2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500717
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
松坂 晃 茨城大学, 教育学部, 教授 (70190436)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 知的障害 / 体育 / 子ども / 運動スキル |
Research Abstract |
知的障害児は運動・スポーツに参加する機会が限られ,運動機能発達の遅れとともに将来のスポーツライフを困難にしている。本研究は知的障害児の体育学習内容の検討を目標としており,まず,特別支援学校児童生徒(小学部1年生~高等部3年生)の運動実施状況および体育授業の実態について,担任教員に対して質問紙により調査した。得られた1,720人分の児童生徒のデータを集計したところ,担任が「できる」と判定した運動スキルについては,「静止したボールを蹴る」が最も高く84.7%,以下,「ボール投げ」80.6%,「短距離走」68.1%だった。また,「できる」割合が低い運動スキルは「鉄棒のさか上がり」3.2%,「25m水泳」6.9%,「マットでの後回り」12.1%だった。一方,体育授業で取上げている内容については「水泳」が最も高く85.6%,以下,「持久走」82.0%,「短距離走」70.5%,「ストレッチ」68.8%,「サーキットトレーニング」64.8%だった。「ボール運動」については,「サッカー」の56.3%を除くといずれも15%以下であり,個人種目の学習機会は多いけれども,集団種目の学習機会確保については課題があると思われる。 つぎに,各種運動スキルを客観的に評価するため,3歳児から小学校6年生を対象とし,「走る」,「跳ぶ」,「投げる」,「つかむ」,「打つ」,「まわる」等の20数種目についてビデオカメラで撮影し,動作様式を分析して評価基準の作成を進めている。これまでのところ,低年齢の子どもでは飛んでくるボールを「つかむ」や「打つ」等の動作が難しく,移動しながら「つかむ」・「打つ」動作はさらに困難であることがうかがわれた。今後は評価基準の作成を進めながら,知的障害児の運動スキルについて客観的に評価し,年齢および障害特性を考慮した体育学習内容の精選を予定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は知的障害児童生徒の体育学習内容策定をめざすものであり,本年度実施した事前調査により,特別支援学校で行われている体育授業の実態および児童生徒の運動スキルの実態について,ある程度把握することができたと思われる。この事前調査は,体育学習内容の提案が実情を知らないままの一方的な提案とならないために,また,知的障害児の運動スキル調査項目を選定するために重要ととらえており,この調査に手間取ったことが「やや遅れた」理由である。しかしながら,「鉄棒運動」が知的障害児にとって難易度の高い運動スキルであるとともに特別支援学校では殆ど取上げられていない学習内容であることが明らかになったことや,「前回り下り」や「さか上がり」などの項目をビデオ撮影による客観的評価項目から除外するとともに実施可能な鉄棒学習課題の工夫が求められるなど,体育学習内容策定という当初の目的を達成する上で参考となっており,最終的な目標に向かっていると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では,当初,小学校学習指導要領解説体育編に例示されている運動技能を中心にビデオ撮影し評価基準を作成して,知的障害児童生徒の運動技能水準を把握し,体育学習内容を検討することを計画していた。しかし,知的障害児童生徒の鉄棒運動に関わる運動技能に大きな困難があり,また,移動しながら打つなどの複合された運動技能がより困難であることが予想される等,基礎的運動技能評価項目自体を見直す必要があり,この改訂を急ぎたいと考えている。また,ダウン症や自閉症などの障害特性を踏まえるには,データの信頼性を確保するため対象者数を増やす必要があり,被験者の負担とのバランスから一部の運動技能評価項目をビデオ撮影によらないで,「できる・できない」だけの判定に代えることも検討しているところである。これらを踏まえて本年度は知的障害児童生徒の運動技能についてビデオ撮影と分析を進め,基礎データの蓄積を図る予定である。こうした分析のもと,知的障害児のための体育学習内容の作成を進めたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
幼児および小学校児童,さらに特別支援学校児童生徒等の各種運動技能についてビデオ撮影し,これを再生して評価するには多くの時間が必要となる。ひとりの対象児童生徒について20数種の運動スキルを基準に照らしながら評価するには20分~40分程度の時間を要し総計すると膨大な時間が必要になる。これを研究代表者ひとりで行うことは限界があり,この分析のために謝金を準備しておきたい。次年度以降の研究費については,こうした人件費と映像管理および研究成果発表のための旅費に充当したいと考えている。
|
Research Products
(1 results)