2011 Fiscal Year Research-status Report
有酸素性運動時の効果的呼吸法とそのメカニズムの解明
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23500777
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石田 浩司 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (50193321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 敬章 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (40343214)
小池 晃彦 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (90262906)
堀田 典生 中部大学, 生命健康学部, 講師 (60548577)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 運動時換気亢進 / 学習 / 同調 / 呼吸制限 / 呼吸法 / 呼吸数 / 最大運動 / 最大下運動 |
Research Abstract |
本研究は、1)運動時の換気亢進に「学習」のメカニズムが関与するか否か、2)運動のテンポと呼吸の「同調」現象により、運動が楽にできるか否か、またそのメカニズムは何か、3)「学習」によって「同調」ができるようになるか、を明らかにし、有酸素運動中の効果的な呼吸法を示唆しようとするものである。23年度は呼吸制限により人為的に呼吸を変えてそれを学習させる実験、および同調の効果に関する実験の予備実験をする予定であった。 「学習効果」に関する研究では、まず学習課題として用いる呼吸制限が、呼吸・循環機能へ及ぼす影響を明らかにする実験を実施した。その結果、胸郭の動きをベルトで制限(制限条件)すると、最高酸素摂取量(VO2max)および最大換気量は有意に低下し、最大下の同一絶対負荷の運動では、中強度までは制限条件で換気量が増大するが高強度では差がないこと、制限条件では呼吸数が少なくなることが明らかとなり、中程度の負荷(60%VO2max程度)で運動をすれば、呼吸が人為的に変えられることが明らかとなった。 当初は次に人為的に呼吸を変えてトレーニングを実施し、「学習」効果を明らかにする実験に移る予定であったが、共同研究者の都合により、24年度に行う予定であった「同調」の実験を先に行うことになった。まず、同調の起こりやすい条件を明らかにするため、異なる負荷強度と呼吸制限の有無が同調発生率に及ぼす影響を検討した。その結果、呼吸制限は同調に影響を及ぼさないこと、強い強度でより同調しやすいことが明らかとなった。次に同調発生率と運動時の呼吸・循環応答の関係を検討した結果、高強度運動時に同調発生率が高い人ほどその時の体重当たりの酸素摂取量が低いことから、高強度において同調があれば運動の効率がよくなることが示唆された。これは目的2)を明らかにしたことになり、「同調」の有用性を示す重要な結果であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「運動-呼吸の同調」を専門とする共同研究者(研究協力者)が24年4月に名古屋から北海道に就職することが23年末に判明した。そのため、「同調」についての実験を先に実施する必要があり、「学習」効果を明らかにする実験を後回しにした。しかし、順番が変わっただけで、複数年当たりでみれば実施しなければならない実験の総量は変わらないので、実験進行としては順調であると言える。 研究成果については、23年度中の発表に間に合わなかったが、24年度に国内外の学会で発表予定(エントリー中)であり、論文についても1編掲載確定しており、その他、研究内容の運動時換気亢進に関してReviewや本の分担執筆を担当しており、24年度前半に3編が出版される予定である。以上のことから、研究全体としておおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したように、当初予定から実験の順序を変更し、23年度に「学習」効果および「同調」に関する基礎的なデータ収集を終え、24年度からはそれを利用したトレーニング実験を実施する。学習効果の実験は、23年度に明らかとなった換気量が増加する60%VO2maxの強度の呼吸制限で1週間のトレーニングを行い、学習効果が起こるかどうかが明らかにする。また、同調の実験では、同調発生率と酸素摂取量に相関のあった80%VO2max強度において、同調発生率の低い群に対して、同調するように「学習」させる実験を実施し、それによって呼吸・循環応答が改善されるかを検討する。同調率の計算は院生が実施していたが、24年4月に北海道に就職したので、24年度から分担研究者に追加し(申請中)、データをWEB経由でやり取りし、従来通りの解析を行ってもらう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験の順序を変更したため、23年度にトレーニング実施時の被倹者謝金として支払う分がなくなった。また、外国の学会での研究成果発表の予定をしていたが、学習効果の実験が終わった23年11月の段階で、年度内に発表できる適当な学会がなく、海外渡航を見送った。その二つの理由により23年度の予算の38万円ほどを繰り越すことになった。本年度の研究は、学習効果、同調とも実際に被倹者を1週間程度毎日トレーニングする必要があるため、被倹者謝金が支出のかなりの部分を占める。そこで23年度の繰越分を24年度に使用する。また、23年度に研究成果を学会等で発表できなかった分を24年度に回すため、国内外での学会発表の旅費等が最初の計画より増えることになる。23年、24年のトータルで見れば、ほぼ計画通りの予算になる予定である。
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Research Products
(2 results)