2011 Fiscal Year Research-status Report
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23500722
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
真田 久 筑波大学, 体育系, 教授 (30154123)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | オリンピック / 文化プログラム |
Research Abstract |
古代ギリシャにおいては、オリンピアとともに、ネメア、デルフィ、イストミアでのいわゆる四大競技祭において行われた芸術競技とは次の内容であった。音楽競技(笛などの楽器演奏)と詩歌競技(朗読)が主な競技で、誰の音色が遠くまで千名に聞こえるかを競い、賞品として野生の葉冠が運動競技と同様に与えられた。 オリンピア競技祭の期間中におこなわれる吹奏競技(ラッパ吹奏者による競技)と布告競技(勝利者の名前を呼び上げる人を決める声の競技)は、音楽競技や詩歌競技の変容した競技と見ることができる。古代オリンピックに関する古代の詩人(紀元前5世紀のピンダロス、バッキュリデス)や哲学者(紀元前5,4世紀のプラトン、ソクラテス)、そして歴史家(ヘロドトス、ツキディデス)、紀行家(2世紀のパウサニアスなど)の文献や、近年の研究書や論文から、古代オリンピックの文化・芸術性(神との関係、社会への貢献、道徳性)などが抽出できた。 近代オリンピックにおいては、クーベルタンにより1912年の第5回オリンピック競技会より、芸術競技が始められ、その理念は、古代にならい、身体と精神の調和をはかるというものであった。1912年以前の1896年の第1回近代オリンピックや、1906年のアテネでの中間オリンピックでも、音楽の演奏やベネチア祭、遺跡への訪問などの文化プログラムが行われ、近代オリンピック初期から文化・芸術性を有していた。 以上から、古代、前近代、近代オリンピックにおける文化・芸術性の文化要素とは、古代との接点、神性、平和、コミュニケーション、内面的啓発、教育性、地域性などであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の文献研究はほぼ目標通りに進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
ギリシャのネメアにおいて、1996年より四年ごとに、ネメア競技祭が復興して行われている。カリフォルニア大学バークレー校とギリシャ政府が協力して行われているもので、1日目に走競技を行い、2日目に文化プログラムが行われている。この競技祭を調査し、ここでの文化プログラムの理念と、23年度に明らかにした、オリンピックの文化・芸術性の文化要素とを比較して考察する。古代の文化を復興した際に、引き継がれた文化要素(古代との接点、宗教性、平和)と新たな文化要素(環境プログラム、教育)などを明らかにする。 第30回オリンピック競技会(ロンドン大会)における文化プログラムの内容について、上記と同様に、23年度に明らかにした、オリンピックの文化・芸術性の文化要素と比較して考察する。近代スポーツ発祥の地のロンドンにおいて、どのように特徴的な文化要素を持たせているかについて検討する。あわせて、文化プログラム以外のところでの文化・芸術性も明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ロンドン・オリンピック、ロンドン・パラリンピックにおける文化プログラムの内容の調査ネメア競技祭における文化プログラムの調査文化プログラムに関する資料の収集
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Research Products
(1 results)