2011 Fiscal Year Research-status Report
運動中から運動後にかけて認められる筋たんぱく質合成反応の切り替え調節の解明
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23500789
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Research Institution | Shigakkan University |
Principal Investigator |
村上 太郎 至学館大学, 健康科学部, 教授 (10252305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石黒 奈穂子 至学館大学, 健康科学部, 助手 (10617260)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 筋たんぱく質合成 / mTORC1 / REDD1 / 4E-BP1 |
Research Abstract |
運動の様式に関わらず、運動中に骨格筋のタンパク質合成は低下し、運動後増大すると考えられているが、そのメカニズムは十分には明らかにされていない。mTORC1は4EBP1等をリン酸化し、タンパク質合成を翻訳段階で調節する主要因子である。mTORC1を不活性化し、タンパク質合成を低下させる伝達因子の一つとしてREDD1が同定されている。本研究では、急性の持久運動によって骨格筋におけるREDD1の発現が増大するか否か検証した。(実験1)ラットを安静群と運動群に分け、さらに各群を3群に分けた。運動30分前に、生理食塩水、グルコース、もしくはBCAAを経口投与(135 mg/100 g BW)し、運動群のラットにトレッドミル走(28 m/min 90 min)を負荷した。その結果、持久運動によって4EBP1のリン酸化は低下した。REDD1の発現はmRNA、タンパク質量ともに増大した。持久運動によるREDD1発現の増大は、運動前のグルコースやBCAAの摂取で抑制されなかった。(実験2)ラットを安静群と運動群に分け、運動群のラットにトレッドミル走を負荷した。持久走直後、運動後30 分、および60 分の地点でラットを継時的に屠殺し、腓腹筋を摘出した。その結果、持久運動によって腓腹筋の4EBP1のリン酸化は低下し、運動後60分間低下した状態を維持し続けた。また、持久運動によってREDD1の発現は増大し、運動後60分間増大した状態を維持し続けた。以上の結果により、運動中から運動後に認められる骨格筋のタンパク質合成の低下は、REDD1の発現増大によるmTORC1経路の抑制による可能性が考えられた。また、運動前のグルコースやBCAAの摂取は、持久運動による骨格筋におけるREDD1の発現増大を抑制できないこと、すなわち骨格筋における持久運動によるタンパク質合成の低下を抑制できない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットに持久運動を負荷してREDD1の経時発現を検討するといった、当初計画していた実験が完了し、上記報告のとおり一定の成績を得たため。一方で、予定していた電気刺激によって筋収縮を誘導しREDD1の発現を検討する実験には未だ取り組めていないが、装置の改良などを行い、実施の目処が立ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度はラットに筋肥大を誘導するような筋収縮を電気刺激によって誘導し、持久運動と同様にmTORC1経路の不活性化とREDD1の発現増大が認められるか否かについて検討する。電気刺激装置は既にラットの骨格筋を電気刺激する仕様に改良済みであり、実験環境が整いつつある。また、本年度の実験において、予備実験時に確認された結果と一部異なる結果が得られたため(持久運動によってmTORC1経路の情報伝達系が全て抑制されるわけではなく、一部変動しない因子も存在する可能性が新たに考えられた)、これを明らかにする実験も合わせて実施する予定である。運動中に筋たんぱく質合成は低下するが、その後の合成増大に備えて筋肉のアミノ酸輸送体の発現が高まる可能性が考えられる。そこで、来年度は当初計画していた実験が順調に進んだ場合、運動とアミノ酸輸送体発現との関連についても検討したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
生化学分析の分析方法を検討した結果、感度良くたんぱく質発現を定量することが可能になったため、抗体等の使用量を低減させることにより来年度に研究費を繰り越すことが可能になった。申請当初より、本研究の実施には研究費が不足していたため(特に2年目および3年目)、今年度の実験をより充実させることができる。
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