2012 Fiscal Year Research-status Report
高齢者が自立生活を維持するために必要なSSC運動プログラムの開発
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23500765
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
中谷 敏昭 天理大学, 体育学部, 教授 (60248185)
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Keywords | 下肢筋パワー / 一般高齢者 / バランス能力 / 足圧中心動揺 / 自転車ペダリング / 自覚的疲労感 / 循環器 / 自覚的運動強度 |
Research Abstract |
本年度は,課題(1)その場での連続ジャンプ(SSC動作)による運動強度と安全性の確認,(2)連続ジャンプを用いたトレーニングが下肢筋パワーやバランスに及ぼす影響を検討した. 課題(1)として,60~76歳の一般高齢男女19名を対象に,90bpmのリズムで活動筋が自覚的に「かなり効いてきた」と疲労を感じる回数まで連続ジャンプを行わせた結果,ジャンプ回数は35~125回で平均72.1±23.6回であった.ジャンプ時の床反力は体重の2.2±0.6倍,跳躍高は3.1±1.2cm,終了後の心拍数の上昇は平均49bpmと心拍数予備の58.5±18.9%,安静時平均血圧は96.9±11.9mmHgから117.0±17.6mmHgに上昇した.Borg-RPEは14.3±1.6と「ややきつい」と「きつい」の間であった.活動筋の自覚的疲労感を指標とした連続ジャンプ運動は,循環器系に中程度の強度と下肢に体重の2.2倍程度の負荷を与えることから,過大な強度や負荷ではない実践的なトレーニング内容であった. 課題(2)として,63~83歳の一般高齢男女31名を対象に(1)の連続ジャンプを用いたジャンプ運動群(J群)とバランス運動群(B群)に無作為に分けてトレーニング効果を検証した.それぞれのトレーニングは週2~3回の運動を行うよう監視型と自宅型を併用した内容で3ヶ月間実施し,期間前後で自転車ペダリング(BP),椅子立ち上がり(CS),垂直跳び,足圧中心動揺,アップアンドゴー(TUG)への影響を検討した.その結果,CSとTUGに有意な交互作用が認められた.J群はBP,CS,開眼時の単位軌跡長と矩形面積,BT群はBPとTUGに有意な主効果が認められた. 以上のことから,活動筋の自覚的疲労感を用いた連続ジャンプ運動のトレーニングは,下肢筋パワーだけでなくバランス能力にも効果的な内容である可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度では,下肢筋パワーの加齢変化を検討し自立度水準の低下とともに各種筋パワーが低値を示すことを明らかにした.下肢筋パワーの低下を食い止めることは自立した生活を営む上で必要なことから,平成24年度ではトレーニングに用いる運動内容の検討と3ヶ月間にわたる定期的なトレーニング効果を検証する計画を立てた. SSC動作を利用した運動は様々見られるが,安全性,簡便さ,自宅で実施できる等の理由からその場での連続ジャンプを採用し,循環器系と下肢に及ぼす負荷を明らかにする計画を立てた.本研究では,実際にトレーニングに参加を募る高齢者を対象に19名から運動強度に関するデータが得られ,当初の計画通り研究課題を遂行することができた.予想どおり,本研究の連続ジャンプ運動は循環器系に中程度の強度を与えるとともに,下肢には体重の2.2倍程度という歩行時の片脚と同程度の負荷を生じさせることを確認できた点は本年度以降の研究遂行につながる内容であった. また,これらの結果をもとに,地域に在住する高齢者に月2回の監視型教室と週3日の自宅型を併用した実践的なトレーニング指導を行い,継続率が81.5%となる実用的なトレーニングであったことも確認できた.連続ジャンプ運動を行った群は,バランス運動の群に比べて足圧中心動揺がより改善したことは,動的な運動の方がバランス能力を改善するには効果的な内容である可能性を示している.これらの結果は当初予想しておらず,本研究のジャンプ運動を用いたトレーニングは下肢筋パワーだけではなく,バランス能力も改善する可能性が示された点は評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる平成25年度は,連続ジャンプを用いたトレーニングが下肢筋パワーやバランス能力だけではなく,各種の敏捷性や歩行能力への影響を検討する計画を立てている.また,トレーニングの中止後,これらの能力がどのように変化するのか脱トレーニングの影響も合わせて確認する予定である. 以上の結果を踏まえ,平成23年度から実施してきた研究成果をまとめるとともに,ホームページを利用して社会への成果公開につとめていきたい.最終年度に向けて,当初の予想あるいはそれ以上の研究成果があげられるよう推進方策を検討したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,SS動作を利用したトレーニグ内容の成果をまとめるとともに,社会に発信するために必要な情報収集等を行うため,国内および国外学会への出張に経費を使うことを計画している.また,印刷費やデータ管理費などが必要となることから消耗品の経費も計上している.
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Research Products
(7 results)