2014 Fiscal Year Research-status Report
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23500687
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小林 日出至郎 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (10195802)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | イリアス / 運動競技 / 精神性 / 力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、『イリアス』の運動文化思想を研究し、人間の幸福に結びつく運動競技の精神性を解明することである。この目的を達成するためには、時代と地域を越える本質理解ための鍵概念;「競争」「闘争」「普遍的存在」「魂」等の再検討、これらの構造化と関係性の解明に基づく運動競技の本質把握、及び、人間の幸福に結びつく運動競技の精神性の解明が必要である。 平成23年度は、英雄たちの戦場と運動競技場面における「競争」「闘争」の状況を分析・探究し、英雄の個性および共通性を再検討し、時代と地域を超越する運動競技に関する精神性の基礎的研究を行った。研究成果は、日本体育学会第62大会(鹿屋体育大学、平成23年9月27日)において発表した。平成24年度は、平成23年度の研究成果を踏まえ、「普遍的存在」である神々と英雄の関係から「競争」「闘争」において勝利をもたらす基本的要素「力」を探究した。研究成果は、日本体育学会体育哲学領域定例研究会(明治大学、平成24年12月8日)で発表した。平成25年度は、平成24年度の研究成果を踏まえ、「力」に関する西洋古典学の先行研究を探究すると共に、戦争と運動競技において活躍した英雄ディオメデスに焦点化し、「賢明さ」を伴う「力」の重要性を明らかにした論文(「『イリアス』における競争に関する研究―戦争と運動競技における英雄ディオメデスを中心としてー」(小林日出至郎、新潟大学教育学部研究紀要、第6巻第1号)を発表した。 以上の研究成果に基づきを、平成26年度は、運動競技における精神性「賢明さ」の分析検討を進めたが、その経過において「力」の身体的機能性の解明と、精神的機能性と「力」の関係について、より厳密な分析検討が必要となった。そのため、本研究は平成27年度に延長されることになった。以上が研究実績の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的に対する平成26年度の研究の達成度は、「やや遅れている」と判断する。理由は以下の通りである。 本研究の目的は、『イリアス』の運動文化思想を研究し、人間の幸福に結びつく運動競技の精神性を解明することである。この目的を達成するためには、時代と地域を越える本質理解ための鍵概念;「競争」「闘争」「普遍的存在」「魂」等の再検討、これらの構造化と関係性の解明に基づく運動競技の本質把握、及び、人間の幸福に結びつく運動競技の精神性の解明が必要である。 平成23年度は、英雄たちの戦場と運動競技場面における「競争」「闘争」の状況を分析・探究し、英雄の個性および共通性を再検討し、時代と地域を超越する運動競技に関する精神性の基礎的研究を行った。平成24年度は、平成23年度の研究成果を踏まえ、「普遍的存在」神々と英雄の関係から「競争」「闘争」において勝利をもたらす基本的要素「力」を探究した。結論として、「力」に関して「不死なる存在」神々から影響を授かる英雄たちは、普通の状態を超える活躍を行うことが可能であることが明らかにされた。平成25年度は、平成24年度の研究成果を踏まえ、「力」に関する先行研究を探究すると共に、戦争と運動競技において活躍した英雄ディオメデスに焦点化し、「賢明さ」を伴う「力」の重要性が明らかになった。平成26年度は、運動競技における精神性「賢明さ」の分析検討を進めたが、その過程において、「力」の身体的機能性の解明と、それと精神的機能性に関するより厳密な分析検討が必要となった。 以上の研究成果を踏まえた「力」と「賢明さ」の関係解明、また、その研究成果に基づく、『イリアス』における「普遍的存在」と英雄の再検討、そして、人間の幸福に結びつく運動競技の精神性の解明は、今後の研究課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究の推進方策は、「力」の身体的機能性に関するより厳密な分析検討を行い、これを基本とする「力」と「賢明さ」の関係性を探究し、「普遍的存在」と「競争」「闘争」という観点から、人類的視点としての運動競技に関する精神性の解明に繋がる研究を行う計画である。 平成23年度は、英雄たちの戦場と運動競技場面における「競争」「闘争」の状況を分析・探究し、英雄の個性および共通性を再検討し、時代と地域を超越する運動競技に関する精神性の基礎的研究を行った。平成24年度は、平成23年度の研究成果を踏まえ、「普遍的存在」神々と英雄の関係から「競争」「闘争」において勝利をもたらす基本的要素「力」を探究した。結論として、「力」に関して「不死なる存在」神々から影響を授かる英雄たちは、普通の状態を超える活躍を行うことが可能であることが明らかにされた。平成25年度は、平成24年度の研究成果を踏まえ、「力」に関する先行研究を探究すると共に、戦争と運動競技において活躍した英雄ディオメデスに焦点化し、「賢明さ」を伴う「力」の重要性が明らかになった。それらの成果に基づき、平成26年度は、運動競技における精神性「賢明さ」の分析検討を進めたが、その過程において、「力」の身体的機能性の解明と、それと精神的機能性に関するより厳密な分析検討が必要となった。 以上の研究成果を踏まえた「力」と「賢明さ」の関係解明、また、その研究成果に基づく、『イリアス』における「普遍的存在」と英雄の再検討、そして、人間の幸福に結びつく運動競技の精神性の解明が、今後の研究を展開するための研究推進方策である。
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Causes of Carryover |
平成27年度研究費使用額が生じた理由は以下の通りである。 平成26年度の研究費使用は、前年度までの研究成果を踏まえ、「『イリアス』の運動競技における精神性に関する研究」を、特に精神性「賢明さ」の分析検討を進めた。しかし、その研究過程において、「賢明さ」と関連する「力」の身体的機能性について、より厳密な分析検討が必要となった。平成26年度、本研究は、最終年度であったが、研究計画を変更し、未使用額が生じた。平成27年度は、精神性における「賢明さ」と身体性としての「力」の連関を分析検討し、人間の幸福に結びつく運動競技の精神性を解明する計画である。以上の経緯から、平成26年度2月に科学研究費助成事業・補助事業期間延長承認申請書を提出し、3月に平成27年度の本研究の延長が認められた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度においては、「『イリアス』の運動競技における精神性に関する研究」に関して、平成26年度までの研究成果を踏まえ、運動競技や戦争で活躍する英雄たちを分析検討し、英雄の精神的特性である「賢明さ」と、「力」の身体的機能性と精神的機能性の差異について、より厳密な分析検討を行い、本研究の目的を達成するために、本年度の研究費を使用する計画である。 これらの研究を進めるためには、研究に必要な機器の購入、専門領域の文献入手、研究者からの専門知識の供与、および国内外の研究会参加と情報収集等を行う計画である。平成27年度の研究成果は、国内で開催予定の体育・スポーツ学会および研究機関誌において発表する計画である。
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