2012 Fiscal Year Research-status Report
学校と総合型地域スポーツクラブによる「新しい公共」の創出過程に関する研究
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23500740
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
谷口 勇一 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (50279296)
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Keywords | 学校運動部活動 / 総合型地域スポーツクラブ / 新しい公共 / 協働関係 / 揺らぎ |
Research Abstract |
平成24年度は、研究のフィールドである大分市野津原地区において「クラブ範域内中学校教員」「設立時からのクラブスタッフ数名」「クラブ設立時からのクラブ会員数名」「当該地区における非クラブ会員数名」に対するインタビュー調査を実施した。インタビュー調査の合計回数は16回であった。 研究フィールドにおいては、総合型地域スポーツクラブの育成とともに、中学校運動部活動(以下、部活動)との関係性が緊密となり、その後、部活動は総合型地域スポーツクラブ活動の一環として実施されるようになった。その過程における当該中学校の教員意識には、「明確な差異」が生じていたこと、しかしながら、主導者であった保健体育教師および学校長の熱意に負ける形で、いわゆる学社連携による部活動の運営形態が確立されるに至ったこと、等が調査から把握された。 また、「クラブ会員」と「非クラブ会員」調査からは、部活動と総合型地域スポーツクラブの協働関係が、新しいスポーツに対する価値観の形成に寄与していることを看取するに至った。すなわち、「部活動は学校教育活動であり、学校外の活動と一緒に行われるとは考えていなかった」「学校の先生方が地域のスポーツ活動に関わってくれると新鮮だし、うれしい」「自分の子どもはすでに学校を卒業しているが、今回の動きをきっかけに地元の中学校に対する愛着の気持ちが高まった」などのコメントに象徴的である。 以上、インタビュー調査により抽出された言説ならびに状況は、学校と総合型地域スポーツクラブによる「新しい公共」の創出にほかならず、今後の発展可能性を看取する。しかしながら、同地区においてはその後、学校と総合型地域スポーツクラブ間の協働関係の消滅を見る。その点については、25年度の研究活動で継続的に検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究活動の目的は、学校(部活動)と総合型地域スポーツクラブの協働関係構築過程に生じる可能性を秘める「新しい公共」の創出メカニズムを把握することにあった。 2年間にわたるフィールドワークにおいて、上述した地域におけるスポーツの構造変革時に生じる「新しい公共」の内容およびその創出メカニズムの一部を把握するに至ったと感じている。なかでも、歴史的に「学校内」のみでの運営が当然視されてきた部活動が積極的に学校外地域との関係性を構築する過程には、「キーパーソン」的な教師の存在が不可欠であることがわかった。当該の教師においては、いわゆる「新しい公共」の創出を意識した各種動向が為されているわけではなく、むしろ純粋に「子どもたちのスポーツ環境」をめぐる改善に傾注されていた。 上記のキーパーソン的存在にある教師の動向は、スポーツによる「新しい公共」の創出メカニズム把握および解明に向けた新しい視点を提示できる可能性を秘めている。すなわち、「新しい公共」とは、地域における新たな住民の価値観の形成と具体的アクションの創造に帰着することが期待されているわけであるが、その端緒は、特定の対象者(今回でいえば子どもたち)をめぐる問題点の改善に向けたアクションが設定された場合において良い成果が得られる可能性が高いといえよう。なお、当該ケースをめぐる特殊性を検討する目的から、他地区(県外6か所)の事例についても調査(参与観察)を実施した。 以上に鑑み、本研究の達成度としては60~70%程度であるとの自己評価を施しておきたい。平成25年度においては、研究フィールドの拡大を意図しており、数量的なデータ収集をもとにした総合的なスポーツによる「新しい公共」の意味と構造について検討を深めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、研究フィールドの拡大を想定している。すなわち、平成23~24年度に実施してきたインタビュー調査対象地とは異なるスポーツ事情(特に学校と学校外地域間のスポーツ交流事情)を網羅する目的から、大分県内全域を対象とした市民調査(質問紙調査)を行う計画である。 広範囲となる上記調査の実施にあたっては、大分県教育委員会の全面的な協力体制が確約されている。総合型地域スポーツクラブの育成展開において、学校(部活動)の関係構築はおおいなる課題であり、支援機関としての行政も関心を寄せている。調査対象者の抽出にあたっては、県教育委員会から市町村教育委員会への協力要請が為されることになる予定である。なお、調査対象者は子どもから成人(70歳代)までを想定し、数としては、6000名規模を想定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画については、当初の予定通りである。大規模調査(質問紙・郵送法)の実施が計画されている関係上、当初より「その他」の経費については比較的高い額を設定しているが、状況に応じて経費使用内訳の再検討が生じる可能性もある。
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Research Products
(3 results)