるダンス教材の選定」を終えることができた。また同時に、「初心男性教員によるダンス指導の共通性」については、3名の男性教員の指導分析ができた。さらに13名の男性教員への聞き取り調査も終了している。「初心のダンス指導者」にとって、技能や知識が指導者に定着しやすい典型教材を選定することについても、中学生に初心男性のダンス指導者3名が授業実践を行った。さらに、小中の接続の企図により、小学校教員にも表現運動の授業実践を行っていただき、指導の留意点を洗い出した。 また、諸外国の資料の収集の一つであった、ボディ・マインド・センタリング創始者ボニー・コーヘン(米国)の取材は、筑波大学で開催された国際シンポジウム「Body Workと身心統合」で本人にインタビューでき、さらに、スイスを拠点にコンタクトインプロビゼーションや即興ダンスの指導者として活躍しているアンドリアン・ルーシの講習会への参加により、有効なダンス教材の収集が行なえた。 以上の理由から、研究の目的は「おおむね順調に進行している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的の一つ目の「ダンスモデル教授法のパッケージ化」については、平成24年度で検証されたダンス教材とモデル教授法をセットにしたDVDを作成する。それを教材アドバイザー(熟練教師、指導主事、大学教員等)に評価して頂き、課題を明確にする。 研究目的の二つ目の「諸外国での研究成果の検証」については、ダンス教育が、小学校から中学校において系統だって実践されているイギリスロンドンに在中の舞踊家である南村千里先生に、作成したダンスパッケージの有効性を検証する。さらに、諸外国の資料収集としてはドイツを拠点にコンタクトインプロビゼーションや集団即興ダンスの指導者として活躍しているダニエル・ヴェルナーの取材を行うことにより、有効なダンス教材の収集を行なう。 研究のまとめについては、次の学会などでこれまでの研究で得られた成果を取りまとめて発表を行う。4月には、17th Quadrennial World Congress of IAPESGW(国際女子体育連盟キューバ大会で”A study on the Co-Education of Dance of Physical Education as the compulsory subject”の研究発表。8月には日本体育学会(立命大学)、11月にはイタリアボローニャ大学での「大野一雄アーカイブ10周年記念大会」、12月には舞踊学会(中京大学)、日本教育大学協会舞踊研究発表会(鳥取大学)において、本研究で得た知見を発表予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
モデル教授法のパッケージ化を図るためのソフト購入などの物品費。授業実践やキューバやイタリアでの国際会議や資料の検証のための旅費。授業の映像撮影やDVD作成、収集した資料の整理や分析、国際学会などの発表の翻訳を行うための謝金が必要になる。 平成24年度の残額(次年度使用額)が生じた状況は、平成25年度に国際学会が2つ予定されていることがわかり、それにかかわる費用を準備する必要があったためである。
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Research Products
(14 results)