2012 Fiscal Year Research-status Report
有酸素性運動時の効果的呼吸法とそのメカニズムの解明
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23500777
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石田 浩司 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (50193321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 敬章 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (40343214)
小池 晃彦 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (90262906)
堀田 典生 中部大学, 生命健康科学部, 講師 (60548577)
岩本 えりか 札幌医科大学, 保健医療学部, 助手 (40632782)
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Keywords | 運動時換気亢進 / 学習効果 / 同調 / 胸郭制限 / 呼吸法 / 運動リズム / 呼吸リズム / 呼吸循環応答 |
Research Abstract |
本研究は、学習・同調の観点から運動時の有効な呼吸法について明らかにしようとするもので、24年度は、1)運動時の呼吸を人為的に変えてトレーニングすることで、呼吸の「学習」が起こるか否か、2)「同調」のメカニズムとその生理学的意義、の2点を明らかにしようとした。 学習効果に関しては、最大酸素摂取量(VO2max)の60%の負荷で5分間×4セット×10日間の自転車漕ぎトレーニングを、前年度に用いた胸郭制限下(換気増大)で実施し、トレーニング前後で胸郭制限なしの条件での呼吸循環応答を比較した。その結果、トレーニング後に運動開始時の換気量が増加し、特に呼吸数が大きく増加していた。この結果は運動時の換気亢進に「学習」が関与する説を支持するとともに、呼吸パターン形成が学習をもたらす要因であることを初めて明らかにした点で意義深いといえる。 同調に関する実験は、まず被検者の好きな回転数と呼吸数で60%VO2maxの負荷で15分間の自転車漕ぎ運動を行わせ(自由条件)、呼吸と運動の同調発生率および呼吸循環応答を測定した。次に各被検者に自由条件での平均回転数で運動させながら、①呼吸を運動と同調させるように(同調条件)、または、②呼吸数を正弦波状に変動させるように(非同調条件)、音刺激と画面に指示を出し、同様の測定を行った。さらに同調発生率の低い群(非同調群)を同調条件で、また、高い群(同調群)を非同調条件で15分×2セット×5日間の自転車漕ぎトレーニングを行わせた。その結果、自由条件で2群に呼吸循環応答の差は認められず、全員の同調条件と非同調条件でも差は見られなかった。すなわち、同調しても呼吸循環系には効果がないことが明らかとなった。一方、逆方向のトレーニングにより同調発生率に変化傾向が見られ、学習効果が示唆された。同調に関する詳細な研究は少なく、本研究の結果は非常に有意義であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年4月にそれまで同調に関するデータ分析を担当していた研究協力者(院生)が遠隔地に就職したが、研究分担者に追加して、データを電子ファイルでやり取りするなど、移動後もスムーズに研究を進めることができた。前年度の実施報告書でも述べたとおり、研究協力者移動の件で実験の順序を変更したが、研究は計画変更後の予定通り進んでおり、25年度の残りの1年間は酸素濃度を変えて行う学習実験のみとなっている。24年度に実施した2つの実験とも期間のかかるトレーニング実験であり、さらに大量のデータ分析のため時間がかかり、合間なく2つの実験を実施したため、成果を論文にまとめるのを先送りしているが、これまでの研究で、運動時の呼吸に学習が関与するが、同調は効果的でないという方向性がすでに見出されており、研究全体として順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は低酸素を用いて運動時の呼吸を人為的に変えた条件でトレーニングする実験を実施し、運動時換気亢進の学習効果をさらに明確にする。一番のポイントとなる低酸素条件の設定については、低酸素の専門家である研究分担者(片山准教授:名古屋大)や共同研究をしている国外の研究グループ(オックスフォード大:P.Robbins教授)の指導、さらに24年度に実施した高地での低酸素環境の視察をもとに決定する。さらに、これまでの本課題の実験で、運動時換気亢進に「学習」が関与していることが明らかになってきたが、どこでどのように起こっているかははっきりしていない。学習には「認知」が必要であることから、認知を妨害するような実験条件を設定し、研究をより発展させることを検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度向けに約15万円の繰越金があるが、これは多額の被検者謝金が必要なトレーニング実験の順番を23年度から24年度に変えたため、24年度に23年度の繰越金が37万円生じたことが影響している。24年度はトレーニング実験が増えた分、実質的には当初の予算より22万円ほど余分に使用している。 25年度はガス等の消耗品費用と被検者謝金費用のかかる、低酸素を用いたトレーニング実験のみを実施することになっている。繰越金と当初の配分額とを合わせた予算で実験を実施し、最後の報告書作成の費用等と合わせて、3年間のトータルとして当初の予算通りになる予定である。
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