2011 Fiscal Year Research-status Report
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23500712
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Research Institution | St.Mary's College, Nagoya |
Principal Investigator |
鈴木 裕子 名古屋柳城短期大学, その他部局等, 教授 (40300214)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 感性 / 身体 / 幼児 / 模倣される子ども / 相互行為 / 身体表現 / 尺度 |
Research Abstract |
本研究では,幼児期の感性を社会へのかかわり方という核によせて検討するために「身体的な感性」という概念の有効性を検討し,保育現場において実証することを目的としている。本年度は3つの方向から研究を遂行し以下の成果を得た。1.「身体的な感性」という概念の論考:哲学,教育学,体育学,心理学などの領域や関連する既存の理論をもとに以下の点を論考した。1)感性の定義と意義の歴史的変遷,2)感性を身体のかかわりを焦点として可視化する研究動向,3)幼児の感性としての「能動的応答」の意義と実際。その結果,感性を身体や身体感覚と結びつけて考えることによって,感性は社会的な意義を持つことが明らかになり,「身体的な感性」を「身体を媒体とした他者との双方向的な力」と操作的に定義できる可能性が見出された。2. 幼児における「身体的な感性」発現の実証:「身体的な感性」の形成や発揮の過程の実証の手だてとして,「模倣される子ども」に着目し,双方向的な身体の関わりの検討を行った。愛知県O市T幼稚園3歳児を対象に観察を行い,筆記記録とVTR撮影をもとに事例を収集し考察した。その結果,模倣された子どもたちにもたらされる身体による模倣機能が5つに分類され,それらが複数の子ども間で異なる機能を発現させ混在して相互行為となったり,流れるような相互行為を生み出したり,一方では相互行為が途切れる要因となることが示された。模倣されるという受け手の経験が,身体的な感性の発揮を促進させる重要な役割を担うことが示唆された。3.保育者の「身体的な感性」の捉え方の検討:愛知県内保育士を対象に,子どもの感性と表現に関する現状と問題点に関する質問紙調査を行った。幼児の感性尺度における「能動的な応答」因子の発現に着目して分析した結果,他者との能動的な応答性や,そのための身体性の活性化への支援に困難を感じる現状が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度では,幼児の「身体的な感性」を育む環境をつくることによって、身体的コミュニケーションを活性化させることができるのではないかという仮説に対する実践的な検証に先立ち,「身体的な感性」という概念の有効性を明らかにするための資料収集を含めた基礎的な研究を行い紀要論文にまとめた。これまで「身体的コミュニケーション」は、一般的に非言語コミュニケーションという呼称で、「身体」を他の諸事象と一括りにしてきたため、その実際が捉えられていないことも示唆され,「身体的な感性」を「身体を媒体とした他者との双方向的な力」とし,今後の実践的な検証に際して操作的に定義できる可能性が見出され,今後の観察視点が明確にされた。 並行して,愛知県O市私立T幼稚園3歳児クラスにおいて、幼児期の身体的な感性発現の様相の観察を行った。本年度は,幼児の感性尺度における「能動的な応答」因子の発現に着目し,特に「模倣される子ども」に焦点を当てて観察し,双方向的な身体の関わりの分析を行い論文として学会誌に投稿し受理された(印刷中)。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は以下の2点を重点的に扱う。1)幼児期の身体的な感性発現の縦断的調査と検証:4歳児を対象とし「模倣される子ども」に焦点を当てた観察と調査から「身体的な感性」の発達を捉える。2)身体表現活動を「身体的な感性」を育むための介入プログラムとして扱い,幼児の感性尺度を手がかりにして感性の育ちを保育者が具体化できるような視点を整理することを試みる。「身体的な感性」発現のプロセスを,他者と双方向にやりとりする行為として積極的に捉えていくために,身体という媒体が強調され身体的な相互行為における典型性の高い機能として解釈できる身体表現活動の場面を対象として検討を行う。身体表現活動を中心とした介入プログラムを作成・実施し,日常の生活との関わりについて,幼児期の感性尺度を用いて検証する。3)子どもの感性と表現に関する現状と問題点の総括(論文としての投稿)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品:平成23年度に購入した無線式遠隔撮影システムに,ビデオタイムカウンター(2ch同期装置)を追加購入し,複数台によるビデオ撮影後により詳細な分析が行えるようにする。旅費:観察園への交通費及び成果発表のための学会出張謝金:撮影補助等その他:学会誌投稿等
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Research Products
(3 results)