2011 Fiscal Year Research-status Report
運動学習に影響を及ぼす重力認知の習得過程に関する発達的検討
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23500742
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Research Institution | National Institute of Fitness and Sports in Kanoya |
Principal Investigator |
森 司朗 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 教授 (80200369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中本 浩揮 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 講師 (10423732)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 重力認知 / 運動発達 / 運動学習 / 習得過程 / 運動技能 |
Research Abstract |
本年度は、運動学習における重力の役割に関して、基本的な実験装置の整備と実験計画の確認をするために、重力落下にかかわる運動技能を有している野球選手とそのような技能を経験していない大学生を対象に、落下してくるボールの捕球に関する運動技能学習における重力の認知の違いを、動作開始時間・捕球までの歩行速度と加速度歩行軌跡に関して分析を行った。具体的な実験課題は、予備実験の結果、投射機から12m離れた位置に被験者が立ち、開始位置前後1.5メートルずつの位置に落下してくるように3種類の投射初速度を設定し(前:11.9m/sec, 開始位置:12.5m/sec, 後:13.9m/sec)、放出され落下してくるボールの捕球を課題とした。動きに関しては、3次元動作解析のためにOPTOTRACK(NDI社製)を使用した。動作開始時間に関しては、ボール投射直後、最初に体が動き出した地点での時間を測定した。その結果、落下に関するスキルを有している野球選手は3つの位置とも動作開始時間が未経験の大学生に比べて速く、特に動作開始位置と前の2か所の位置においては約1秒近くの差が認められるケースもあった。動作速度に関しては、野球経験者はボール投射後40秒から50秒の間から未経験者は投射後90秒前後から初速度の違いによる歩行速度の違いが確認された。また、投射初速度と歩行速度の関連に関して、歩行速度に違いがみられた最初の段階では、経験者は歩行速度が最も速かったのは投射の初速が遅い速度であり、次いで中間の速度、最後が速い速度であったが、野球未経験者は最も歩行速度が速かったのは野球経験者と同様であったが、中間の速度と速い速度では差が見られなかった。このことは、発達的には同じ大学生であるが、それまでの自由落下という落下に関する運動技能の経験の差が落下に関する捕球方略への違いを引き出している可能性を示唆するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、運動学習における重力の役割に関して、落下してくるボールの捕球に関する運動技能学習における重力の認知の発達的影響を解明するために発達的に視点から運動技能学習における重力認知の習得について検討した。成人の大学生のうち、落下に関する運動技能を習熟している野球選手と習熟していない野球未経験者との捕球方略の違いが存在することは今回の実験で明らかになった。しかしながら、自然落下に関する重力の学習の効果を測定するために今回の実験のために作成した投射機やそのための周辺機材の設定の準備に時間をかけたため、当初の計画した対象全てを調査することができなかった。そのため、次年度に持ち越すことになった実験課題が生じたが、本年度の実験環境の整備が順調に進んだことにより、次年度十分にこれらの課題に関しても到達可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度の研究で確認された実験方略を中心に、小学生から大学生までの被験者を対象に実験を推進していく予定である。特に、次年度は重力の予測と頭部のコネクションを明らかにするために、頭部の加速度計を使用することにしている。また、今回の捕球実験の年齢別による結果と落下に関する重力の一致タイミング課題への関連に関して研究を進める。さらに、重力認知における投射直後の情報の重要性に関して投射直後の情報を遮蔽する方法(遮蔽メガネ)を用いて、検討することを予定としている。以上のようなことを通して、重力認知機能の熟達化・発達的メカニズムに関して検討をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、物品費、旅費、人件費・謝金、その他に関して下記の内訳に応じて使用を計画している。1)物品として頭部の動作と重力のコーディネーションを解析するために、角速度計を購入する予定である。2)研究に関する最近の知見・資料を得るために国内・国外の学会(それぞれ1学会)に参加するために旅費を申請する予定である。3)実験を効率的に進めるために研究補助(大学院生)を雇うことにしているため人件費と研究の協力(協力園・児童館など)に関して謝金を申請する予定である
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