2012 Fiscal Year Research-status Report
幼児施設における遊具による事故防止のための幼児の行動特性及び遊具の安全性について
Project/Area Number |
23500814
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
原本 憲子 聖徳大学, 教職研究科, 教授 (30458666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩 美佐枝 聖徳大学, 教職研究科, 教授 (30310288)
越山 健彦 千葉工業大学, 工学部, 教授 (50581154)
百瀬 定雄 聖徳大学, 教職研究科, 准教授 (30348429)
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Keywords | 人間生活環境 / 遊具 / 幼児 / 安全 / 事故防止 |
Research Abstract |
平成24年度は、全国公私立幼稚園に依頼し実施アンケート(34園分)の調査結果を集計し、データベースを作成し分析考察を行った。すべり台使用時の指導の実際と事故防止の関連、安全指導の内容と時期、安全点検の実態と課題等について分析を行った。アンケート実施園においては、近年重篤な事故発生の実態が見られなかったが、数多くのヒヤリハットの実態を収集することができた。その結果から、すべり台の事故要因の詳細を収集することができた。 すべり台は他の遊具よりも人的環境要因による事故が多いことが判明したことから、幼児の遊びの要素と危険要素についてさらに追求するため、研究協力園において、遊びの観察を定期的に実施した。同年齢の幼児がかかわる遊びと異年齢児がかかわる遊びの観察により、すべり台の使用の仕方と、友だちとかかわる遊びの中で見られる行動特性が明らかになり、遊具と人の関連に潜む危険を抽出することができた。また年齢によるすべり方の違いの有無について調査し、事故の種類との関係性について分析した。 3歳児、4歳児、5歳児のすべり方の実際を捉えることにより行動の特徴を捉えることができた。 海外の遊具の扱いの関する実態、及び安全基準の実際等を調査するために、ジュネーブ及びパリの視察を実施した。ジュネーブにおいては幼児教育施設を訪問し、すべり台使用時の安全確保の実際を観察した。都市型公園では、すべり台設置状況を視察し、緩衝用ラバーの状態、遊具の配置について調査した。パリにおいてはフランスの安全基準についてその実際を収集した。 本研究の目的である「遊具のもつ機能と危険性を追求し、その指導と管理を向上させるための指標を明確にする」ための研究ベースとなる幼児の行動特性と潜在する危険の実態を指摘することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基盤となる幼児教育施設におけるすべり台での事故及びヒヤリハットの実態、すべり台使用にかかわる指導の実態、すべり台の安全点検の方法の実際を、全国34園の幼稚園アンケート調査を実施したことによりある程度明らかにすることができた。 また、本研究の目的である遊具による幼児の大事故をなくすための手法を考案するためには、実際の保育現場での幼児の遊びの実際を詳細に捉える必要があることから、平成24年度にも研究協力園を訪問し、すべり台で遊ぶ幼児の行動の詳細をビデオ撮影し、分析を行った。 さらに、3歳児、4歳児、5歳児の身体計測とすべり台の傾斜角度との関係性を計測機材を使用し計測し、研究の基礎データとした。 現在、すべり台における事故発生の誘因・要因と事故には至らなかったインシデントの状況を分析し、これらのデータを基に研究を推進している。これらの理由から、本研究は、当初の目的を遂行し、進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.平成25年度は、基礎調査及び幼稚園現地での観察等状況調査をもとに、幼児の行動特性と事故発生との関係性を明確にする。幼児の行動観察で実施した六つの要件、①入園当初のすべり台を使い始めた時期の行動特性と体験を重ねた時期の行動特性の比較 ②遊びとの関連性 ③すべり台利用導線の交錯情報の収集 ④行動空間を配慮した安全領域の検証 ⑤指導と管理の視認領域の確認 ⑥幼児の認知しにくい危険の領域についての検証結果を論文として公表する。 2.幼児教育に携わる教職員を対象とした「遊びの充実と運動遊具の安全」に関するワークショップを実施する。研究の成果として得られたすべり台における事故発生の誘因・要因と事故にはいたらなかったインシデントの状況分析等をもとに、これからの運動遊具使用時の安全指導、安全点検等について協議し、研究の成果を教育現場に広く伝える。 3.「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」策定時に関与された研究者から情報収集を行い、幼稚園におけるすべり台の安全を確保するための方策を明確にする。 4.研究の成果をまとめ、幼稚園現場で安全指導に役立つ資料を作成する。資料は幼稚園に広く配布する。最終の研究成果は論文として広く社会に公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費使用状況については繰越金額が発生した。理由は、全国調査にかかわる謝礼について、研究過程で詳細を調査するための追加質問及び現地調査が必要になったため、最終的な礼状発送費及び謝礼のための物品経費が最終年度に繰り越されたことによる。また、研究過程で実施を予定していた幼稚園教育にかかわる教員を対象としたワークショップの計画の時期を平成25年度に変更したため、そのことにかかわる諸経費の繰り越しを行ったことによる。 平成25年度の研究費使用計画としては、まだ十分収集することができなかった幼稚園での1学期の幼児の行動観察及び、幼児人体計測、計測機材を使用しての滑走記録を収集するための調査費を予定している。また、「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」策定時に関与された研究者から情報収集を行うため、出張旅費及び調査経費を予定している。 研究の成果を、幼稚園の現場で活用できるような資料としてまとめるための印刷諸経費を予定している。
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