2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500710
|
Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
田中 新治郎 武庫川女子大学, スポーツ健康科学部, 教授 (70197432)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | スポーツ文化 / 学習内容 / 指導方法 |
Research Abstract |
本研究は、小・中・高校の保健体育科の目標・内容・方法を「新たなスポーツ文化の確立」という社会的要請(例えば文科省「スポーツ立国戦略」2010年)にいかにして応えていくかという点に意義を求めていく。これに応えるにあたり、保健体育科の学びをスポーツ文化の継承・発展という観点から構想し、その学習内容や指導方法を理論的・実践的に明らかにしていくことを目的として進めてきた。 こうした研究の背景には、スポーツが世界共通の文化としてその価値が諸方面に認識されてきている事実があげられる。しかし、その価値をめぐっては慎重な吟味が必要である。 初年度は、こうした研究の背景をさぐりつつ、スポーツ文化を取り上げる際にその吟味を教師とともに学習者との両者による共同的な学びの創造に着目し、体育科の教育実践をさぐってきた。折しも、初年度は東日本大震災直後にあたり、子どもらの生活と文化の再生と見直しが急務となった。被災地の実践のなかに本研究がめざすスポーツ文化に関する学習内容と指導方法の開発の典型を見出すことができた。 そこでは、震災による物的、人的、社会的被害から何を感じ取り、失ったものの尊さと、失わざるを得なかった痛みを学び直し、これからの必要を創造していく営みがあった。現実の生活課題にとって意味あるスポーツ文化をとりあげ、現存する従来のスポーツ文化を見直し(集団討議)、これを継承すべきものと発展すべきものにかたちを与えていく(ルールづくりや競技様式の選択・変更)取り組みが観察された。被災地に限定された特殊な実践というよりも、今日、どこでも必要とされる体育科教育の典型実践となり得るようにさらに理論化を進めていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)文科省「スポーツ立国戦略」などの政策立案の経過をさぐる資料・文献は入手できた。ただし、新たなスポーツ文化観に関する文献は今後多く出版、発表されることが予想されており、これらの収集はさらに継続していく必要がある。(2)本研究テーマに迫る保健体育実践について具体的なデータ収集を行った。大きくいえば、二つの実践例を取り上げることができた。しかし、さらに多くのタイプの実践事例を取り上げていく課題が残されている。(3)授業実践等の映像データから、会話音声を取り出し、教授行動、学習行動の分類を行う分析ソフトを開発した。今後は、これを用いて分析作業を進めていかなければならない。(4)授業実践を学校内における教科指導にとどめず、地域や社会との動き、学校以外の人間の営みとしても組織していかなければならない。こうした教育実践の理論的および実践的な検証作業はこれからの取り組みとして残されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)新しいスポーツ文化を学び創造する「プロジェクト学習」に関する教育学上の理論的成果を整理する。(2)教師から学習者へという単一方向の流れから、双方向のコミュニケーション活動を分析対象にする研究方法を用いて学習内容と指導方法の動的なメカニズムを明らかにしていく。(3)新たな典型実践を求めて、必要なデータを収集する。理論化してまとめる。尚、今年度は平成24年度への繰越金が発生した。前項【現在までの達成度】の(3)で記した通り、行動分類ソフトを開発しこれを用いて研究を進めていく準備を整えてきた。今年度は、このソフトを搭載するパソコンを2台購入することで計画が達成されるとしていたが、わずかながら今年度の研究費を2千円ほど超過することになった。その結果、パソコン購入予算(161、712円)をそのまま繰り越すことにした。次年度の研究費で不足額を補填すれば研究計画を変更することなく遂行できる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・典型的な授業を取材するうえで専門的知識の提供への謝金等を200千円支出する。・行動分類システムを用いて授業を記録した映像を分析するためにパソコンを購入する。(パソコン購入予算についてはそのほとんどを前年度からの繰越金161,712円で調達できる)および、行動分類システムによる分析にあたっては人件費60千円を支出する。・分析の成果報告とさらなる資料収集を目的とした学会への出張、研究会等への調査旅費250千円を支出する。・生涯スポーツ関連、地域スポーツクラブ活動関連の文献購入費60千円、資料、データを収集、検討するための活動費(会議室借り上げ料、機器使用料等)60千円を支出する・資料整理のためのファイル、CD・DVD・BDとの物品費70千円を支出する。
|
Research Products
(2 results)