2012 Fiscal Year Research-status Report
末端を加速するスポーツ動作における力学的エネルギー利用の有効性に関する研究
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23500723
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯野 要一 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (50345063)
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Keywords | 力学的エネルギー / 逆動力学 / 有効性 |
Research Abstract |
卓球のフォアハンドストロークにおける力学的エネルギーの生成および吸収、移動の分析を卓球の上級者12名と中級者8名を対象として行った。今年度は中級者の分析を進め、昨年度得られた上級者の結果と比較した。ボールインパクト時のラケットスピードは上級者で18.4m/s、中級者で18.6m/sであり有意差はなかった。全身の力学的エネルギーの最小の時刻からボールインパクトまでのエネルギーの増加分は、上級者で3.16±0.52J/kg 中級者で3.26±0.63J/kgであり有意差はなかった。また、この全身の力学的エネルギーの増加に対するボールインパクト時のラケットとそれを持つ手の運動エネルギーの割合は、上級者で27.8±4.3%、中級者で27.3±5.0%であり有意差はなかった。このことは上級者は中級者と比較してインパクト時に生成された力学的エネルギーのより多くの割合をラケットに集中しているという仮説を支持しなかった。 野球の投球動作における力学的エネルギーの利用の有効性に関する知見を得るために大学野球選手20名を対象として、投球中の全身の動作を撮影し、床反力を計測した。 投球動作において前膝が最高点に達した時刻からボールリリース時までの全身でなされた正味の体重当たりの総仕事量は、1.94±0.58J/kgであった。また、全身の位置エネルギーは前膝が最高点に達した時刻から減少するが、体重当たりのボールリリース時までの位置エネルギーの減少分は、3.14±0.45J/kgであった。ボールリリース時の全身の運動エネルギー4.22±0.44J/kgに対するボールの運動エネルギー割合は20.2%であった。この割合はリリース時のボール速度と有意な相関はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度行った卓球の実験に関する分析を終え、予定通り学会発表を行うことができた。また、野球の投球実験も終えることができた。これらの点でおおむね順調に進展していると評価できる。 卓球のフォアハンドストローク、野球の投球動作いずれにおいても、インパクトやリリース時に全身の運動エネルギーに対するラケットやボールの運動エネルギーの割合と、卓球の競技レベルやリリース時のボール速度と関連がないことが示唆された。現在、力学的エネルギー利用の有効性の高い動きがどのような特徴を持っているのかをどのようなパラメータを用いれば適切に評価できるかの検討している。当初卓球のフォアハンドストロークについて得られた成果を論文投稿する予定であったが、まだ出来ておらず、若干の遅れがある。
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Strategy for Future Research Activity |
野球の投球動作について、力学的エネルギー利用の有効性の観点から、良い動作の特徴について検討する。全身の関節でなされた正味の仕事量やエネルギーの移動量だけでなく、関節トルクによる力学的エネルギー消費や各関節レベルでのエネルギーの移動効率などのパラメータを求め、それらと投球速度との関連を調べる。得られた成果は8月の日本体育学会で発表する。得られた成果を論文投稿する。 また、卓球のフォアハンドストローク動作における力学的エネルギー利用の有効性の観点から、上級者と中級者の比較も踏まえて良い動作の特徴について検討する。野球と同様に全身の関節でなされた正味の仕事量やエネルギーの移動量だけでなく、関節トルクによる力学的エネルギー消費や各関節レベルでのエネルギーの移動効率などのパラメータを求め、それらとラケットスピードとの関連を調べる。得られた成果を論文投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、バイオメカニクス学会に参加できなかったため、また卓球のフォアハンドストロークの結果を論文投稿できなかかったため、177,278円の残金が生じた。 次年度は、今年度の残額を含めて577,278円の研究費を使用する予定である。国際学会に発表予定であったが、国内の学会発表に変更し、参加費と旅費に50,000円支出する。国際学会に参加しないために余った研究費は、Fortranのソフトウエアの購入(150,000円)とそれを利用するためのパーソナルコンピュータの購入(150,000円)に充てる。また、論文投稿の為の英文校正費に50,000円、報告書作成に100,000円、論文投稿料として50,000円支出する。その他の消耗品に27,278円を支出する。
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