2011 Fiscal Year Research-status Report
高齢者が自立生活を維持するために必要なSSC運動プログラムの開発
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23500765
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
中谷 敏昭 天理大学, 体育学部, 教授 (60248185)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 下肢筋パワー / 一般高齢者 / 虚弱高齢者 / 機能的体力 / 力発揮速度 / アップアンドゴー / 基本チェックリスト / 要支援高齢者 |
Research Abstract |
本年度は地域に在住する一般高齢者240名,基本チェックリストにより要支援あるいは二次予防事業対象者と認定された虚弱高齢者60名の下肢筋パワー発揮能力と機能的体力を比較する計画を立案した.平成23年度の実績では,一般高齢者376名(男性114名,女性262名),虚弱高齢者61名(男性7名,女性54名)を対象とすることができた.年齢は60~93歳の範囲であった.虚弱高齢者の男性が少なかったことから,男女を含めてデータ解析した.下肢筋パワーは椅子から素早く一回立ち上がる際の床反力変化から力発揮速度で評価した.機能的体力は歩行と動的バランスを評価するアップアンドゴーを用いた.その結果,力発揮速度の絶対値で一般高齢者が579.6±137.2 kgf/sec,虚弱高齢者は278.3±110.6 kgf/secと有意な差がみられた(P < 0.0001).力発揮速度の体重あたりの相対値では一般高齢者が10.6±1.8 kgf/sec/kg,虚弱高齢者は5.9±1.9 kgf/sec/kgと有意な差がみられた(P < 0.0001).アップアンドゴーは一般高齢者が5.2±1.0 sec,虚弱高齢者は13.8±5.7 secと大きな差がみられた(P < 0.0001).一般高齢者に比べて虚弱高齢者の値は力発揮速度の絶対値で48.0%,相対値で55.7%,アップアンドゴーは37.7%と低値を示し,特に歩行能力や動的バランスの指標であるアップアンドゴーの低下度は下肢筋パワーより顕著であった. 力発揮速度の加齢変化については折れ線回帰分析を行った.その結果,分割点が80歳と81歳の間であるときが最も残差平方和が小さくなり,80歳を過ぎると力発揮速度が急激に低下することが明らかとなった.虚弱高齢者の平均年齢が83.9歳であったことから80歳あたりが下肢筋パワーの自立水準の閾値あたりと予想された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,地域に在住する一般高齢者と虚弱高齢者の下肢筋パワー発揮能力を比較し,(1)自立生活に必要とする水準を明らかにする,(2)自宅で実践可能な下肢のSSC動作を用いた運動プログラムを開発し,短期間および長期間のトレーニング効果と脱トレーニング効果を検証する,ことである. 平成23年度は前者を課題遂行の中心とし,対象者の目標である300名を超える437名を測定することができた.当初の目的は,椅子からの1回立ち上がりやアップアンドゴーだけでなく,他の筋パワー発揮能力を調べる予定であったが,虚弱高齢者は一つの測定の疲労が大きく,ジャンプなどの種目ができない者も多かった.そのため,予定していた測定を行うことが困難な状況で,安全を優先した計画に修正せざるを得なかった.この点は予想できなかったことであり読みの甘さを痛感している.そのような状況でも,日常生活機能を評価する椅子からの一回立ち上がり動作時の筋パワー発揮能力やアップアンドゴーのデータに関しては当初の1.45倍の人数を収集できたことは成果であった. 研究遂行に際しても,代表者を中心とする研究グループと協力機関(自治体や社会福祉協議会)の連携を密にすることができ,測定場面でけが人を出すことなく実施できたことは成果の一つである.これも具体的なスケジュールに基づき,綿密に打ち合わせができたこと,研究遂行の手順を順次確認できたことが有効であった.築いてきた研究グループ間の信頼関係を基として,平成24年度はSSC動作を用いた運動プログラムの開発に向けて予備的実験をすでに進めている.平成24年度と25年度の2年間で当初目的とした研究計画を順次遂行していきたい.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は平成24年度と25年度の2年間で,地域に在住する一般高齢者を対象とした加齢による下肢筋パワー発揮能力の低下を予防・改善する運動プログラムを開発し,その効果とトレーニング中止の影響を明らかにすることを当初の目的としている.平成23年度の研究遂行はほぼ順調に進んだことから,残りの2年間も当初の研究計画通りに推進していく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,SSC動作を利用した運動プログラムの開発が目的であり,高齢者が安全に効果的に実践できる運動を探索する必要がある.そのため,トレーニングに用いる緩衝マットや運動プログラムの効果を測定評価できる研究機器や消耗品に経費を利用することとなる.また,国内外の学会に参加して研究発表を行うとともに,この分野における研究進展を調査することから国内外の学会出張旅費を計上している.
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Research Products
(2 results)