2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500707
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤井 勝紀 愛知工業大学, 経営学部, 教授 (10165326)
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Keywords | 初経遅延 |
Research Abstract |
前年度の報告から、韓国人女子スポーツ選手の初経遅延の実態について、先ず対照群として一般女子高生の初経年齢に関するアンケート結果が得られた。同時に身長と体重の縦断的発育記録を確保した。同様に体育専科高校の女子スポーツ選手に対しては初経年齢と同時に現在の月経状態に対するアンケート結果が得られ、身長と体重の縦断的発育記録を確保することができた。そして、得られた身長の縦断的発育データに対してウェーブレット補間法を適用してMPV年齢を特定し、そのMPV年齢に対する初経年齢の回帰多項式を1次から3次まで構成し、妥当な次数の回帰多項式が決定された。妥当な次数の回帰多項式評価システムが構築されたことによって、初経遅延評価に韓国人女子スポーツ選手を適用した。その結果、スポーツ種目別の初経遅延判定の結果については、ほとんどの種目で初経遅延が明確であるが、アーチェリーのような競技では初経遅延と判断することはできない。明らかにテコンドー、陸上競技は初経遅延が認められているが、アーチェリーは初経遅延を示してはいないことが明白となった。本年度における研究では、初経遅延を示した女子スポーツ選手のその後の月経状態が検討された。月経状態を月経痛症で捉えることにして、そこで、月経痛の程度をビジュアル・アナログ・スケール(Visual Analogue Scale,VAS)で測定した。全スポーツ選手の月経痛の程度の頻度分布から判断すると、スポーツ選手は中程度以上の月経痛を生起する者が80%近くを占めている。さらに、この全スポーツ選手から初経遅延者を分類し、その月経痛の程度を示した分布から判断すると、初経遅延グループでは全スポーツ選手における月経痛の程度の出現頻度とよく似ており、初経遅延における月経痛の程度の出現頻度がスポーツ選手の月経痛の程度をそのまま反映していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の報告でも述べたように、本研究の目的を確認すれば、韓国人女子を対象とすることによって日本人対象の場合と同様に、これまでの研究成果の検証を行うとともに、新たに初経遅延後の月経状態との関係が解明される期待がある。この点は世界的にも全く手を付けられていない研究であり、初経遅延とその後の月経状態との因果関係が分かれば、女子スポーツ界に貴重な情報を提供することができると考える。また、韓国人一般女子の初経遅延と早経を生起する生育環境との関係も検討することが必要と考える。さらに形態的な変化、例えば、身長の高低別、肥痩度によって初経遅延、早経がどのように出現するのか今のところ全く分からないのが現状である。 そこで、現在までの研究の達成度は、得られた発育データおよびアンケート調査による収集データについてはすでに解析は終了しており、解析されたデータから、韓国人女子用の初経遅延評価チャートが構築され、スポーツ選手の初経遅延が明確に示された。また、スポーツ種目別の初経遅延判定の結果については、ほとんどの種目で初経遅延が明確であった。つまり、達成度としては韓国人女子用の初経遅延評価システムが大凡構築できたことにより、スポーツ選手の初経遅延が判定され、判定された個人におけるその後の月経状態を解析することができた。しかし、形態的な変化による初経遅延と早経の判定や、韓国人一般女子における生育環境と初経遅延、早経との関係、さらには日韓同一初経遅延評価システムの構築など検討することを考えれば、現在まで約75%の達成度が認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の目的では、韓国人女子スポーツ選手を対象として、新たに初経遅延後の月経状態との関係が検討された。しかし、スポーツ選手に限らず、一般女子の初経遅延にも大きな問題がある。前年度でも推進計画で述べたように、初経遅延、初経早経については多くの情報があるわけではない。例えば、肥満・痩身タイプの者の初経早経、遅延状態がどのようになっているのか全く分からないのが現状である。ただ、肥満の早熟性や痩身の晩熟性は指摘されている。しかし、成熟の早晩による初経の遅速は推測できるが、初経遅延や早経を客観的に評価することはできない。このような問題と同時に身長の高低別の初経遅延、早経の判定も全く分からない。このような問題点を考え、前年度にすでに韓国の一般高校、体育専科高校以外の専門学校のデータを収集することができたので、その解析を実施する必要がある。そして、同時に初経遅延評価システムに適用して、初経遅延、初経早経の検証を実施する。また、一般女子を肥満、痩身タイプに分類し、それらの身体発育状況と初経遅延、早経の状態がどのような構図を示すか、身長の高低別に分類した者の初経遅延、早経も検証していく必要がある。さらに、日本と韓国の女子スポーツ選手の初経遅延状況がどのようになっているのか、今まで比較された知見は皆無である。そこで、初経遅延評価システムにおいて日韓同一評価基準を構築し、日韓女子スポーツ選手の初経遅延判定を行い、日本と韓国の女子スポーツ選手の初経遅延状況を比較する。このような知見を導くことにより、これら成果を国際学会等で発表することはもちろん、然るべき学術雑誌に投稿していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においては研究終了年度であるために、研究協力者によってデータの解析が実施されるための謝金は、10%~20%になる。また、前年度に収集されたデータがあり、それらデータの解析によって結果が導かれた場合、韓国側との打ち合わせも必要であるが、自分が学位を取得した金沢大学の恩師の研究室に頻繁に出張することになる。もちろん、関連学会出席によって、専門的知識の供給が必要となる。そのための旅費も必要であるし、打ち合わせや会議費は是非必要となる。さらには、検討課題の解析が進むことによって導かれた結果の幾つかを学会で発表することになる。したがって、学会発表による成果発表費が必要となる。成果報告書を製本して韓国側の研究協力者や調査の協力をしてくれた高等学校等にフィードバックする必要があり、そのための費用は是非必要となる。主に、成果発表として学会発表が頻繁に行われることになり、次年度は海外での成果発表を行うことになっており、2013年度のヨーロッパスポーツ科学会、教育医学韓国合同学会での発表が予定されている。もちろん、国内の学会、特に、日本体育学会、日本体力医学会、日本教育医学会、日本思春期学会、日本発育発達学会、日本生理人類学会等での参加や発表を予定している。したがって、次年度の旅費は約50%程度を必要とする。そして、成果発表については学会発表後、論文として然るべき学会誌に投稿する。そのための投稿費用、国際誌であれば英文チェック等の費用が不可欠となる。そして、アクセプトされれば掲載費用が必然的に必要となる。したがって、その他の支出としては30%程度になるであろう。
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Research Products
(8 results)