2012 Fiscal Year Research-status Report
日独英比較スポーツ史研究―帝国主義からファシズムへ―
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23500733
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
池田 恵子 山口大学, 教育学部, 教授 (10273830)
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Keywords | 帝国主義 / ナショナリズム / スポ-ツ史 |
Research Abstract |
ロンドン五輪開催期に学術会議が開催され、以下の論文を公表した。"Pierce Egan’s Life in London (1821) and the People’s Memory of Sporting Enthusiasm”(The Institute of English Studies, University of London, Organised by: The Literary London Society, 4-6 July 2012)。上記は本研究に着想を与えた19世紀英国スポーツ史研究をテーマとするものであるが、それにより動機づけられた帝国主義、ナショナリズム研究の日英比較研究として、翌週、研究協力機関である、英国ドゥ・モンフォート大学ICSHC国際スポーツ史・文化研究所との共同提案により、日英比較スポーツ史シンポジウム、“Sport in Japan and Britain”, One-day Symposium,Organised by the International Centre for Sport History and Culture, (De Montfort University, Leicester, 9 July)の開催を企画・実施し、下記の研究報告を行った。"The History of Sport in Japan: the British Influence through Sport on Nationalism".なお、3月に、再度日本でのシンポジウム開催を企画していたが、英国の研究所と山口大学での開催日程において、当初の予定を変更せざるを得ない事情が生じたため、最終年度において本研究のまとめとなる国際セミナーの開催を通じて研究成果を報告できるよう企画中である。同時に複数の国際誌に関連論文の英文書評を掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2点変更が生じた。一点目は協力研究機関である英国の国際スポーツ史研究所における人事異動に伴い、主たる研究協力者について、新たに赴任した主任教授との連携に変更せざるを得なかった。同トニー・コリンズ教授は日本スポーツ史研究に意欲的であり、日英比較について、より具体的な構想を掲げている。研究実績欄に記載したシンポジウムの提案を含めて、より具体的な研究連携を進めることが可能になった一方で、日独英の三国連携については氏は消極的であった。この点が日英比較について進展がある一方で、ナチズム研究との比較については文献調査に頼らざるを得ない状況である。また年度末に構想していた日本でのセミナー開催については、両国の大学学期開始期間の相違もあり、研究連携のための日程調整について課題を残している。本比較研究は日本人研究者の研究の資質が国際的に問われていることを切実に反映するものであり、研究論文の書評を行い、国際的に発信することが重要である。この作業は英語論文の読解、英語による書評の作業であるため、時間を要しているが、国際誌に掲載された英文書評はこの分野における着実な成果につながっていると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
日独英間の比較研究とは、アジア研究の再評価としての帝国主義研究に等しい。一昨年から昨年度にかけて、海外の研究者により編集、刊行された、これらのテーマを扱う論集が数多く出版された。今や比較日本史研究、アジア研究は西欧社会が注目する世界的テーマに他ならない。他方、一連の西欧社会が主体となった最新の国際論文に対する評価は、残念ながら国内でまったく追いついていないのが現状である。本研究が掲げる大英帝国主義、ナチズム研究との比較を念頭におく、日本におけるファシズム体育と帝国主義研究は、以上のように計画段階を凌駕する先行研究が近年量産される中で、かじ取りの修正が必要とされている。真摯に研究を進めながらも、日本より上記の論文に対し、批判を行うことも重要である。実際、アジア的理解を欠き、偏見ともとれる帝国主義解釈が散見される中、平成24年度末には、反論する書評を国際ジャーナルに寄稿した。最終年度は、この書評にまとめた中身を意識した方針のもとで、研究を進めていきたい。同時に、オリジナルな資料を通して、日本からの発信を進めたい。特にNASSH北米スポーツ史学会刊行の学術ジャーナルJournal of Sport Historyに投稿した、欧米の研究者によるアジア的理解・視角を無視した、偏見が先行するナショナリズム・帝国主義研究への批判とは以下の点である。1934年の極東アジア選手権大会、実現しなかった1940年の東京招致五輪、1964年の東京五輪、1988年ソウル五輪、2008年北京大会五輪までのおよそ70年間を一括りにした「アジア流帝国主義の連鎖、その国内政策による民衆との和解」という観点である。具体的には「記憶の歴史」のとりうる方法論的限界の指摘とテキスト分析における方法論的パラダイム転換を意識した読解の必要性に言及している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画書に記載の通り、最終年度はまとめの段階である。よって、本研究の一部をなす個別研究の多くを国際言語により公表していきたい。すでに8月に開催予定のISHPES国際体育スポーツ史学会には、日英比較を念頭においた論文の公表をエントリーしている。また9月のBSSH英国スポーツ史学会における個別研究発表を通して、またはICSHC英国ドゥ・モンフォート大学国際スポーツ史研究所との研究連携を通じて、国際セミナーを企画し、平成26年3月に最終報告を予定している。左記は「11.現在までの達成度」に記載の通り、平成24年度末に構想していた日本での研究連携セミナーを両国の大学学期開始期間の相違もあって延期し、日程の再調整を行った結果の計画である。よって、H24年度内に開催予定であった研究連携セミナーをH25年度に実施することとし、H26年3月開催で英国の研究所と合意している。そのため研究費の一部を次年度使用額に計上している。
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Research Products
(5 results)