2011 Fiscal Year Research-status Report
蛋白同化を介して抗加齢に機能するグレリンの発現に及ぼす加齢と運動の影響
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23500781
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
十枝内 厚次 宮崎大学, 医学部, 講師 (80381101)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | グレリン / 老化 / 運動 / 迷走神経 / 視床下部 |
Research Abstract |
初年度は、グレリン細胞の老化および機能解析における評価方法の確立を行った。またグレリンGFPトランスジェニックマウス(Ghre-eGFPマウス)の継続的飼育による老齢マウスの作出を開始した。1)Ghre-eGFPマウスの胃からGFPを標的にグレリン細胞のみを顕微鏡下でマイクロダイセクション法により単離し、個別の細胞レベルで遺伝子発現を解析する技術を確立した。その結果、グレリン細胞は糖、脂質、他のホルモン、消化管ペプチドの入力を受けていることが明らかとなった。2)Ghre-eGFPマウスの消化管から生細胞を取り出す技術を確立した。セルソーターを用いてグレリン細胞のみを回収すると同時に胃小窩から幹細胞を単離し、培養する技術の確立を目指している。3)グレリンの分泌に加えて、末梢のシグナル伝達機序が老化により機能不全に陥る可能性がある。グレリンの末梢シグナルは、迷走神経節神経細胞によって合成されるグレリン受容体の発現が重要である。本年度は、迷走神経節で合成されるグレリン受容体が、胃に運搬され、グレリン細胞から分泌されるグレリンによって直接活性化される可能性を確認した。この受容体活性化は、迷走神経の電気的興奮を抑制し、中枢性の摂食亢進に機能していることを明らかにした。4)グレリン情報伝達系に及ぼす生活習慣の影響を検証するため、高脂肪食負荷による肥満マウスを作出し、グレリンの情報伝達系について解析した。その結果、肥満マウスでは、末梢からのグレリン情報伝達が十分に機能しておらず、過食の原因がグレリンの機能亢進ではないことを確認した。グレリンを含む末梢のエネルギー代謝情報伝達不全が、中枢性肥満の原因となる可能性を確認した。老化は、生活習慣に依存して、加速・遅延のいずれも生じる不可逆的な現象であり、今後、運動を含めた生活習慣依存性の老化現象とグレリンの発現、および情報伝達系について解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、胃のグレリン細胞単離技術の確立とその測定法の開発およびその検証を行うこと、およびグレリンGFPトランスジェニックマウスを繁殖し、次年度以降の必要個体数を確保することにあった。本年度は、グレリンGFPトランスジェニックマウスからの単一グレリン細胞を単離する技術を確立し、一細胞での遺伝子発現解析を可能とした。この技術により、来年度以降のマイクロアレイや蛋白発現解析の基礎を確立した。一方で、胃生細胞の初代培養系は確立したものの、GFPを標的にセルソーターによるグレリン細胞回収は、目的の細胞数を確保する技術として不安定であった。GFPの発現量が不安定であるためと考えられ、検出系の改善および発現の増幅処理を経て、実験に使用する必要量が回収できる見込みがたった。グレリンGFPトランスジェニックマウスは、繁殖効率が低く、本年度に使用する個体の確保のみにとどまった。現在、コロニー数を増やすことで対応した結果、次年度以降の個体数を安定的に確保することが可能な状況になり、老化マウスの作出も開始した。新たに、グレリン細胞の老化に加えて、確立した単離細胞個別の解析技術を使用してグレリン情報伝達経路の老化についても検証を始めており、研究はおおむねね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に確立した単一細胞の解析技術、グレリン細胞の濃縮技術をさらに発展させるとともに、老化とグレリンシステムの関係性を検証する。1)経月的にグレリンGFPトランスジェニックマウス胃から、グレリン陽性細胞を単離し、その数の計測およびグレリン分泌能を解析し、加齢に伴う変化を検証する。また単離したグレリン細胞からmRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行い、加齢性の遺伝子発現変化に関する候補遺伝子を抽出する。この候補遺伝子を元に、加齢による定量PCR法またはウェスタンブロッティング法で、加齢による遺伝子発現および蛋白発現の変化を検証する。2)グレリン細胞の加齢に伴い変化する蛋白合成が、一過性運動によってどのように変化するのかを検証する。3)胃小窩から単離した幹細胞に分化増殖に関連する遺伝子の発現を調節し、グレリン細胞への分化様を確定するとともに、この機序への老化の影響を検証する。4)グレリン細胞の加齢に伴い変化する蛋白合成が、運動トレーニングによってどのように変化するのか、またトレーニング開始年齢がその変化に影響を与えるのか検証する。5)末梢グレリンの情報伝達系において重要な迷走神経経路について老化の影響を検討し、グレリンシステム全体の加齢の影響を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、研究期間を通じて胃から幹細胞を単離し、培養する。そのために培養試薬や培養器具を常に必要とする。そのため基本培地や抗生物質、血清、培養用ディッシュ等を購入する必要がある。単離した幹細胞へのグレリン細胞分化を検討するため、分化増殖因子のインサートやノックダウン、siRNAの導入を行うため、細胞への遺伝子導入に関する実験試薬を必要とする。GFP細胞の単離および細胞数計測も研究期間を通して行う。そのため細胞単離用の試薬およびセルソーター関連の試薬を必要とする。研究期間を通じて、細胞での遺伝子発現を解析するため、マイクロアレイ解析費、遺伝子抽出用の試薬およびreal-time PCR用消耗品を必要とする。研究期間を通じて、グレリンGFPトランスジェニック維持のため、新生仔の遺伝子チェックが必要となり、簡易遺伝子チェック試薬を必要とする。グレリン細胞における免疫学的測定による発現蛋白の解析のため、免疫染色用試薬とウェスタンブロット用試薬を必要とする。
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[Journal Article] Therapeutic potential of ghrelin treatment for unloading-induced muscle atrophy in mice2011
Author(s)
Koshinaka, K., Toshinai, K., Mohammad, A., Noma, K., Oshikawa, M., Ueno, H., Yamaguchi, H. and Nakazato, M
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Journal Title
Biochem Biophys Res Commun
Volume: 412
Pages: 296-301
Peer Reviewed
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[Journal Article] Significant lowering of plasma ghrelin but not des-acyl ghrelin in response to acute exercise in men2011
Author(s)
Shiiya, T., Ueno, H., Toshinai, K., Kawagoe, T., Naito, S., Tobina, T., Nishida, Y., Shindo, M., Kangawa, K., Tanaka, H. and Nakazato, M
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Journal Title
Endocr J
Volume: 58
Pages: 335-342
Peer Reviewed
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