2011 Fiscal Year Research-status Report
徳川政権における幕閣の武芸思想と武芸政策に関する文献学的研究
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23500706
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Research Institution | Hamamatsu University |
Principal Investigator |
菊本 智之 浜松大学, 健康科学部, 教授 (70267847)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 幕閣 / 久松松平家 / 松江藩 / 松平定信 / 真田幸貫 / 板倉勝靜 |
Research Abstract |
当研究は、平成23年度より助成を受け行っているが、本年度の研究実績としては、当研究の前段である平成19年度~平成22年度まで研究助成を受けた「近世為政者の武芸実践と武芸政策に関する文献学的研究」(基盤研究C)で得られた研究成果と本年度の研究成果をまとめる形で研究発表を行った。学会発表としては、第44回日本武道学会において「老中 真田幸貫にみる為政者の武芸研究の視点と武芸観」と題して発表を行い、論文としては、学内研究紀要に「近世為政者の武芸実践と武芸研究に関する一考察 ~松代藩主 真田幸貫の武芸研究を中心に~」と題して投稿し掲載された。 本年度に行った史料調査、および史料収集については、夏期休業期間を利用して、寛政の改革を行った松平定信とともに名君として名高い松江藩主・松平不昧の武芸嗜好や武芸観を明らかにできるか調査を行った。また、柔術流派において初めて「柔道」という名称を用いたことが知られている直信流が、この松江藩を中心に興隆していたことが知られているため、松江藩主の松平不昧の武芸嗜好や武芸観、武芸思想が藩内の武芸流派に影響を及ぼしているか、また、この流派に対してどのような武芸観を有していたのかなどを明らかにできるか島根県立図書館や島根大学図書館に赴き、調査を行った。 その他、国立国会図書館に赴き、松平定信、真田幸貫、板倉勝靜など幕府の改革期に老中を輩出した久松松平家の5代の藩主に70年近く仕えた駒井鶯宿の記した「鶯宿雑記」にあたり、この中の武芸関係史料の調査を行い、文献複写を依頼するなど史料収集に努めた。 徳川幕府最後の老中首座であった板倉勝靜については、まず活字になっている文献にあたることから始め、24年度以降の調査・研究の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
調査研究のための準備、ならびに史料収集のための情報が思うように整わず、史料収集が充分に行えなかった。具体的には、幕末最後の老中首座の板倉勝靜の武芸に関する史料が思ったほど発掘できなかったことなどが、当初、予定していた研究の進捗状況を妨げている。今後、さらに国立国会図書館、板倉宗家の置かれた備中松山藩(岡山)などの調査が必要と考えている。また、松平定信を初めとする老中を輩出した久松松平家の本家は、伊予松山藩であることから、松山(愛媛)の調査によっても久松松平家の武芸思想を明らかにしていく上で新たな史料発掘ができるのではないかと考えている。このあたりの準備を積極的に行うことで、今後遅れた研究を取り戻せればと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、近世中期以前の幕閣に関する調査研究がほとんど行えなかった。また、これまで進めてきた研究を発展させる計画であったが、松江藩の武芸関係史料について、概ね把握できたものの、備中松山藩(板倉家)、伊予松山藩(久松松平家)、桑名藩(久松松平家)など、武芸関係の史料について、目星をつけた所に実地調査、史料収集に赴くことができなかったため、今後、これら地方の幕閣となった藩主たちの武芸関係史料の発掘、並びに史料収集に力を注いでいく予定である。 また、公共の図書館や史料館などの所蔵機関に保管されている史料の所在についても調査を進めていく。 平成23年度の計画を取り戻すとともに、平成24年度に計画している史料撮影や文献複写、史料データの整理、内容の分析、時代、流派、種別、関係人物ごとの分類、整理などを行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度、研究を進める上で最も支障を来したのは、現地で撮影、収集したデータを管理、整理したりするノート型のパソコンである。先の研究助成で5年前に購入したものであり、性能不足以外に不調なことが多く、度々トラブルに見舞われている。研究期間の初年度に購入する計画を立てたが、これまで使い慣れたもので研究を行いたい考えもあり、平成23年度はノート型パソコンの購入は見合わせた。しかし、大事なデータや作業において大きなトラブルや取り返しがつかない可能性も出てきたため、平成24年度の購入を計画したい。また、情報機器の活用が不十分であったため、実地調査を行う前にもっと準備出来ていれば、更なる成果が期待できたことから、次年度以降、情報機器の購入も再度検討してみたい。 その他、現地に赴き史料調査、史料収集を積極的に行って行きたいため、平成24年度も、旅費が必要となると思われる。また、昨年度より収集した史料の解読を進めているが、柔術流派や槍術、弓術など多種にわたる武芸流派が認められ、これらの解読、内容についての専門的知識などについて提供をうける必要がでてくるものと思われるため、あらかじめ計画している経費として謝金が生じると考えられる。これらの作業を行うための研究打合せなどに掛かる費用も経費に組み込んでおきたい。 今年度行った調査・研究については、学会、および学術雑誌などで発表を行う予定のため、研究成果の発表に必要な費用も計画しておきたい。
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Research Products
(2 results)