2012 Fiscal Year Research-status Report
若年日本人女性のやせ型体型が潜在的健康障害に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
23500811
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Research Institution | Hokkaido Information University |
Principal Investigator |
佐藤 浩樹 北海道情報大学, 経営情報学部, 教授 (40507216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西平 順 北海道情報大学, 経営情報学部, 教授 (30189302)
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Keywords | 若年女性 / 体型 / 健康障害 |
Research Abstract |
大学生および社会人を含む若年女性234名が本研究対象者となった。本年度は研究2年目の計測を行ったが、体型的に研究1年目と比較して変化した対象者は5名と少なかった。低体重正常脂肪者が体重増加を来し標準体型に変化したものが全員であった。この5名における計測結果においては、心血管因子としての血圧値、脂質値が上昇を認めたが血糖値に関しては変化を認めなかった。善玉アデポサイトカインである高分子量アディポネクチンおよび総アディポネクチンはいずれも6~10%(平均8.3%)の上昇を認めた。しかしながら、酸化ストレスマーカーであるMCP-1値および悪玉アデポサイトカインであるIL6値の変化は認めなかった。骨密度(YAM%)に関しては同様な数値で変化は認めなかった。血管内皮機能(FMD)に関しては2%弱の上昇を認めたが有意な変化とは認めがたい結果であった。一方、その他229名に関しては1年目および2年目において体型および体組成に変化は認めず、心血管因子としての血圧値、脂質値、血糖値に関しては変化を認めなかった。善玉アデポサイトカインである高分子量アディポネクチンおよび総アディポネクチンも変化を認めず、正常体型者と比較して量数値とも有意な低値を認めた。酸化ストレスマーカーであるMCP-1値および悪玉アデポサイトカインであるIL6値の変化は認めなかった。骨密度(YAM%)および血管内皮機能(FMD)に関しても変化は認めなかった。以上の結果より最適な脂肪量になるために脂肪が増量する体内変化が起きた場合、善玉アデポサイトカインは鋭敏な変化を認めるが、悪玉アデポサイトカインの反応は鈍いことが示唆された。過去の研究で、善玉アデポサイトカインはIL-6などの悪玉アデポサイトカインと相反的な反応を認めるとの報告も認められるが、この関係は脂肪量が比較的少ない状況においては当てはまらないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大学生および社会人を含む若年女性234名の基本属性結果がまとまった。「るい痩」,「低体重体脂肪正常」,「正常」群の対象者はそれぞれ28名(12.0%),40名(17.1%)、166名(70.9%)であった。生活習慣における検討では、朝食ありの割合:66.7vs.75.8vs.69.9(%)、運動習慣ありの割合:6.7vs.9.1vs.17.1(%)、喫煙者の割合:6.7vs.3.0vs.2.1(%)、朝食ありの割合:66.7vs.75.8vs.69.9(%)であり「るい痩」群での生活習慣の悪い状況が明らかになった。睡眠時間に関しては、6時間未満の睡眠を有する者の割合:20.0vs.42.4vs.50.5(%)の結果であった。生活習慣病因子の比較においては、収縮期および拡張期血圧、LDL-コレステロール、中性脂肪、血糖値のいずれも「るい痩」,「低体重体脂肪正常」,「正常」の順に低い傾向にあったが有意差を認めなかった。逆にHDL-コレステロールについては「るい痩」,「低体重体脂肪正常」,「正常」の順に高い傾向にあったが同様に有意差は認めなかった。その他の血液検査の所見については、hs-CRP、MCP-1、IL-6については三群において差異は認められなかった。しかしながら総および高分子量アディポネクチンについては「るい痩」,「低体重体脂肪正常」,「正常」群の対象者はそれぞれ7.1vs.10.3vs.13.2(μg/ml)、2.0vs.4.2vs.3.9(μg/ml)であった。群間比較においては「るい痩」および「正常」群において有意差を認める結果であった。骨密度(YAM%)においては3群間に差異を認めなかった。血管内皮機能(FMD)においては「るい痩」群が「低体重体脂肪正常」および「正常」群と比較して低値傾向にあったが有意差を認めなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的な研究対象者227名は確定でき2年目の調査においても全員のフォローが完了することができた。3年目における最終年度においても、対象者が所属する大学および会社の担当者に所在の有無を綿密に確認し協力が得られるような連絡網を継続し、全員のフォローが可能となることを第一目標としたい。そのためには各対象者に1および2年目の本研究結果を詳細に報告し、本研究の斬新さおよび他では施行されていない有意性および重要性を理解してもらう努力を図ろうと考えている。同時に個々のデータ項目が莫大になっていることより、よりプライバシーを加味したデータ管理に努めたい。さらに来年に最終的な研究成果の公表を控えているため、データ解析を2名にそれぞれ施行してもらい結果のすり合わせを行いたい。その際にはデータは全て匿名化しデータ所属がわからないような加工についても十分に留意したい。採血、骨密度、血管内皮機能を調査する各々の検査についてはこの2年間の慣れもあり十分な対応が可能となっているため3年目においても各方面(検査会社など)に連絡を図りデータの巧緻性を継続したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は3年計画で考えている本研究の最終年度を迎えるが、もともと計測項目が年1回で経年的に変わらない計画のため、検査に対する研究費使用状況に関しては、1年度および2年度とほぼ変わらない状況の推移と考えている。具体的には機器リース料(体組成計)、血液検査料(心血管因子項目、炎症所見、善玉および悪玉アデポサイトカイン、酸化ストレスマーカー)、および検査調査における人件費がメインになると思われる。ここまでの研究費使用に関しては最終年度の上半期に終了すると考えている。その他、平成25年度は研究の最終年度でまとめが必要な年度であることも加味し、研究成果を検討する際の会議費、研究成果を発表するための学会への出張費、また研究成果を論文化するための関連論文購入に対する費用、英文論文作成のために必要とされる添削費用などがこれまでの年度と異なる費用支出となる可能性がある。この新たな研究費に関しては最終年度の下半期に要する費用と考えている。
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