2012 Fiscal Year Research-status Report
武道必修化に向けた科学的エビデンスに基づく新資料の提供-柔道の衝撃負荷定量化-
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23500709
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
河鰭 一彦 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00258104)
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Keywords | 運動生理学 / バイオメカニクス / 身体教育学 / 武道学 / 柔道 / 骨強度 |
Research Abstract |
武道必修化に向けた科学的エビデンスに基づく新資料の提供-柔道衝撃負荷の定量化-という研究課題をすすめている。当該年度は特に実際の柔道乱取り中にあらわれる受け身動作に焦点を当てて測定をすすめた。なぜなら、衝撃負荷の定量化という力学計算の前に投げ技を施された「受け」がどのような動作形態をとるかを明らかにしなければ定量化の基礎資料をえることができないことが判明したからである。衝撃負荷定量化のためにはいくつかのパラメータを設定する必要がある。力学の一般的な計算として物質が地面等のサァーフェイスに衝突する際の衝撃負荷定量化のためには「衝突速度」「時間」「入射角」「反動高」などの各種パラメーターが必要になってくる。特に衝突する物質のサァーフェイスに対する「接地面積」がより重要な必須パラメーターとなってくる。人体を対象とした場合、当然「接地面積」は動作形態によって大きく異なることは自明となってくる。これらの事実を本研究の課題に対応させた場合、投げ技を施された「受け」がいわゆる「受け身」をおこなう際の動作形態をあきらかにしなければならないことになる。本研究遂行のためには「そもそも受け身とは?受け身動作の形とは?」という研究命題が持ち上がることになってきた。そこで、昨年度の研究実積の概要にも述べたように当該年度は「受け身動作の類型化」に研究エフォートを傾注してきた。特に「実業団・大学選手」の乱取り練習場面を2台のビデオカメラで撮影し、バイアスのかからない自然な乱取り中において発現される受け身動作の類型化を試みた。当初の予測では、技を施された「受け」がおこなう受け身動作は「後方」「側方」「前方」の柔道初習者が教授される「受け身の型」に類型化されるものであるとしていた。しかし、分析の結果「実業団・大学選手」の乱取り練習場面みられる「受け身」の型は全く違うものであることがあきらかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
武道必修化に向けた科学的エビデンスに基づく新資料の提供-柔道衝撃負荷の定量化-の最終目的は、柔道の有効性と危険性の基準、例えば「これ以上の衝撃負荷を柔道修行中に青少年に課すことは危険である」という危険臨界点あきらかにすることである。このためには科学的エビデンスに基づいた力学量の算出が必要になる。しかし、力学量の算出には多くのパラメーター抽出が必要であることはよく知られたところではある。加えて人体を対象とした測定の場合はより測定・分析・演算方法が複雑化する傾向にあることもまたよく知られた事実である。これまで、当該研究課題をすすめるにあたり、新たなパラメーターの算出が必要となり、新たなパラメータのために新たな実験系を模索し、新たな実験系に新たなパラメーターが必要となる、というサイクルを繰り返す現状があった。そのため、前年度、当該年度の達成度は充分ではなかった。しかし、当該年度後半より採用するパラメーター限定化が功を奏して達成度の進展がみられてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は①技術レベル別の「受け身にみられる動作」の類型化を進めることである。具体的には現在すすめている「実業団・大学選手」に加えて「高等学校選手」「中学校選手」「小学校選手」「男女別」の各カテゴリの分析をすすめることである。②動作別頸部筋力測定をおこない頭部を固定できる頸部筋力の定量化をおこなう。③投げ技を施された「受け」の頭・頸部にかかる衝撃負荷を測定、定量化する。④高い衝撃負荷にさらされた柔道選手の骨強度特に頸部の骨強度測定をおこなう。 の4段階でとして計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究旅費はこれまでと同じように「研究上の助言」を得るために加えて、平成25年度は測定のために使用する可能性がある。また、データー解析等の研究補助謝金、被験者への謝金等これまで使用していなかった費目についても研究費の使用を予定している。さらにフォースプレート上において「畳の衝撃吸収度」の測定をおこなう必要がありこの実験系のために新たに木枠等の作成をおこなう必要もあると考えられ、研究費の充当を考えている。平成25年度への繰越金は、本来平成24年度におこなう予定であった実験・測定が「現在までの達成度」に記述した要因によりおこなうことが出来なかった。当然、平成25年度は予定されている実験・測定を遂行する。その際、発生する支出として被験者謝金、研究補助謝金等を確保するため、繰越金が発生した。
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